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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
ジャーバル編

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第五十話「祭」

上位四讃會、本拠地。


レオは、首領室でスザンの手がかりを探していた。


休憩に入った頃、机の上で携帯が鳴り響く。

「何の用だ」

「ああ、悪い。いや…すいません。レオ…さん」

「慣れない敬語は辛そうだな?」

「はい、まあ…」

男は、それより。と本題に移った。

「どうやら、斗真がやられたようです。何でも、斗真の首だけ死体が見つかったらしく…」

レオは、その言葉を聞いた瞬間、驚きはしなかったものの、手の平に爪が刺さる程、強く拳を握りしめた。

「…ガーネットの仕業か?」

声色を変えずに男にそう尋ねる。

「は、はい。多分…いや! 恐らく!」

「そうか」

レオは、少し一息おいて、話を続けた。

「それより、『見つかったらしく』って…まるで第三者のような反応だな?」

男はレオの言葉に思うところがあるのか、言葉にならない声を漏らした。

「メンバー内での連絡は禁止だったはずだ。どこから情報を得た?」

「…風の噂だよ」

男はベタなやり方だが、口笛を吹いて誤魔化した。


…


「すっげぇ。やっぱ屋台いっぱいあるんだなァ」

壊斗は日本での祭りと何ら変わりのない光景に感動していた。

「何だ。オレが知ってる祭りと全然違ぇな」

「国によって変わるんだろうな」

結輝は冷ややかにそう返した。

「めいいっぱい楽しみたい所だけど、ここにも敵が潜んでるかも知れない。一応警戒はしとこう」

前とは打って変わって、壊斗は楽しみつつも警戒モードを保つと言う方針を表(ひょう)した。


…


皆で屋台を回っていると、何やら円香がソワソワしだし、ジーっとりんご飴の屋台を見つめていた。

「どうかした?」

そう言って悟は優しく聞いてみる。

「あれは…?」

「りんご飴だよ。食べたいか?」

「…食べてみたい」

壊斗の問いかけに、円香は少し間を空けて、本心を告げた。

「皆はどうする?」

壊斗は皆にそう尋ねてみると、皆揃って『食べたい』と言ったので、六人分頼むことにした。

「すいませーん。りんご飴六個下さい」

「あいよ。友達同士で祭りかい? 楽しそうねぇ」

店主は壊斗たちに微笑ましい眼差しを送りながら、台に刺さっていたりんご飴を一本ずつ抜いていく。

「あれ? 六個? 一つ足りない気が…」

「いや、俺の分を抜いたんだ。甘ったるいの苦手で」

悟は個数を気にかけたが、壊斗は自分の分を抜いて注文したみたいだ。


…


「…美味しい!」

りんご飴を舐めた皆の顔が、みるみるうちに笑顔になっていく。

だが、一人だけ舐めずにボリボリ噛んで直ぐに飲み込んでしまった奴が居た。

「あ、トパーズ! 勿体ない!」

「りんご飴…見た目でそう呼んでるだけかと思ってたが、中にちゃんとりんごが入ってたんだな」

「おい! ネタバレやめろ!」


…


「カイトはほんとに買わなくて良かったのか?」

皆がりんご飴を舐め終わった後、トパーズは壊斗にそう尋ねた。

「俺、実はりんご飴あんまり好きじゃないんだ。さっき言ったのはちょっと嘘でさ、甘いのは好きなんだ。でもりんごはあんま好きじゃないんだ。中にりんごさえ入ってなきゃ良いんだけどな。…でも他の皆には言うなよ? せっかくの雰囲気を壊しちゃうからな」

壊斗は「ほら」と円香たちの方を指した。

「円香があんなに嬉しそうにはしゃいでる姿、見たことないだろ? ああやって喜んでくれると、こっちまで嬉しくなる」

「ま、気持ちは分かんなくねぇけど」

時刻は午後3時、まだ空は明るい。壊斗たちは引き続き屋台を回る事にした。


…


「テメェ、アタシにぶつかっといて何で謝らねぇんだコラ!」

「テメェからぶつかりに来たんだろうがッ! オレはちゃんと避けたぜ!?」

いつの間にか、トパーズは謎の女と取っ組み合いの口論に発展していた。


肩甲骨辺りまで伸びた金髪に、前髪はセンターパート。そして、胸元を露出した服を着用している。この身なりは、異世界には無い言葉、現実世界で言うところの『ギャル』に相当するだろう。


