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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第十五話「正邪」

王様ランキング第2クールOPが神すぎた。Vaundy最高!

Vaundyの中で好きな曲は「花占い」「soramimi」「泣き地蔵」「不可幸力」「東京フラッシュ」「napori」「踊り子」「灯火」「僕は今日も」「融解sink」「life hack」「benefits」が今思いつく限り好きな曲です。

ちなみに初めて聞いたVaundyの曲は「不可幸力」です。

男は、その道のプロのように淡々と作業をこなす。胸骨圧迫と人工呼吸を交互に入り混ぜて。


壊斗たちは、ただそれを見ている事しか出来なかった。


「よし! 心臓もちゃんと動き出したっ!」


「けほっげほっ」


エメルは咳きこみ、海水を吐き出した。


『よ、良かったぁ』


男は安堵した二人の頭を、殴りつけた。


「馬鹿か!? 生死に関わる事だぞ! 躊躇(ためら)ってんじゃねぇ!」


「いってぇ!」


男の拳には、一人だけ手応えを感じたが、もう片方には全く効かなかった。寧ろ逆に、男の拳を腫らすという外傷を負わす始末だ。


トパーズは、男の顔をマジマジと見る。年は三十代前半か、二十代後半くらいに見えた。


「すみません …おい」


壊斗はトパーズに目配せを送った。


「……すんません」


「ここ…は?」


一際高い声に、壊斗らは後ろを振り返る。すると、エメルが目を覚ましていた。


「エメルっ!」


壊斗はすぐさまエメルの元に駆け寄った。


「カイトが… 助けてくれたの?」


「…いいや 俺は何も出来なかった… お礼ならこの人に言ってくれ」


「礼には及ばんよ 世の中、"助け合い"だろ?」


「あ、ありがとう…ございました」


「良いって良いって! 意識が戻っただけでおじさん一安心……」


「…おい トパーズ 後で話がある」


男とエメルが会話をしている隙に、壊斗はギリギリトパーズにしか聞こえない距離でそう言った。


「…分かった」


視線を男に向け、壊斗は質問を始めた。


「すみません 聞きたいことがあって」


「何だ?」


「蝿ってご存知ですか…?」


壊斗の真剣な眼差しでの質問に、高らかに笑った。


「知らなきゃここまで無傷で来ることは出来ねぇだろう?」


男は何を当たり前な事をといった顔で壊斗を見る。


「すいません 俺たちその蝿について疎くて… 蝿って… 毒とか 無いですよね?」


「…冗談だろ? 本当に知らねぇのか?んな事…」


男は笑いながらそう言った。


「で? 毒ねぇ… どっちだと思う?」


「無い…と思いたいです」


「…正解! 蝿に毒なんて無いよ 詳しく言うと、アイツらは目が見えねぇ。"音"で獲物の位置を特定し、集団で襲いかかる 襲われたら最後 骨すら残んねぇらしいぞ」


壊斗は肩の荷がおりたのか腰が抜けたように地面にへなへなと座り込んでしまった。


「鋭い牙と強い顎で皮を食い剥ぎ 次は肉を噛み抉る 全身の肉を食い尽くしたら 最後は骨を噛み砕く この森にゃ 偶に死体を捨てに来る奴がやってきたりする 骨も残らず食ってくれるから死体の処理に便利だってな 一歩間違えりゃ自分諸共食い尽くされるってのに 馬鹿な奴らだ 人なんか殺すのは良くねぇ! …ってこんな話 女の子の居るとこでするもんじゃねぇな 悪いな? 嬢ちゃん」


「い、いえ…お構いなく…」


「で、一体何でそんな事聞くんだ? 襲われたってわけじゃ無さそうだし… その安心のしようは…」


「実は襲われ…襲われそうなった所をギリギリ逃げ出したんです!」


「そうか ルートも知らなそうだし 下調べせずにこんな森の中に入り 無傷で逃げ出せるなんて…本当に運が良かった」


「ルート?」


「蝿の群れには各群れ毎に生息場所が定まってんだ それを把握し、()けながら進めば安全に森を抜けられるって訳よ」


壊斗はへぇ〜と関心した。エメルはまだ起きたてで元気がないようだ。トパーズも何故か喋らない。


「でもお兄さん、いくらそのルートを知ってたとしても、100%安全とは限らないじゃないですか もし見つかったら骨まで食われちゃうみたいだし… 危険な思いをしてまでこんな所に来たかった理由ってあるんですか…?」


「お兄さんって… 俺はもう三十九だぞ? おじさんでいいよ いや〜久々に言われたなぁ やっぱ若く見えるか?」


男は…おじさんは嬉しそうにそう言った。


「…俺はここから景色が好きなんだ。多少の危険を承知の上でも、眺めていたい。何も無いと分かっていても、もしかしたらこの先に何かあるんじゃないかって考えたり。ロマンがあるだろ?」


