番外編「オオタ・クロト」
本当は41話を投稿しようと思ったけど変えた。今書きあげた。この話自分でもおもろいと思う。ずっと書きたかった話のひとつ。
高一、9月7日。門松修也が転校してきてから一週間が経ったあとの出来事。
「工崎くんおはよう!」
7時50分、壊斗が朝練を終え教室に戻ってきた時、玄斗は挨拶をしてきた。
太田玄斗、ミッドナイトブルーの眼鏡をかけており、体重は三桁に突入している。それに汗っかき。言うまでもない。三点盛りだ。
ほぼ全女子に見た目だけで嫌われ、話した事もない男子からも軒並み話題が上がるほどだ。勿論悪い意味で。
彼の温厚な性格から、一部の男子からは舐められ、いじられることが多い。だが彼は第三者から見ても酷いと思ういじりをされたところで、笑って流してしまうほど、懐が深いのだ。
その優しさにつけ込む奴が一人。
話は数十分前に遡る。
「工崎って、ウゼェよな?」
「…何だよ急に」
朝練の走り込みが終わり、五分休憩中に門松は4、5人のかたまりの中に割り込んだ。
ついさっきまで大盛り上がりだった場が急激に静まり返った。
「陰キャの癖に偉そうだし、ちょっとサッカーが出来るだけでイキリやがって…それ以外何の取り柄もねぇだろ。生きてる価値ねぇわあんな奴」
場の空気がピリついた。
「アイツこそ真の陽キャだろ。静かな子からヤンキーまで態度変えずに話せて。俺には無理だな〜」
森木は空気を察し、門松を責めるわけでもなく、壊斗を下げるわけでもなく、最後に自分を下げることでこの話題を終わらせようとした。
「どこが陽キャだよ、暗ぇし。何か用がありゃ誰とでも話すだろうが、馬鹿かテメェ」
門松は口が悪いだけで、相手を罵倒しようとしてこの様な発言をしている訳では無い。元々こういう奴なのだ。
「陽キャ陰キャとか人によるでしょ、自分で陽キャだと思ってても、周りから見たらどう見てもイキリ陰キャって奴も居るんだし」
小泉は敢えて門松の方を向かずにそう言った。
「何だそれ、お前の事か?」
門松は半笑いで尋ねた。
「俺からしたら、お前みたいに陰でグチグチ言ってる奴の方がよっぽど陰キャに見えるけどな」
佐藤がそう発した直後、門松は無言で木を蹴り飛ばした。
「物に八つ当たりとかガチの陰キャじゃんwきっしょww」
門松は目付きが変わり、佐藤に近づいた。
「やんのか?」
佐藤はニヤけながら門松の顔をわざと下から見上げ、そう言った。
「馬鹿、辞めろよ。たむせん見てんぞ」
門松は怒りの矛先を失い、自分の髪を思い切り掴んだ。
「…静かめな子って、誰だよ」
怒りで荒んだ呼吸を整え、少し落ち着いた門松は皆にそう問いただした。
「でけぇの出そうだ〜」
八時十分。朝SHRまで後二十分。太田玄斗はうんこをしにトイレへと向かった。
玄斗は近くに人が居ると大便が出ない。昔からそうだった。なので、大をしたくなれば人が来ない一階のトイレを使用する。
この学校は二階フロアが三年、三階フロアが二年、四階フロアが一年となっている為、必然的に一階には誰も居なくなるという事だ。
「よう。キモデブ」
門松は朝練終わり、玄斗の後をつけてきた。
「な、なんですか…」
そう言いながら玄斗はトイレに入ろうとした。
しかし、玄斗がトイレに入るのを許してくれず、門松は「待てよ」とトイレのドアを抑えた。
「おめぇのダチに工崎っつう奴居んだろ? 調子乗ってっからイラつくんだよ」
「はぁ…」
「何他人事みてぇな面してんだ?」
門松は玄斗にガンを飛ばした。
「僕には関係ないし、早く退いてよ。漏れちゃうよ」
「───だったら漏らせよ」
門松は玄斗の腹に前蹴りを入れた。
