第十話「帰還」
そう言えば先々週位に東リべの実写見に行きました。タケミチが手すりに頭叩きつけられるところが少しグロかったです笑。
「うーん おかしい…」
壊斗はこの世界に転生してから、疑問に思う事が多々ある。
まず、前にも言ったが全体的に筋肉が減少している。特に足だ。昔からサッカーをしていただけあって、壊斗の足は結構筋肉質であった。
そのはずなのに、足はモデル並みに細い。体も肉をゴッソリと削ぎ落とされたかのようだ。
次にこの世界について。"異世界"というぐらいなのだから、文明が未だ発達しておらず、魔術を日常のように使ったりするはずだ。
特殊能力使いは今のところエメルとトパーズ以外見た事が無い。
しかもこの世界、テレビはあるが、ラジオは無い。冷蔵庫も無く、炊飯器や洗濯機も無い。
街並みも、土で出来ている地面以外は普通の商店街と何ら変わりはない。洋服屋だって普通は無いはず。だがお世話になったおばあさんの住んでいた村では、自給自足の暮らしをしていた。
それにこの世界、警察が居ないらしい。衛兵が居るのならば良いが、そういった類の物は存在しない。ダイヤモンド護衛隊がその役割を担っている。自分達の都合の良い様に。
壊斗はこの世界を"半異世界"と命名した。
ベランダで黄昏ていると、トパーズの姿が見えた。
一階に降り、家を飛び出す。
「トパーズ!やっと帰ってきたか!」
「…あぁ」
「どうした?そんな暗い顔して」
「少し疲れただけだ」
「そっか お疲れ様」
トパーズの顔は酷く窶れており、上の空だ。
「なぁバン 少しだけエメラルドと話をさせてくれないか?」
「良いけど… エメルの奴お前を酷く怯えているぞ?」
「これから一緒に過ごすことになるから 一度話をしたいと思ってた」
「おっけい じゃあ俺は席を外すから …喧嘩すんなよ」
壊斗は昼食の具材を買いに村に向かう。
「なぁ エメラルド…」
トパーズは一階のソファーに座っていたエメルに声をかける。
「──ッ! トパーズ…」
「少し話さないか? いや …話してくれ」
エメルは嫌そうではあるが、コクリと頷く。
「…まずは ごめん 今までしてきた事…許してくれとは言わない ただ…知っておいて欲しい オレが反省しているって事を…」
トパーズは不器用ながらも反省を見せた。
「…怒りは消えても恨みは消えない …その事はトパーズが一番良く分かってるんじゃないの?」
怒りは一瞬だ。少し経てば消える。然し恨みは残り続ける。恨みが消えない限り、怒りは何度でも沸き上がる。その事は、確かにトパーズ自身が体験したことのあるものであった。
「本当に悪かった…」
「もういいからさ あっち行ってよ…」
「…分かった」
トパーズはとぼとぼと千鳥足で二階のベランダへ向かった。
ガチャ。
それからしばらくして、玄関のドアが開く音がしたのと同時に、エメルは駆け出した。
「うわッ!」
帰宅した壊斗に、エメルが飛び付く。
「…トパーズと何かあったんだな」
「怖かったよ…ッ」
エメルは震えながら声を上げて泣いた。
壊斗はそれ以上何も喋らず、頭を撫で続けた。
「バン…ちょっと良いか?」
「…何だ?」
「ここじゃ言えない話だ 外に行こう」
二人は外に出た。
「…黙ってようと思ったんだが やっぱり言わなきゃならない事がある」
トパーズは神妙な面持ちで話しかける。
「オレは人を殺した」
「…は?」
思いがけない告白に、壊斗は理解が追いつかない。
「前に厄介な奴が居るって言ったよな…? オレの幼なじみであり 従兄妹でもあり… 恋人でもあった」
トパーズは話を続ける。
「父さんに…王に俺の裏切りを報告しようとしたんだ それで仕方なく…」
壊斗は過呼吸になり、震える。
「大丈夫か? 悪い こんな話して…」
「…」
壊斗は動揺が隠せずにいた。
過去のトラウマが蘇る。
この世界での命の価値観が分からない。ちょっとした事ですぐ人を殺してしまう人々なのだろうか?
