第二十話「スザン・グランレイド」
皆「藤井風」聞いた方がいいよ
俺「へでもねーよ」が一番好き。風さんはcoverも最高だから
例えば「フライデーチャイナタウン」や「接吻」、「shape of you」も最高!
さっきradの「おしゃかさま」のピアノカバー聞いたんだけど本家聞きに行ったら神ってた。RADWIMPSもおすすめ。
僕は父を殺めたその日から、母の姓を名乗る事にした。あの汚らわしい姓を名乗る事は僕のエゴが許さなかった。
僕はあの後、家を出てその日の寝床を探していた。公園のベンチの上に寝転がり、クズ入れに捨ててあった新聞を掛け布団代わりにし、うとうとと眠りかけていた。その時、知らないおじさんが声をかけてきた。
「君 こんな所で何してるのかな?」
眠気が一瞬で吹き飛んだ。
「…い、家出です」
「ご両親と喧嘩しちゃったのかい?」
「…」
僕は素直に真実を洗いざらいおじさんに話した。話終えると、何故か止めどなく涙が溢れてきた。
おじさんはそんな僕に優しくハグし、こう言った。
「辛かったね… 君は偉いよ きっとお母さんも喜んでいるよ」
そんな無責任な言葉でも、当時の僕かられば泣き叫ぶ程嬉しい言葉だった。
泣き止んだ後、一晩だけおじさんの家に泊まってもいいと言ってくれた。
夕食は今まで食べたことの無い、豪勢な食事だった。父ですら食べた事の無いと思う。
初めて"ベッド"という物で眠った。今までは薄い毛布だけを与えられ、床で眠っていたから、あまりの気持ちよさに直ぐに眠りに入ってしまった。
よく朝、朝食を食べた後、おじさんは僕に言った。
「知り合いに孤児院を運営してる奴がいるんだ」
朝起きてすぐ、おじさんの知り合いが運営している孤児院にやってきた。
そこの孤児院は、日中働かされることで、衣食住を保証してくれるといったサイクルになっていた。
院長は僕のことを快く受け入れてくれ、僕は安堵していた。やっと普通の暮らしができるんだって。
そんな甘い考えは、初日で消えた。
新入りは他の孤児達のやりたがらない雑用を押し付けられる。僕は自分の業務と、他人の業務を一日に二つこなさなければならなかった。
理由付けの為に、新人だからと言われていたが、こんな体つきなのが原因だと察した。僕がどれだけ昔からこの孤児院に居たとしても、扱いは変わらないと思う。
孤児院の職員達は、僕が相談しても適当にあしらってきた。外ヅラだけ良かったという訳だ。
「おらスザン! 死ねよ!」
僕を集団で虐めてきた主犯格がそう言った。
父にすら言われた事の無い言葉を平然と吐く奴ら。僕は失望した。こんな世界に。
僕はスッカリ孤児達のサンドバッグになっていた。何かとストレスの溜まる孤児院生活の中で、僕を殴る事が唯一の発散方法だったのだ。
全部非力な僕が悪いんだ。そう言い聞かせ、何とか自我を保っていた。
アイツらは、嫌いな食べ物が出たらこっそり僕の皿に置いていく。孤児院では、お残しをすると飯が抜きになるせいで、僕は泣きながら孤児院達の食べ残しを休み時間を使って完食した。
そんな生活が二週間続いた。僕はふいにこう思った。
───このままじゃ… 前と変わんない… 全く同じじゃないかっ…! それに… 何もしてない僕が耐える必要なんか無いんだ…。
僕は一度たりとも休み時間に休んだ事が無かった。残飯処理をさせられていたからだ。決意を胸に、皆が僕の皿に残した残飯を、ポケットの中に詰め込んだ。
自由時間。昼食後一日一時間のみ鉄格子に囲まれた広場に出る事を許可される。そこは、ほんの少しの遊具、黄色い砂に、澄み渡る青い空。僕は砂利を左手に握れるだけ握って、孤児院の… 僕を虐めていた奴らのボスに声をかけた。
「おい お前! ぼ、僕と決闘しろォ!」
「…あ゙?」
「…かかってこい」
僕は震える足を抑え、右手をクイクイと動かした。
「上等じゃねぇか… 死んでもチクんなよ?」
ボスは物凄い剣幕で襲いかかってきた。
怖い! 逃げたい! という気持ちを必死に抑えた。
僕は予め持っていた砂利を、向かってくるボスの目に投げつけた。
「ウグッ! ──痛!」
「僕だって… ただ虐げられる為に生まれた訳じゃないぞ!」
「ひ、卑怯だぞ! 男なら正々堂々拳で勝負しろ!」
「そうだそうだ!」
外野が何かを喚き散らしているが、気にならなかった。今は一人の敵に集中する。
能力なんて使わない… 効力なんか使わない…! 自分の力だけで… コイツに勝ってみせるんだ!
「うあああああぁああ!」
僕は一心不乱に殴りかかった。鼻を狙って。然しボスは、目が見えないながらも僕のみぞおちを的確に殴りつけた。
「うぐぅ゙! ぼぇ!」
ボスのパンチは、内蔵と骨に響いた。ただ…
───父さんのパンチより… 柔い!
