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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第二十一話「スザン・ジュエラード」

スザン・グランレイド、十五歳。


僕は半ば強引に孤児院を出た。行き先は決めておらず、向かう先の予定もない。


辺りをさまよい続けてると、何者かが声を掛けてきた。


「ねぇ君! どうしたの? そんな辛気臭い顔してさっ」


「っ困ります! 我々から離れないでください…! 王子である自覚をお持ちください!」


「そうです! "ルビー王子"!」


この腐った世界に絶望し、どこか高い所から身を投げようとしていた。そんな僕に声を掛けてくださったのは、ルビー様であった。


「…うるさいよ お前らに話しかけてないんだわ」


「っ!失礼いたしました! …ですがっ」


「おい 右の…えっと 名前わかんないけど そのグチグチうるせぇ奴処刑しといて」


「…承知致しました」


ルビー様は再び僕の方を振り向いた。


「ねぇねぇ 君 ダイヤモンド護衛隊に入らない? 君みたいな子 父様が今一番欲しがってるんだ! …感情の無い奴隷が」


ルビー様は最後に何かお言いになったが、声が小さく上手く聞き取れなかった。


僕はルビー様の推薦でダイヤモンド護衛隊に入隊した。下位の中でも、自ら護衛隊入隊を志願した者と、推薦を受けて入隊した者とでは雲泥の差がある。生きる意味と居場所の無かった僕に両方をくれたルビー様と王様には返しきれない恩があった。


僕の姓は、ダイヤモンド護衛隊入隊を気に、ジュエラードに変わった。


───あれから数週間経ったとある日のこと。


「聞いてよ スザン!」


「どうしたんですか?」


「今日ね 滅茶苦茶面白い事があったんだよ」


ルビー様は手で口を覆い、笑いをこらえながら僕に話しかけてくださった。


「どんな事でしょうか?」


「俺らの兄妹にさ エメラルドって奴 居るの知ってる?」


「…エメラルド? 聞いた事ないなぁ …あ! です!」


「あぁ、この事って口外しちゃいけないんだったっけ マズったな…まぁいいや 俺、お前の事信用てるから」


一見優しそうな言葉ではあったが、その言葉の節々に冷徹さが垣間見え、僕は唾を飲んだ。


「でさ …父様にバレないように隠語を使うか そのEがさ また馬鹿やらかしたみたいで父様にぶん殴られてたんだ! 俺笑っちゃいけない所なのに笑いこらえられなくって…」


ルビー様は吹き出してお笑いになった。


「へぇ そうですか」


「まぁアイツは父様のサンドバッグみたいなもんだからね」


「…はい?」


「俺さ …聞き返されんの嫌いなんだけど」


「す、すみません!」


「まぁ良いよ 今回は特別に許してやる Eは父様のサンドバッグだって言ったんだ」


「サンドバッグ…」


過去の事が頭によぎった。あのクズ親父の事が。


「エメラルド様は… 何をしたんですか?」


「う〜ん 俺は知らないけど何かしらしたんじゃん? 何もしないで殴られる訳ないし」


「オレは何もしないでも殴られるけどな」


頭をボリボリと掻きながら、トパーズ様がゆっくり歩み寄ってきた。


「と、トパーズ様! こんにちは!」


「ん? あぁ …良かったな いつまでも父さんに守られて ()()()


