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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第四十八話「仲間の選択」

壊斗たちは、腹が空いている事を思い出したので、場所をうどん屋に移した。


「…マジで悪かった。俺のせいでまた皆を危ない目に合わせるところだった」

突然頭を下げる壊斗。皆は、状況が上手く飲み込めなかった。

「ど、どういうことです…?」

円香はあたふたとそう尋ねた。昌幸は何やら心当たりがあるのか、黙ったままだった。

「俺が調子に乗って…寝たばっかりに…」

壊斗とトパーズは、情景を知らぬ仲間に事の成り行きを説明した。途中からは、壊斗も実際に起きた事をトパーズから聞く立場になっていた。


「成程…そういう事だったんですね。どうりで体が動かなかった訳です」

「全然気づかなかった…」

円香がそう言うと、エメルもそれに同意した。

「そう言えばよォ、マサユキ。お前…何でさっき、指動かしてたんだ?」

「やはり気づいてくれてなかったんですね…あれは一応、ハンドサインのつもりでした」

昌幸はあはは。と苦笑いして続けた。

「指で空中に文字を書いていたのですが、あんなのでは伝わりませんよね」

昌幸は少ししょんぼりとぼやいた。

「オレァてっきり、寝る時のルーティーンなんかと…」

「違いますよ! 全く…トパーズさんは肝心な所が鈍いんだから」

昌幸は変な事を言われ、怒り気味にそう返した。


脱線しつつあった話を、壊斗が本題に戻した。

「ごめん。本当に…トパーズと悟にまた迷惑かけちまった…俺…本当…ッ」

壊斗は今にも泣き出しそうな顔をした。周りもそんな壊斗の意外な一面を見て驚いた。

「…大丈夫だって! オレは無傷だし、サトルだって致命傷は負ってねぇんだから!」

最後の麺を一啜りしたトパーズがフォローに入ったが、壊斗は相当落ち込んでしまったらしく、ずっと俯いたままだった。


トパーズは少しの時間、励ましの言葉を考え、思いついたものを壊斗に伝えようとしたが、途中で辞めた。壊斗の伸びきったうどんに、七味をドバッと入れた。

「これ食ったら許してやる」

そう言ってニヤリと笑った。壊斗には、その心遣いが刺さり、涙が零れ出した。


壊斗が泣きながら麺を啜っている最中、トパーズは静かに話を続けた。

「お前は強ぇよ。…相手も深手を負った状態だったけど、オレが勝てなかった相手を一瞬でぶっ飛ばしちまったんだから」

「オレやサトルだけじゃ厳しいかもしんねぇが、お前の力さえありゃあ…ここに居る皆を守れるぜ」

トパーズは、その言葉を発した後、声色を優しいものに変えた。

「だからよ、腹決めろカイト。あんまり甘ったれた事言ってちゃ、仲間を見殺しにすることになるぞ?」

トパーズは次に、皆の方を向いた。

「オメェらだってちょっとやそっとのことで泣きべそなんかかかねぇだろ?」

「…はい! 多少の危険も承知の上でついてきましたから!」

円香は拳を握りしめた。

「前の生活の方が過酷でしたし、これしきのことは朝飯前です!」

次々と決意に満ちた言葉が飛び交う。


「俺ももっと活躍するよ!」

少し目を離した隙に、エメルは悟の体を治したようだ。外傷が完治した悟もそう発言した。


「でも俺は! …お前ら二人の事が心配だよ」

うどんを完食した壊斗は、能力を持たず、まだ小さな子供の円香と昌幸の方を向いた。

円香は軽く深呼吸をし、口を開いた。

「私は…まだ短いけど、皆と居れて楽しかった…」

壊斗は無言で頷く。

「私、お城に住んでいる時…ずっーと、お城の中に閉じ込められて、外へは出させて貰えなかった。前まで、私にとっての外は、お庭の事だったんです。それ以上を知らなかった」

「ある日、偶然襖の中から話し声が耳に入った。声だけじゃ誰かわからなかったけれど、その人は外の世界がどれ程素晴らしいものかを教えてくれました。そして『私も見てみたい!』って思った。城を抜け出したあの日、初めて世界がこんなにも広いと知りました。そして、こんなにも綺麗なんだって」

