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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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番外編「クザキ・カイト③」

 高二、季節は春の終わり頃に差し掛かっていた。


真崎(まさき)〜 今日の体育何?」

 壊斗は体育委員の真崎にそう尋ねた。

「シャトルラン」

「うわ、マジか〜」

 端的に吐き捨てた真崎の言葉を聞いた壊斗は露骨に嫌そうな顔をした。

 壊斗の通う『都立榊ヶ丘高校』の体育は、毎年五月の後半にシャトルランが控えている。この学校の体育の成績をつける事において、持久走とシャトルランに重きを置いている。もし基準値をクリア出来なければ、補習を受けさせられるのは疎か、成績を大幅に減点される。……というのは、あくまで噂。

 ただ、実際にこの二項目が良く出来た者と出来ない者とでの成績の開きがある為、殆ど確定と言えるだろう。

「壊斗、お前シャトルラン何回目指す?」

 壊斗の友人Aが、着替え途中の壊斗に話しかけた。

「う〜ん……150は行きてぇな」

「えげつねぇ」

 友人達は苦笑いをした。

「壊斗去年140…」

「7だった。確か」

「すげ。そんな奴見た事ねぇ」

 そんな感じで壊斗達は暫く駄べりながら体育着に着替えた。

「体育終わったら学食行く?」

「いいね」

「行こ行こ」

「壊斗奢ってよ」

「アホぬかせ」

 友人Bの提案に、その場に居た全員が乗っかった。

 体育は四時限目だ。体育終わりにそのまま食堂に行くためにポケットに財布を忍ばせた。


 皆で体育館に行く最中。

 壊斗達は偶然"太田玄人"に遭遇した。

「太田!」

 壊斗は「よっ」と右手を振った。

「皆先言っててよ」

 友人達は「おう」と返事をし、早く来いよと付け加え、先に体育館へ向かった。

「太田シャトラン何回だった?」

 玄人は2ー4組。体育は合同で行われるが、同じなのは1、2、3組と4、5組で別れて行われる。壊斗は1組なので、一緒に体育をする事は無い。

「90ピッタだよ。どうせならキリがいい数字が良かったから頑張って揃えたんだ」

「へぇ…すげぇな…」

 壊斗は玄人の体を上から下に見下ろした。

「あ! 僕の見た目だけで判断したな!?」

「バレた?」

 壊斗は「ごめんごめん」と笑いながら言った。

「僕はこんな見た目だけど動ける方のデブなんだ。あんま馬鹿にすんなよ?」

 玄人はムスッとした顔をした。


「おい壊斗。テメェだけには絶対負けねぇかんな」

 突然話かけられ、後ろを振り向くとそこには門松が仁王立ちをしていた。

「あれ? お前確か去年の記録七十回位じゃなかったか?」

「うるせぇな。今回は200目指すんだよ」

「へぇ。門松くん、200回目指すんだ。凄いね」

「げっ……太田」

 門松は最初から壊斗しか見てなかった為、玄人の存在に気づかなかった。

 門松は居心地の悪そうにそそくさとその場から立ち去ってしまった。

「…太田、門松に避けられてんのか? ……もし何かされたら俺に言ってくれよ?」

「うん…でも何で?」

「……もう、アイツと同じ人間は見たくねぇからさ」

 壊斗は何処か寂しげな眼差しで玄人を見つめた。

「はは、大丈夫だよ。それより早く行かなきゃ。もうそろ授業始まっちゃうよ?」

「うん……じゃ、また後で」

 壊斗は「大丈夫、か…」と小さく呟いた。



 体育館に着くと同時に授業開始の鐘が鳴り、整列を完了させる。

 準備体操を行い、前半と後半に別れた。壊斗は前半を選択し、スタート位置に立つ。放送の準備が整うまでの数分間、足の裏等をほぐす時間に当てた。

『五秒前、三、二、一』

 そうアナウンスが流れ、一同一斉にスタートを切った。

 ドレミファソラシの音楽がゆっくりと流れる。最初はペースが遅い。その為、門松は早歩きで済ませた。

「うへぇ疲れた〜」

 一回目のカウント終了時、坂口はそう言うと滑り込むように地面にダイブした。

 体育館の中で、笑いが起こる。まだ一回目だからか、笑かすなと怒る者は出ず。これが四、五十回を超えた辺りで笑わせようものなら、あちらこちらから怒号が飛び交うだろう。

 三十回目。女子の中には早くも脱落者が出始めた頃。

「おい壊斗! そろそろ疲れてきたんじゃねぇか?」

 門松がニヤつきながら話しかけてきた。

「いいや? 全っ然?」

 壊斗は何食わぬ顔でそう返した。

「じゃ、しりとりしようぜ」

「嫌だ」

「しりとり」

 嫌がる壊斗を差し置いて、強引にしりとりを始めた。

「…りんご」

「ゴリラ」

「ラッパー」

「パンツ」

「鶴」

「ルビー」

「ビール」

「留守」

「スルー」

「……お前、"る責め"してやがんな」

「五輪って言わなかっただけ有難く思え」



 回数は80を超え、女子は疎か男子にも多数の脱落者が出始めた。

「あれ? もうギブ?」

「…なわけ、無ぇだろ」

 先程からうってかわって壊斗が煽る版になった。門松は余裕そうに答えたが、それはただの強がりだ。声が震えている。

「じゃあしりとりでもする?」

「───ッ黙れ」

 壊斗は「ふっ」と笑みを零すと、門松に構うのを辞め、自分に集中した。

『97』

 そうアナウンスが流れた時には、しか数人程度しか走っていなかった。

「100…行けそうじゃん」

 壊斗はそう声を掛けたが、門松は返事をするのを辞めた。相当限界に近いのだろう。

「ポーカーフェイス…気取り……やが…って…」

 100回。そのカウントを聞いた門松は地面に転げ込んだ。

 門松の言う通り、壊斗は実際にポーカーフェイスを気取っていただけで、心の中には悲鳴が鳴り響いていた。

 現時点で場に残っているのは三名のみとなった。

 壊斗達は、女子や男子から名指しで応援された。だけど、今、それは邪魔でしかなかった。バドミントン部の笹谷は、その声のせいで気を散り、ペースが崩れた。

 笹谷は転倒してしまった。すぐさま体育教師が駆けつけた。

「───続けろッ!!」

 教師はそう壊斗達に叫んだ。

 123回。そこで壊斗の最後のライバルであった帰宅部の三阪がギブアップした。

 壊斗はそこで一気に視界が狭まり、頭の中が真っ黒になった。

 周りの声が何も聞こえなくなり、体が真っ赤に変色していた。

 額から垂れ流れた汗が口の中に入った。そんな事を気にもとめず、壊斗は走り続けた。

 149回。そこで不意に汗が目に入り、壊斗は立ち止まってしまった。

 歓声と拍手が起きた。だけれど嬉しさを微塵も感じず、絶望だけが壊斗にのしかかった。

「工崎くん! 凄かったよ!」

「壊斗! 惜しかったな!」

 壊斗は声を掛けてきた人達を軽くあしらい、水道へと向かった。

 壊斗は水を浴び、顔と頭を冷やした。そして、来年こそ、全盛期に叩き出した170回を越えようと心に決めた。

俺太田玄人めちゃくちゃ好きなんすよ

後に掘り下げて行くんですけど良いキャラしてて大好き。

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