「はぁ?」


ルビー様は笑顔を崩さないで、トパーズ様の首を絞めた。


「お前さぁ… その名前で呼ぶなって何回も言ってるよなぁ 呼ぶたんびにぶん殴って教えてるんだけどなぁ それだけじゃ分かんねえのかなぁ!」


凄まじい剣幕でトパーズ様をまくしたてた。


「ご… ごめぇん゙なざい…! お兄様」


「…次は指だからな?」


ルビー様の表情が再び笑顔に戻り、


笑顔のまま、トパーズ様の右手の親指の爪を勢い良く剥がした。


僕はその光景を目の当たりにし、震えだしてしまった。


「…やっぱり偉いね スザンは もし俺たちの会話に割り込んで止めに来てたら… その場でお前の首を刎ねてたよ」


ルビー様はじゃあねと手をヒラヒラさせ、どこかへ行ってしまった。


「クソ! …痛てぇ… エメラルドに治してもらお」


続けてトパーズ様も居なくなってしまった。


僕は少し経ってから我に返り、あることを考えていた。


もし僕と同じ目にあっているのなら、助け出したい。僕を救ってくださった、ダイヤモンド王を。


殺さなくては。と…




だけれど僕は馬鹿じゃない。ダイヤモンドは疎かルビー様にすら指一本触れる事も出来ないのに、無策に襲撃しようとは思わなかった。


僕がまず初めに行ったのは、協力者集めだ。


僕と同じ道を歩んできた奴らを、言葉巧みに黙し、それでも分からない奴は恐怖で縛り付けた。


僕が仲間に選んだ、ガラの悪い連中は、僕みたいなのが話しかけると大体殴りかかってくる。そういう時は、抗力に助けてもらい、痛い目に遭わせ、ねじ伏せ、僕の仲間にした。幾ら僕でも、いきなり襲われたら、為す術なく殺されてしまう。僕の能力は、任意で発動する物だし、抗力も常に発する事は出来ない。自分の体は、他人に守らせる必要があった。


仲間が13人集まった。仲間のうちの一人が、


「俺らのチーム名を決めよう」


と言い出し、クジ引きで決まったチーム名、仮名『スザン会』と名付けた。…少し恥ずかしい。


仲間集めを初めて、二週間、僕が仲間集めに選んだ場所、スラム街に、珍しく小綺麗ななりをした、少女が膝を抱き、ポツンと一人座っていた。


髪は濃い赤をしており、顎下まで伸びていた。伸ばしたおかっぱのような髪型だ。


僕は足でまといは要らなかったので、無視して通り過ぎようとした。


その少女は、僕の手に無許可で触れ、こう言った。


「わ、私も仲間に入れてっ!」


僕はいひょうをつかれて、後ろに倒れてしまった。


途端、僕の仲間が数名が少女ナイフを向け、こう言った。


「おい糞餓鬼 スザンさんに気安く触れるんじゃねぇ」


「まぁ良いじゃねぇか …仲間に入れてやんよ …性処理係としてなぁ」


「辞めろ まだガキだ …見た感じ、僕と同い年くらいじゃないか」


「…? 君、これは見えるかい?」


僕は掌に抗力を集中させ、炎の様にして見せた。


「…手?」


抗力見えない…か。見込み違いだったか。


そう思ったスザンだったが、ダメ元で最後の質問をした。


「自称"神"が突然目の前に現れた事は?」


「…ある!」


───ビンゴ。


スザンは、少女が能力者だと、直感で薄々感じていた。だが、初戦ただの感覚に過ぎず、確証が持てなかったのだ。


「この子、使えるよ 僕と同じ"能力持ち"だ」


「そ、そんな事聞くだけで分かるんですか!?」


「あの力はスザンさんだけの超能力なんじゃないの!?」


「君、自分の能力の事、神から直接聞いたでしょ?」


話を聞くとその子、何と"二つの能力"を所持していた。


一つ目は、《瞬間移動(テレポーテーション)》おとぎ話でしか聞いた事の無い名前で、心底驚いた。詳細は名の通り、指定した場所に瞬間移動するというもの。もっと細かく言うと、少女の脳内にはこの世界と同じ世界が存在しており、この現実世界で訪れた場所にピンを置くと、そこに瞬間移動が出来るというものだった。


二つ目。と言っても、一つ目の能力の応用に過ぎない。少女の脳内の世界では、自由に動き回ることができ、脳内世界で行った場所の何処にでもピンを置く事が出来るらしい。ピンを置くと、そこに瞬間移動出来る為、実際に行かなくても、目的の場所に一瞬で行く事が可能だと言うのだ。ただ、欠点としては脳内の世界を移動する速さが自身の全力走りと同じ速さで、幸いその速さがずっと持続するけど、それ以上の速さで移動することは出来ない。という点だ。