壊斗は、死ぬまでこの先に何があるのかを知れないのか。と何だかおじさんが可哀想に思えた。


「…そうですね。ありがとうございました」


「礼なんかすんな 世の中は助け合いで出来てるんだよ さっきも言ったろ?」


この人は本当に良い人のようだ。壊斗は本心からそう思った。


「…よし、そろそろ戻ろうか。俺が道案内するぜ?」


「…折角ですけど、すみません。俺たちはもう少しこの景色を見てからにします」


おじさんの提案をやんわりと断った。


「そうか? じゃあ…ほら」


懐から紙切れを取り出した。


「これは…?」


「ここが今いる場所だ。このバツ印を避けながら進めば安全に森を抜けられる」


「おぉ…凄い ありが…」


「礼は?」


おじさんは片目を開け、壊斗に問う。


「要らない…」


「そう! じゃあ、俺はこれで───ん?」


立ち去ろうとしたおじさんは、何かに気づき、後ろを振り返った。


「そこの黄色いの、よく顔を見ると…ダイヤモンド王国んとこのトパーズ王子じゃないか。何でこんな所に…」


「…気の所為だろ 変な探り入れてくんじゃねぇよ ぶち殺すぞ」


トパーズはおじさんの顔の目の前まで近寄り、目をかっぴらいて威嚇をした。


今まで対して喋らなかったトパーズが久しく口を開いたかと思いきや、それは親切なおじさんに義理を欠いた発言だった。


「…殺す、か。前に、君の父が同じことを言って俺の妻を目の前で殺した。奴にとって見れば、妻の方が先に無礼な態度をとったんだと。…そのせいで、俺は今も一人でこんな辺鄙なとこでひっそりと暮らす羽目になった…君の目は、あの時の男の目に良く似ている」


「あの男… 父さんの事か? あのゴミと一緒にすんな」


おじさんは言葉にこそ陽気さを残してはいたが、体は小刻みに震えていた……怒りで。


「…」


壊斗は無言で俯いた。


「…俺の正体 分かっちまったみてぇだな 正体を知られた以上、お前を生かしておく事は出来ねぇ …あ、盾はさっき壊れたんだったな」


トパーズは咄嗟に拳を構えた。


「…もういい うんざりだ」


壊斗は冷徹な声でそう呟く。


「…あ?」


「…おじさん 今までありがとうございました 出来ればこいつの事は他言しないで頂けると有難いです」


「…理由は知らないけど 何か事情がありそうだな …分かった。どうせ喋る相手も居ないし。じゃあ俺は行くから …達者でな」


おじさんはそう言い残し、その場を後にした。


「お、おい! バン! 何で逃がし…」


「…うるせぇよ」


「っ!?」


トパーズが思わず声を漏らしてしまう程の冷たく端的な言葉を吐く。


「あの人は良い人だ あんな暴言吐かれたのに、他言しないと約束してくれた」


「し、信じられるかよ!」


「少なくとも 俺はお前なんかより、あの人の方が数段信用出来ると思うけど?」


壊斗は手招きでエメルを呼んだ。


「エメル、出来れば…ここから少しの間だけ離れていてくれないか? 会話が聞こえないくらいに 今、お前に気ぃ遣って言葉を選ぶ事が出来なそうだから でもあんまり森に近づくな? 危ないから」


「う、うん…」


言いつけ通りにエメルは離れた所に行った。


「お前には色々と言いたいことがあるが… まず初めにこれが」


「何だよ…?」


「…何でエメルが蝿に(たか)られている時… ただ呆然と眺めていた?」


「そ、それは…!」


「なんで助けなかった?」


「いや、違っ」


「言い訳すんな。お前は質問にだけ答えてりゃ良いんだ」


「バ、バン…」


「…」


壊斗は言いたいことをまとめるためか、少し黙った。


「…お前は少し調子に乗りすぎだ。何してもいいと勘違いしてる。前まではそれで良かったかも知れないが、今のお前はただの民間人だろ? 『もうジュエラードの名前は使えない』って、自分で言ってたじゃないか」


「…」


「つまりそれは、家柄を捨てて、自力で頑張るってことじゃないのか?」


トパーズら無言のまま、何か言いたげに俯くだけだった。


その反応に、壊斗は嫌気がさした。


「で? お前、いつになったら質問に答えるんだよ……お前、前に『オレが盾になる』とかほざいてたな? …妹一人守れねぇ奴が、盾になる? どの口が言ってんだか」


「…わ、悪ぃ… 分かんねぇんだ… オレも… 何でこうなったか… 何で何もせず、エメラルドをただ呆然と見つめていたか…分かんねぇ…ッ! で、でも…っ 見捨てた訳じゃないんだ…っ 信じてくれっ……」