死ぬ程痛かったが、何とか堪える事が出来た。
ふらつく足元の中、僕は静かに相手の前に立ち、目を突いた。中途半端じゃなく、確実に潰れるように。
「痛でぇ゙ええぇぇえ゙えぇえ!」
ボスは痛さのあまり、目を抑えた。
───い、今だ! この隙に金的を…!
そう思い、足を上げた瞬間、ボスは裏拳で反撃してきた。
それが顎に見事にクリーンヒット。
顎が外れた。あまりの痛さに、涙が溢れ出す。
「ハハッ! 手応えがあったぜ… 今のは… "顎だな"確実に外れたろ…? ざまぁねぇぜ… この卑怯もんが…!」
僕は自力で顎を元に戻した。
「───っうぎゃぁああああ゙ああああああああぁぁぁ!」
あまりの痛さに、絶叫してしまった。これでは相手に居場所がバレてしまう。
「そこだな? うおらぁあああ!」
真下に垂直に振り下ろされた拳を、体を仰け反らせギリギリ交わす。
「っくそ! どこだ! 音を出せ!」
馬鹿が。こんな絶好の状況で音を出す訳…
ズザッ
あっ。
足を引いた時、誤って音を出してしまった。
「そこだなぁ! おりゃァァァァァァ!」
ボスは突進を仕掛けてきた。僕はそれに対抗するように突進した。今になってみれば、どうしてこんな無謀な取っ組み合いをしたのか、自分でも分からなかった。
僕の体は簡単に吹き飛ばされた。ただのタックルで、宙に浮かぶ。
砂の地面に打ち落とされ、体中を擦りむいた。ただ、その時にはもうやけくそだったから、その痛みは気にならなかった。
僕は何を思ったのか、リベンジをした。ボスにタックルを仕掛けたのだ。
それはタックルと言うよりも、ただ抱きついたに過ぎなかった。
ボスは思いっきり僕の腹に膝を入れた。
僕はさっき食べた昼食を吐き出してしまった。息が出来ない。苦しい。
ボスは続けて脇腹を斜めから刺した。拳が刺さり、僕に尋常じゃない痛みを与える。
締めに僕の肋骨当たりに強烈な蹴りを入れた。少しヒビが入ってしまったのか、息がよりしずらくなった。
僕は立つことが出来なくなった。周りの野次馬は、まるでスイカ割りのようにボスを導いた。
僕は必死に地面を転がり、ボスから遠ざかった。
時間が経つにつれ痛みが増す。僕は決死の覚悟を決め、立ち上がった。
倒れてしまいたかった。降参してしまいたかった。でも、そんな事しても全くの無意味だ。相手が付け上がるだけだ。
フラフラな足取りで一歩、一歩確実にボスの元へ近づき、歩み寄り、
…今度こそ…音を立てないように。
ボスの股間を押し潰すように蹴った。
「───ッ!うげぇえええ゙えぇ!」
ボスは白目を剥き、地面にヘナヘナと座り込んだボスの上に馬乗りになった。
そのまま、ボスの鼻っ柱を何度も何度も殴りつけた。ボスの鼻は、既に陥没していた。
「どうだぁあああああ!」
僕の脳内にはアドレナリンが吹き出していた。笑いが止まらない。
ボスの口元に膝を入れ、歯を数本へし折ってやった。
「なぁ… お前らが残していったグリンピース… 実は持ってきたんだよォ …ほら 食え! 好き嫌いはよくねぇぞ!」
嫌がる口を爪が食い込む程掴み、上下に思いっきり裂き、抵抗出来なくした口の中にグリンピースを詰め込む。
「…飲み込め」
「飲み込めっつってんだろうがあああぁああ゙!」
言う事を聞かなかったボスに、おしおきした。喉元にかかと落としを食らわした。
ボスは衝撃のあまりグリンピースを吐き出しやがった。
砂に塗れたグリンピースを、再び口に詰め込んだ。
「どうだ? 美味いか?」
最後に思いっきり顔を踏みつけ、孤児院へ戻っていった。
戻った後、手に着いた汚ぇ血を洗い流した。
幸い、誰かが罪を被ってくれたらしく、ソイツは独房へぶち込まれてた。
服に付いた返り血について、背中に個人番号が記されている為、言い訳をするのが面倒だったが、他の奴が弁明してくれ、職員達もわかってくれたみたいだ。僕は彼らが職員に何を言ったのかは知らない。
あそこまでやったのは、感情が高ぶったというのもあるが、見せしめの為でもあった。
そこから、僕に嫌な仕事を押し付けてくることも無く、逆に美味しい物を僕に分けてくれるようになった。新しく入ってくるやつも多々居たが、全員誰かしらが僕の事を教えたのだろう。誰も刃向かって来なくなった。
その代わり、僕を恐れて誰も友達になってくれる人は居なかった。昔も、この先も。
僕は生まれてこの方、友達というものが居たことがない。父が学校に行かしてくれなかった為、文字もまともに書けやしない。
母が居たから寂しくなかった。然し今は、あの優しかった母はもう何処にも居ない。
孤独。ただそれだけが、孤児院で過ごした四年間という年月の中で、その孤独感が一番辛かった。
僕は喧嘩したことがあまり無いので、喧嘩シーンは格闘技や漫画等を参考にしています。今めちゃくちゃハマってる漫画がありまして。格闘技のシーンを早く書きたいなぁと思っているのですが、まだ後になりそうです。