「おい餓鬼ぃ 名前なんて言うんだよ」


「…ミーシャ。ミーシャ・エレギヌス…」


「随分と可愛らしい名前だね」


僕はニコリと微笑んでみせた。


「んな名前にしては後半えげつなくかっこいいけどな」


僕の仲間はそんな事で盛り上がっていた。


「ミーシャ、君は今から僕らの仲間だ」


この子は使える。この子の能力さえあれば。仲間を増やせるし、この子の他にも、ジュエラード家の人以外に能力者が居るかもしれない…。


僕はこの地で新たな仲間を集める事を断念した。僕の配下に、普通の人間は要らない。使い物にならない。


喧嘩に長けた者か、能力者。それが必要だ。


ある日家族の話題になっていた時に仲間の一人が、こんなことを言い出した。


「俺の曾祖父ちゃんが死ぬ前に言ってた事なんだけどよ… もうボケてたからあんま鵜呑みにすんなよ? ジジィは死ぬ直前、こう言ったんだ」


『………海の向こうには……国があるっ…』


「って 幾らボケてたとしてもよぉ そりゃないよな アホらし」


「試してみればいい ミーシャの能力なら 実際に歩かなくても目的地に辿り着ける 当然海の上もノーリスクで渡ることが出来るだろう」


「海の向こうまで行ったことは無いけど… 試してみる」


ミーシャは右手を右目にそっと添え、自分の世界に入っていった。


ミーシャが脳内を歩き回っている間、僕らはアジトで時間を潰していた。


「おいミーシャ! ちと遅くねぇか!?」


スザン会屈指の強者。腕っ節ならスザン会の誰にも負けない。大男サイモンがミーシャに話しかけた。


「ちょっと静かにして 集中が途切れると能力が解除されちゃうから」


相当な集中力が必要らしい。ちょっと集中が途切れただけで、こっちの世界に戻ってきてしまう。


「はぁ… また最初からになっちゃったじゃない」


「おいサイモン! テメェのせいで時間が伸びちまったじゃねぇかよ!!!」


「ふざけんなよサイモン!」


「お、俺のせいかよ!? ふざけんじゃねぇ!?」


サイモンは殴り掛かる勢いだった。


「なぁサイモン 少し黙ってくれないか?」


僕が少し声をかけると、怯えた子供の様に静かになった。


全く。本当に扱いやすい奴らだ。孤児院の奴らと同じ。故に… 退屈な奴らだ。


「幸い休憩しようと直前でセーブしておいたから良かったけど… 危うく最初からになってたところよ?」


「あ、危なかったぜ…」


ミーシャの能力には、相当な集中力が必要のようで、少し集中が途切れただけで、こっちの世界に戻ってきてしまう。


「ミーシャ どこまで行った?」


「まだ海の上 一体いつまでかかるのかしら…」


「脳内世界はどんな感じなの? 海の中を泳いでいるの?」


「何故か海の上を浮いてる 歩いてるって感じ …海の上って本当は歩けるのかもしれないわ」


「海に入ったら死刑になっちゃうよ…根気強く続けるしかないね 頑張って」


「うん…!」




それから二日程度経過した。


「あ〜人殺してぇ」


「俺とやるか?」


サイモンは手をボキボキと鳴らした。


「やだよ 俺死んじゃうじゃん」


アジトの空気は最悪。皆だらしなくダラけていた。


「…っ!見つけた! 」


ミーシャが突然大声を出し、アジト内一斉に緊張が走った。


「おいおい嘘だろ!? 本当にあったのか!?」


「やっぱり曾祖父ちゃんの言ってること合ってたのかよ…」


「早く行ってみようぜ! 何があるんだろう…」


「ワクワクが止まらねぇぜ!!!」


「…うるさい」


「ご、ごめん スザンさん…」


「じゃあ… 今から行こうか」


「スザンさん… もしかして楽しみなんすか!?」


「…まぁね」


スザンは目を閉じて笑う。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺まだ母ちゃんに別れの挨拶してねぇよ!」