「アイツは…普通に謝りゃ良いのに」

「俺の出番だな」

そう言って結輝は腕を捲り、双方の間に立った。

「や、お姉さん。ごめんね? ウチのトパーズが迷惑かけたみたいで」

「おいユ───」

結輝は、トパーズだけに見えるよう、人差し指でシーっとジェスチャーをした。

「あ? 誰だ…」

女は威圧するように結輝の顔を覗き込んだ。

「あ、可愛いね」

結輝は女の目を見て、そんなキザな事を言って見せた。

「お…!?」

結輝の風貌を見るに、金髪の女は驚いたようなリアクションを取り、顔を赤らめた。

それもそうだろう。結輝の顔面は、異世界はさることながら、現実世界の人間と比べても、相当イケメンな部類に入る。


結輝は続けて女の服をパッパッと払ってあげた。

「良かった。服は汚れて無さそうだ。痛みはない?」

「お、おう。大丈夫だ…アンタは話が分かるじゃんか」

女は目を背けてそう言った。

「じゃ、行こっか」

結輝は、壊斗たちの方を振り返ってそう言った。

「ま、待って…」

女は結輝の袖を引っ張って引き止めた。

「あ、アタシも…その…アンタらと、一緒に回っちゃダメ…か?」

「大歓迎だよ。一緒に回ろう?」

「ほ、ホント!?」


断られる事前提で聞いてみた乱子は、まさかの返答に顔がみるみる明るくなった。


「結輝。俺の名前。気軽に下の名前で呼んでよ」

「あ、アタシは…赤石乱子(あかいしらんこ)…」

「乱子か、よろしく!」

「うん、ありがと! えっと…ゆう…き♡」

彼女は、少し照れながら結輝の名を呼んだ。彼女は既に、結輝の虜になっていた。


…


それからと言うもの、乱子は結輝にベッタリとくっついたまま離れなかった。


自然に壊斗たちは結輝と彼女の後ろを歩くこととなった。


「アイツ…キャラ変わりすぎだろ」

トパーズはうげぇと吐く真似をした。

「ほら、前まで"惚れさせ屋"やってたって言うし…そういうの慣れてんじゃね…?」


「ごめん、結輝。アタシちょっとトイレ行ってくる! そこら辺で待ってて!」

彼女はそう言うとトイレに駆け込んだ。


「…おい、結輝〜! さっきの何だよ〜」

壊斗はいじるように肘で結輝の体を突っつく振りをした。ちゃんと触れない程度に距離を保って。


「そこはあんまり触れないでくれ…」

結輝は少し顔を赤らめた。

「はは。わかったよ」

皆が笑っている中、昌幸だけは何か言いたげな顔をしていた。


「じゃあ、ついでに俺もトイレ行ってくる」

「あ、俺も行く!」

結輝の発言に悟も便乗した。

「おっけ〜」


…


「俺、あの人苦手だな…」

「…?」

悟の突拍子も無い発言に、結輝は呆けた面で「どうして?」と理由を尋ねた。

「うーん。こんな事あんまり言いたくないけど…俺、どうにもああいうガサツって言うか、気が強い女が苦手で…」

「…俺もだ」

「───え!? そうなの!?」

「苦手って言う程でもないが、いくら"惚れさせ屋"でも女の好みはある」

「じゃあ、何で…」

「仲間集め。壊斗たち、仲間が必要だって言ってたろ? 彼女を見た瞬間、すぐに堕とせそうだなって思ったんだ」

「へ、へぇ。随分と自信があるんだね…?」

「言ってなかったか。俺、少しその人を観察すれば、相手がどんなタイプの人間が好みなのかが分かるんだ」

「え、それって女の人に限ったことじゃなくって?」

「ああ。前、事務所に男を堕としてくれって依頼が来たこともある。勿論その依頼も無事に遂行出来たよ」

「す、凄いね。相手の好みに合わせてるってことでしょ? それって能力では無いの?」