いつの間にか円香は、少し涙ぐんだ声になっていた。

「ただ、世間知らずの私には行く宛てもなく、辺りもすっかり暗くなってしまいました。私は初めて寒さと空腹の辛さを知りました。今にも倒れそうでした」

「今日はここで1晩を過ごそう。そう思って立ち寄った路地で昌幸たちに出会いました。もし、昌幸たちに出会っていなかったら、私は今頃死んでしまってたかも知れません」

「昌幸たちは、見ず知らずの私を自分たちの(うち)まで案内してくれました。そしてよそ者の私をそこに泊めてくれた。『自分の家だと思ってくれていい』と言ってくれた。昌幸たちは、私に自分の力だけで生きる術を教えてくれた。知らないがいっぱいだった私に、沢山の事を教えてくれた」

今までの思い出を語ってゆく円香に、その場にはしんみりとした空気が流れた。

「…だから私は、一人きりじゃとても見尽くせない程の広い世界を自分の目で見てみたい。皆で確かめてみたい。そう思い始めました。その気持ちは、今も変わってない」

「まど…か?」

壊斗は次の円香のセリフを察してしまった。

「───私はついて行くよ。壊斗」

これは、昌幸を除く"仲間"に初めて使った"タメ口"だった。


円香の話に一段落がついた頃、続けるように昌幸が口を開く。

「…僕は始め、ただ円香の付き添いでついてきただけだったでした。けど、今はある一つの目標が出来ました」

「まさ…ゆき…?」

壊斗はまた嫌な予感がして、ほんの一筋の涙を流した。

「これから沢山の本を読んで、人生経験を積んで。いつか世界を知った時、自分でも書いてみたいんです。小説を」

壊斗以外の仲間は皆、微笑んでいた。

「…止めないで下さいよ壊斗さん。今は円香の付き添いじゃない。自分の意思でついて行くと決めたんです」

昌幸もまた、決意に満ちた表情で壊斗を見つめた。

「二人…とも…」

壊斗は、今にも感情が爆発しそうな状態だった。

「壊斗は私たちが一緒じゃ嫌?」

円香は小悪魔的な笑顔で壊斗の顔を覗き込んだ。

「そんなこと…」

「…じゃあさ、そんなに不安なら、皆と比べて少し非力な私たちを、壊斗が守ってよ。そうして、皆で楽しく世界中を旅しよう! 皆の目的のために!」

円香は両手を大きく広げてそう叫んだ。

「心配しなくてもオレが助けてやるよ。マドカァ」

「いえ、お気遣いなさらず」

「あ! オレには冷ぇままかよォ!?」

いつもは犬猿の中の二人だが、今は一緒になって笑った。壊斗も、罪悪感が消えていき、皆を守り抜くと心に誓った。




「そういやぁお前、何であれが"能力攻撃"だってわかったんだ? お前自身能力者でも何でもねぇのに」

他の皆を待たせている中、トパーズと結輝はトイレの個室越しに話していた。

「お前らに教えてもらったからだ。能力には色んな系統もあるって知ってただけだ」

結輝は淡々とそう答える。

「そうか。だが一番聞きてぇのはそこじゃねぇんだ。…何で能力の発動条件が"体の動きを止めること"って分かったんだよ? 何のヒントも無しに、あんな早い段階に」

結輝は少し間を開けた後、こう答えた。

「ヒントなら、あったさ。…俺、実は最初から起きてたんだ。眠いはずなのになかなか寝付けなくて。それで目を瞑ってたらさ、首から下が全く動かせない事と、瞼が開かないことに気づいたんだ」

トパーズは時々相槌を挟みながら結輝の話を聞いた。

「こんな意味が分からないことが起きたんだ。誰かが俺たちを攻撃しているって事にすぐに気づいた。それが能力によるものだってな。…そして、段々と唇の端から徐々に固まっていくような感覚がしたんだ。それで無理やり開けてみたら、張り付いていたもんを無理やり剥がしたからか、少し痛みがあったけど、何とか開くことが出来たんだ。それで分かった」

結輝は「それをお前らに伝えた瞬間にタイムリミットがきたみたいだ」と少し笑いながら言った。

「そうだったんだな。…やっぱりお前は凄ぇな。いつだって頭が冴えてるぜ」

「まぁ、俺もお前たちに守られる立場だってのは変わらないけどな」

結輝はそう言った後、改めてトパーズに礼を言った。

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