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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第二十二話「Heavy love」

「僕は仲間達の影響で数え切れない人間を殺してきたんだ …次誰かに戦いで負けたらその人に殺してもらおうと思ってたんだけど… 君にはそれは無理そうだね」


スザンはぎこちなく笑った。


「あの時、僕はわざと君を怒らせた さっさと殺してもらうために… それを成し得るだけの力を君は持っているはずだ…」


「スザン 君はその父親に囚われすぎだ 君を変えた元凶はもう死んじゃった訳じゃん その人が君や君の母親に危害を加えてくる事はもう無い 今頃フンコロガシにでも生まれ変わってるんじゃない?」


「…それにもしあの世で父親がスザンのお母さんに暴力を振るってたとしても… 強くなったスザンがぶっ飛ばしてやれば良いんだ!」


壊斗は握り拳をゆっくり前に突き出した。


「ま、あの世があればの話だけどな」


壊斗は茶化すかのように鼻を鳴らし、そう言った。


───あぁ…。消えてゆく。何かが。スっと。


「…ねぇ 君、名前は?」


スザンは生まれて初めて他人の名前を自ら尋ねた。


「…工崎壊斗 カイトだよ」


「ねぇ… カイト …上位讃會の跡を継いでみない?」


言い方的に冗談目かしく聞こえるが、スザンは本気だ。


「…んなもん継ぐかよばーか 俺には荷が重いぜ」


殺伐とした雰囲気は無くなり、慣れ親しんだ友人との会話のような、暖かい雰囲気だけがそこに残った。


「僕さ 決めた! 上位讃會を解体する」


「それはどうして?」


「…もう必要ないから」


スザンは重りが消え去った様に清々しい気持ちだった。


「…僕はもう行くね する事があるから おやすみ カイト」


「あぁ …じゃあな」


壊斗はスザンを仲間に誘うのを、辞めた。


それは、今のスザンに茨の道を歩ませるのが酷だと思ったからである。




スザンは決意を胸に、ポケットに持っていたナイフを自らの首元へ───。


…刺すことは出来なかった。


次第に過呼吸になってゆく。


「はは。人を殺す勇気はあっても… 己を殺す勇気は無かったか…」


ジャーバルは電波が通ってないから、エマルカに向かおう。


トパーズはそう心の中で思い、エマルカへと向かった。




「…もう寝るか」


壊斗は話を聞き疲れ、眠気まなこで石の階段を上がる。


時刻は既に深夜二時を過ぎていた。眠くて当然だ。


「…あ、起こさないように…」


爆睡している二人を起こさないようにと、壊斗は忍び足で自分の布団の中に入った。


壊斗は布団に入った途端、急激に眠気に襲われ、うとうとしだし、すぐに眠りに入ってしまった。




───苦しいッ。息が出来ないッ…。


既に眠りに落ちていた壊斗は呼吸困難に陥り、徐々に目が覚めていった。


───何だろう、凄くヌメヌメする…。


()()が口の中で蠢く。むず痒く、気持ちが悪い。ねっとりとした水のようなもので口の中が満ちてゆく。壊斗は無意識にそれを飲み込んでしまった。


一旦それが壊斗の口から離れ、再び強引に、無遠慮にねじ込んできた。生暖かい空気が顔に当たった。壊斗とそれが混じり合う。それは、止めどなく動き続ける。


その正体は───


"舌"だった。ベロ。勿論自分のものでは無い。


耐えきれず、驚き、バッと目を開けると、そこには人間の顔が間近にあった。辛うじてその人間の目だけが認識出来る。


それは鮮やかなピンク色の瞳をしていた。


壊斗はパニックに陥り、何者かの"舌"を噛んでしまった。力強く。


「─── (いた)ッ!」


その人間は後ろへ飛び退いた。


壊斗はその人間が"女性"である事を初めて認識した。髪は黒いボブ。それに…とてつもなく胸が大きい。


だが壊斗はそんな事気にもとめて無かった。壊斗が抱いた感情は、ただ一つ。


───恐怖。ただそれだけだ。


壊斗は混乱に陥った。こいつは誰だ。何故ここに居る。何故俺の上に乗っかっていた。何故…舌を絡めてきた。


口の周りにべっとりと唾液が付着している。壊斗はすぐさまそれを拭った。


名も知らぬ女に初めてのキスを奪われた。それも、ディープキス。


壊斗にとって、キスは特別なものだ。性行為よりも大切だと思っていた。相思相愛の相手と、それでも付き合って数ヶ月後に、満を持してするものだ。と…


壊斗は恐怖と吐き気が止まらなかった。


呼吸が上手くできず、どんどん荒くなっていく。


誰しもが羨むこの状況。そんな中で。


───俺は嗚咽が止まらなかった。


怖い。ただただ、この人が。


「───痛いよ! 千切れちゃうかと思った!」


その女は可愛らしい声で、怒ったように文句を言い始めた。


この状況で一番怒りたいのは、壊斗だというのに。


「お、お、お前っ… まさか… あの時の…」


壊斗はこの女に心当たりがあった。


───昼間、銭湯で俺の事をジロジロと見てきた奴だッ!


「あ、覚えててくれたんだ! うれしぃなぁ…」


女は、だらしなく笑った。


「お前! うぇッ マジ誰だよ! ざっけんな!!!」


壊斗は感情を剥き出しにしてキレた。


「さっきから『うぇ!うぇ!』って… 流石の私でも少し傷つくなぁ…」


女はしょんぼりとそう言った。


「てめぇ… ふざけんなよ…?」


壊斗はブチ切れ間近だった。壊斗の気持ちは、大きく左右に揺れていた。


「っていうかさぁ〜 …その子 誰なのさ?」


女はエメルの方を指さした。


「…? 関係ねぇだろ! そんなの!!!」


腸が煮えくり返る思いの壊斗だったが、ふと、ある事に気づいた。


───何でこんなに大声を出しているのに、二人は一向に起きないんだ…?


壊斗は直ぐに二人の元に駆け寄り、大声で呼んだ。


「おい…! 起きろって!! どうしたんだよ!!!」


「エメル! トパーズ! 何されたんだよ!!!」


「その子達は起きないよ」


彼女は二ヘラと笑いながら言った。


「って言うか "起きるはずない"んだよ」


「…は?」


壊斗は再び混乱に陥る。良くない想像をしてしまった。


「その男の人は良いとして… その女 邪魔だなぁ… 殺しちゃおっかなぁ〜」


彼女はチラリと壊斗の方を向いた。


「お前、何言ってんだよ」


壊斗は女の腕を掴み、それを軽く握り潰した。


壊斗の目には既に光がなく、まるで操り人形のようだった。


ぐちゃ。と音を立て、彼女の右腕は、前腕部分で、千切れ落ちた。断面から、血がぼたぼたと滴り落ち、地面に垂れる。


「あ、ごめん───」


壊斗は我に返り、即座に謝罪の意を示した。


彼女は声を押し殺し、潰れた腕を拾い上げ、こう言い残した。


「絶対にまた、会いに来る」


彼女は窓から脱出した。


「!? アイツ! どこだよ!!!」


まるで時が止まったかのように。彼女は突然姿を晦ました。


「うぅん… なぁに...」


「なんだなんだ …うっせぇ…」


壊斗は急いで宿を出て、辺りを探した回ったが、既に人影は無く、静まり返っていた。


彼女は夜の闇の中に消えていった。

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