トパーズは込み上げてきたものを抑えきれず、泣き出した。悔しそうに。壊斗にキツく言われたからでは無く、自分自身さえ何故エメルを助けなかったのかが理解出来なかったからだ。


「ま、蝿がキモくて動けなかったとか、そんな理由だろうけどな …無意味な質問だったな じゃあ、次だ」


「っ…うぅ……」


「お前はすぐに人を殺そうとするよな? 現に、つい最近にも一人殺したみたいだし。そんな人間を信用しろって言う方が無理だろ 何かあれば次はこっちが殺されるかもしれない」


トパーズは泣きじゃくるだけで問いに一向に答えようとしない。壊斗は一方的に話しを続ける。


「あの時、お前はおじさんに"お願い"をするんじゃなく"殺して"解決しようとした 分かるか? その違いが。流石に常軌を逸しすぎだ」


「…それって…どういう…」


「簡単な話だ。価値観の合わない奴とは一緒に居れないって言ってんだ」


「ま、待てよ…! お、オレが父さんにチクったらよ… お前は確実に捕まる!それで死刑だ! それでいいのか!?」


自暴自棄になりつつあったトパーズは、卑怯な手に出た。


「お前も帰れないんじゃなかったのか?」


「あ…」


「クソみてぇな脅し仕掛けてきやがって …うっぜ」


壊斗には、トパーズへのイライラが募る一方だった。


「もういいよ。俺はどこか安全なところで暮らす。最初からそのつもりだったし」


「バン…ッ 待ってくれ…!」


トパーズは必死に壊斗へしがみついた。


「俺のパーカー引っ張んなよ。屑」


壊斗はさっきとは打って変わった、別の怒りをトパーズにぶつけた。


「…悪かった。言い過ぎた」


壊斗は、自分の態度を反省した。崖まで歩き、壁を伝うようにして海に飛び込み、頭を冷やした。


「…ば、バン!?」


「…俺ダメだな。人を殺しても許されるのが、ここでの"普通"なのに。それを受け入れられなかったからって、お前に当たって…」


壊斗は、指を壁に食い込ませ、そう言った。


「え…?」


壊斗の突然の変わりように、トパーズは驚いた。


「…正直に言うと、俺はお前が怖いんだ。ううん。お前だけじゃない。だって、人を殺す奴と、一緒に居た事が無いから。それに、人殺しが許されてるこの世界も、怖い」


「トパーズ」


そう、優しく呼びかけた。


「…俺はさ、お前の事…信用してたし、尊敬すらしてたんだ。幾ら俺たちの信用を得る為だとしても、自分の腕を切り落とす覚悟は、俺には無いからな」


トパーズは、わけも分からず海水に飛び込んだ。


「…ぶはッ! 何すんだよ!」


トパーズが上げた水しぶきが目に入り、壊斗は顔を覆った。


「わ、分かんねぇけど、何か、体が勝手に…」


「何だそれ」


壊斗は、思わず笑みを零した。


「正直…俺はこの先不安だ。こんな世界に、馴染める気がしないんだ。なぁ、俺、どうすりゃいい?」


「オレも…ガキん時はバンと同じだった」


「…?」


「人殺しは良くない事だって思ってた。けどな…殺しを重ねてくとよ、それが至極当たり前のことに思うようになっちまった。今じゃ人を殺しても、平気でいれるようになった」


「…こんな事、お前の前でしか言えねぇけどよォ、オレァもし人を殺さずに生きてけんなら、そっちの方がいいとさえ思ってる。昔も、今も」


「そう…なのか?」


壊斗は予想外の言葉に驚く。


「たまに…寝てるとよ、オレが今までに殺してきた奴の怯えた声や叫び声にうなされる事があんだ。自分じゃ分かんねぇけど、表に出ないだけで、裏じゃ何かしら感じてるのかも知れねぇ。罪悪感とか」


「…悪かった。お前を勝手に『人を殺しても何とも思わない奴』だなんて思っちまってた」


「あ、あぁ。…許す?」


「…調子乗んな」


『ぷっ…』


二人は同時に吹き出して笑った。さっきまでの重たい雰囲気が無かったかのように。




壊斗たちは一緒に崖を登り、陸に上がった。


「にしてもさ ここまで感情を剥き出しにしたのは久しぶりだわ …本来俺そんなキャラじゃないし」


「凄ぇ怖かったぞ…っ 少し小便チビっちまったし…」


「きったねぇ」


壊斗たちは、再び笑いあった。そこに、さっきまでの蟠りは既に消えていた。

トパーズも確かに悪いけど壊斗も悪い所あるよね。今回のタイトルにはその思いを込めました。

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