「俺も彼女連れていきてぇし!」


「…いつでも無制限に瞬間移動出来るんだろ?」


「…えぇ」


「なら戻りたくなった時にミーシャに頼めば良い」


「ミーシャはやっぱ万能だな!」


『ミーシャ! ミーシャ!』


ミーシャコールは数分間鳴り止まなかった。


「じゃあ皆 絵を描くように手を繋いで」


ミーシャの言葉に、僕は頷いた。


「えぇ!何で!?」


「《瞬間移動(テレポーテーション)》は私以外の人を一緒に瞬間移動させるには手を繋がなければダメなの ほら 早く!」


「何だか気恥しいな」


「キショいこと言ってんじゃねぇよ 早く繋ぐぞ」


その場に居た全員で手を繋ぎ、輪になった。


「《瞬間移動(テレポーテーション)》!」




僕が目を開けた時、そこは謎のサラサラした白い地面、押し寄せる津波。ここはゾウ大陸では無いと瞬時に理解した。


「夜だから暗くて何も見えねぇ!」


「なんだここ!」


「このザーザー言ってんのは何だよ!?」


全員大はしゃぎだった。勿論、僕も初めて見る光景に、密かに胸を躍らせていた。


「…じゃあ僕とミーシャはダイヤモンド王国に戻るね」


「え?」


「何でですか!」


「折角来たばっかなのに!?」


「…僕はこれからもちょくちょくダイヤモンド城に顔を出すよ あまりにも顔を見せないと護衛隊に怪しまれるからね それにいつでも戻ってこれる 君たちは勧誘でもしててくれ 明日 朝にこの場所に集まれ」


そう言い残し、僕はミーシャとダイヤモンド王国へ《瞬間移動(テレポーテーション)》した。




スザン会の名前を上位讃會に改め、チームを立ち上げて一年が経過した時。


僕は一人行動をしていた。


エマルカにある、とあるショッピングモールにて。


僕はトイレの小便器で用を足していた。


「おい! 返せこの野郎!」


突然見知らぬ爺さんが怒号を浴びせてきた。


僕は心当たりが無かったので、無視をしていた。


「無視すんなゴラ!」


ズボンのベルトを閉め終わり、爺さんの方を振り向く。


「俺の携帯返せゴラ!」


確かに、僕が用を足していた小便器の上に、黒いガラケーが置いてあった。だが僕には無関係だ。きっとこの爺さんの忘れ物だろう。


「僕は知りませんよ?」


「やんのかコラ!!!」


爺さんは再び僕を怒鳴りつけた。


「やりませんよ?」


「殺すぞゴラァ!」


爺さんはスザンの胸ぐらを掴み、脅したり


「これは… 何のつもりですか?」


スザンは爺さんの喉仏の上辺りを握り潰す勢いで掴んだ。


「ぐうあ゙ぁ! 離せ… コルァ!!!」


爺さんは殴る蹴る等必死の抵抗をするが、僕には微塵も効かなかった。抗力でガードしているからだ。


「貴方が離しましょう」


スザンはにこやかに笑うと、手に抗力を込めた。


グチャ。ベキッ。と音を立て、爺さんの首の骨は潰れ折れた。


爺さんは血と泡を吹き、その場に倒れ込んだ。


爺さんの唾が、手にべっとりと付着した。


「…汚いな 手を洗う所は… あ」


スザンは抗力で手を鋭く強化し、爺さんの首を刎ねた。


断面から止めどなく流れる血で手を洗った。不要な頭は遠くに投げる。


「ふぅ… 応急処置は完了っと…」


僕はトイレの出口に蛇口を見つけた。


「あれ? 手洗い場所あんじゃん ごめんね〜 爺さん」

ルビーの声は、CV中村悠一さんを想像しております。

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