「うん。生まれ持った才能なのかもな」

結輝はそう言うと、ふふっと笑った。

「だからあんな喋り方してたんだ。でも仲間に引き入れたらあの喋り方をずっと続けなきゃいけないんじゃないの?」

「ある程度好感度を上げとけば、徐々に素になっても好きなままでいてくれる。例外もあるけど」


…


それから壊斗たちは、かき氷に金魚すくい、射的や型抜きと様々な店を回った。気づけば言い出しっぺの壊斗よりも皆の方が楽しんでいた。


そんな感じでゆったりと過ごしていると、時刻はあっとゆう間に夜の七時を回った。花火が始まる時間だ。


焼きそばを片手に花火を見に一箇所に集まった。


「始まる…」


壊斗は一年ぶりの花火にワクワクが止まらなかった。


一発目、大きな音と共にそれは打ち上げられ、空に消えた。


「?」


円香は不思議そうに空を見上げている。


次の瞬間、大きな音を立て、花火は空一帯をオレンジ色に染めた。


「───わぁぁぁッ!!!」

円香たちは目を輝かせていた。普段クールな昌幸も同様に、皆子供に戻ったような表情になった。


「すっげぇ…」

こういう行事に興味のなさそうなトパーズまで、花火に釘付けになっていた。


「…綺麗だね! カイト!」

エメルは壊斗の方を振り返り、ニコッと笑う。

「そうだな。綺麗だ」

ここで壊斗は、辺りを見渡してみると二人居ないことに気づく。

「あれ? そう言えば、結輝は?」


…


皆が花火に夢中になっている中、誰も見ていない木陰で乱子と結輝は互いの唇を重ねていた。

「…花火は見なくていいのか?」

「そんなんいいよ…アタシは花火なんかより、結輝を見ていたい」

そうはにかむと、乱子は再び結輝に口付けをした。


「ね、ねぇ…このままバックレちゃおうぜ。結構近くにアタシんちがあるんだ」


結輝は、答えは決まっていたが、少しの間沈黙をした。


「…ごめん。俺、やっぱり皆と───」

その返答を聞くに、乱子は興が冷めたのか、チッと舌打ちをした。

「あっそうかよ。じゃあ行ってこいよ。そんなにアイツらと居てぇんなら」

乱子は本当は思ってないことを不貞腐れで言ってしまった。

「そんなに怒らないで。勿論乱子も一緒にだよ。じゃないと花火を見る価値がない」

結輝はそう口添えをして乱子の頭を優しく撫でた。

「や、やめろし!」

乱子はそう言ってすぐに結輝の手を振り払ったが、満更でもない顔をしていた。

「…行こ? 俺、乱子と一緒に花火見たいよ。二人の思い出にしたい」

結輝はそう言ってる乱子の手を引き、一緒に壊斗たちの元へと戻った。


…


レオはあの後、男に軽く忠告をして通話を切った。

「ったく。お前らが決めたルールだろうに…」

レオは少し苦笑した後(のち)、スっと一呼吸置き、先程とは打って変わった鋭い目付きに変わった。

「待っていろガーネット。仲間をやられた以上、上位四讃會全勢力を使ってお前を潰す。ついでに、お前の大切な人もだ」

はい、とうとう夏休み、終わっちゃいましたね。ではここで夏休み終了記念という事で、各キャラの身長、体重紹介でもやってみましょうか。


工崎壊斗 転生前175cm60kg 転生後177cm52kg

エメラルド・ジュエラード 160cm43kg

トパーズ・ジュエラード 174cm65kg

東雲円香 159cm45kg

七海昌幸 156cm46kg

近藤悟 167cm54kg

神崎結輝 172cm58kg

赤石乱子 166cm52kg

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