玄斗は咄嗟に腹筋に力を入れたが、少し効いた。
「みぞ狙ったんだけどな〜 上手く入ったんだけどな〜 なのに、随分と余裕そうだな」
門松は脅すようにそう言って見せたが、内心、驚いていた。
普通なら地面に蹲ってもおかしくない。腹を殴られた訳ではない。蹴られたのだ。腹筋を鍛えていたとしても、みぞに入れば滅茶苦茶な痛みを感じるはずだ。
「…ねぇ、君誰か知らないけど」
玄斗は俯いた顔を上げ、続けた。
「うんこ漏れたらどうしてくれるんだよ!」
腹に力を入れたため、うんこの顔が僅かだがこんにちはしてしまった。流石の玄斗でもキレて当然だ。
玄斗はトイレのドア付近から少し広い所へ移動した。
「邪魔しないでよ。土下座でも何でもするからさ」
玄斗はぶっきらぼうに言い放った。
「俺にボコられたらうんこさせてやるよ」
門松はニヤけた。久しぶりの喧嘩に心が踊っていた。二階の三年生と三年の教職員は修学旅行で不在の為、いくら大きな音を出しても誰にも聞こえない。誰もこのトイレに来ない。遠慮せずにめいいっぱいやれると思ったから、ニヤけが止まらなかった。この場合、一方的な暴力になるだろうが。
「よっと…! うわッ!!!」
門松はいきなり大振りのキックを発っし、ツルッと滑り、地面にすっ転んでしまった。しっかりと受け身をとって。
「…なんてな!」
門松はニヤリと笑った。転んだフリをして、右腕で受身を取り、左足で玄人の顎を狙った。
「───え!?」
玄斗は足が顎に到達する前に門松の足を掴み、卑劣な奇襲を食い止めた。
「…やめようよ。喧嘩なんて」
玄斗は門松の足を離してあげ、起き上がる時間を与えた。
「───ックソ!!!」
門松は恥ずかしさのあまりまた大振りなハイキックで玄斗の顔を狙った。
だが玄斗は門松の膝の関節に腕をひっかけ、ひょいと持ち上げ、バランスを崩した門松の横っ面に平手打ちをした。
「…下手なキックは打たない方がいいよ。狩られるから」
また玄斗は門松に着地する時間をあげた。
「…ってぇな、死ね!」
門松は着地したと同時に腕をしならせ、最短時間で左フックを放った。
玄斗は頭を屈め、タックルで壁に門松を叩きつけ、髪の毛を掴み地面になぎ倒した。門松の鼻から鼻血が吹き出した。
「もう行くね? 引っ込んじゃったよ」
玄斗が後ろを向いた隙に、門松は起き上がり玄斗のインしていたワイシャツをズボンから引き出し、背中から引き裂いた。
ビリッと音を立て、ワイシャツは破れてしまった。勢い余って下に着ていた肌着諸共引き裂いてしまった。
「ざまぁみろ! ワイシャツって結構高ぇ…」
鏡越しに見た光景に、思わず絶句した。
「───龍!?」
そう、門松は鏡越しに玄斗の背中を見てしまったのだ。
「見られた…か。折角手ぇ抜いてやってたのに…こりゃあ、口封じしなきゃな」
門松は頭が真っ白になり、無我夢中で殴りかかった。
玄斗は門松の顔面に鋭いジャブを打ち抜いた。門松は怯んだが、隙を与えずボディブローを叩き込んだ。
「ヴッ!!」
反射的に腹を抑え、少し屈んだ門松の髪の毛を掴み、顔面に膝蹴りをした。
「おい、クソ雑魚。この事誰かにチクったらぶち殺すからな?」
門松の髪の毛を鷲掴み、顔を上げさせ、そう吐き捨てた。
「何か聞かれたらトイレで転んだことにしとけよー」
玄斗はそう言い残し、トイレを後にした。
「……流石に今のはノーカンだよな? "孝司"」
玄斗はそう呟き、下駄箱から靴を取りだし、裏口から学校に無断で帰路に着いた。
本当は玄斗の真相もっと後回しにしようと思ってたけど我慢出来んかった
玄斗の過去編お楽しみに!