壊斗はこの先、トパーズを信用する事が出来なくなるんじゃないかと悟ってしまった。
中ニの時に起きたとある事件をきっかけに、壊斗は人の事を完全に信用する事は出来なくなった。だが然し、信用していない訳では無い。友達になった人でも半分以上は信用している。でも、実の親の事も99%しか信用していない。100%信用している人物は存在しないのだ。
そのトパーズに対する信用が今、0%になりかけている。この人物は、自分の事も殺さないと言えるか?と。
「だけどよバン オレ… この事を一生背負って生きていくと誓ったんだ そして必ず ダイヤモンドに復讐すると誓った 死んでしまったメイ…ジャスミンの為にも」
ほんの僅かではあったが、壊斗はトパーズへの信用値を上げた。
これからの行動で、トパーズへの信用値は少しずつだろうが上がるかもしれないだろう。100%まではいかないとしても。
それに壊斗にはトパーズを責める権利は無い。
「分かった…」
「…なぁバン 唐突だけどよ この家 壊してくれ 跡形もなく 今すぐに」
突拍子の無い事を口走るトパーズを見る目が、再び疑心暗鬼な物へと変貌する。
「何故だ」
「生活をしていた痕跡を無くす為だ いずれここには護衛隊の追っ手が来るはずだからな」
「厄介な奴は殺したんじゃなかったのかよ? それに家を壊す必要なんか無ぇだろ」
壊斗の中で、感情が交錯する。
「この場所は既にバレている アイツらが此処まで向かってくるのは時間の問題だ 直ぐにでもここを出発したい それともう一つ理由がある」
「早く言えよ」
「周りの村にも被害が及ぶ可能性がある それも込みで壊す必要がある そうすりゃ疑われないだろ」
「…出発ってどこにだよ」
「フロウザー家 オレの母さんの家系の人達が住んでいる」
「何しに」
「そこには能力の使い手がたくさん居るんだ」
「何でそんな事が分かるんだよ」
「前まで一緒に住んでいたからだ」
「ある日突然居なくなったんだ オレたちが寝てる間に」
「ジャスミンは… 厄介な奴って言った子は多分だけどよ 洗脳されたんだ 急に性格が変わってさ 父さんの言う事が絶対 他の事は二の次になった 父さんの事になると目がおかしくなるんだ 父さんの事だ ジャスミンには逃げらせないよう洗脳をかけた 他にも似たような子が居るがその子もそうだ 父さんが全て みたいな性格になっちまった」
「そうか…で、場所は?」
「分からん」
「お前 マジで何なんだよ 分かんなきゃ行くことなんて出来ねぇだろうが」
「だから"旅"に出るんだ 道中で仲間を集めてフラウザー家に到着し、作戦を練ってからダイヤモンド城を攻める」
「…そのフロウザー家に行ったところでさ 第一協力してくれるとは限らないだろ」
「その時はその時だ とにかく旅をして仲間を増やす事が優先だ」
「バンが矛になって俺が盾になる エメラルドは回復担当だ」
「お前の盾は俺が壊しただろ」
「少し経てば治るんだよ」
トパーズは盾を出す所を壊斗に見せた。
壊斗は正直なところ、トパーズとは別れたかった。別行動をしたかった。が、確かに盾になってくれるのならば仲間にしておく価値がある。
「…分かったよ ここに居ても追っ手が来るなら場所を移す必要があるのは確かだ 旅をして仲間を増やすのもいいアイデアだと思う ただし エメルとは極力関わらないでくれ お互いの為に」
エメルから全て聞いた。自分が殴られてる時、何もしてくれなかったこと。寧ろダイヤモンドにエメルを殴らせるよう促していたということ。
ただ、壊斗にはトパーズがそこまでのクズには見えなかった。何か理由があるんじゃないかと。だがどんな理由があったとしてもやってはいけないことをしでかした。人としてやってはいけない事を。
「これから基本的に一緒に居るのなら打ち解けていくことが望ましいけどな」
「…最善を尽くす」
エメルについての話が一段落ついた所でトパーズが切り出す。
「仮に追っ手が来なかったとしても同じ場所に滞在し続けるのは駄目だ」
「何で」
「ダイヤモンド護衛隊は至る所に居るからだ それに俺が居なくなった事を怪しむかもしれない もし裏切った事がバレたら各国に隊員を派遣するだろう だから同じ場所にいるのは危険なんだ 居場所を密告されて寝ている隙に殺られてしまうかもしれない だから俺たちは旅を続ける必要がある」
壊斗はため息をつく。
「何で俺がこんなことに巻き込まれなきゃいけねぇんだよ…」
トパーズが憂いに満ちた表情を浮かべる。
「いや お前に言ったわけじゃない 気にしないでくれ」
壊斗は重大な約束を思い出した。
「そういえばお前の左腕を治す約束だったよな 待ってろ 今持ってくる」
壊斗は袋詰めし冷水に浸して置いた腕を持ってくる。氷が解け、常温になると腐ってしまうと思い、何度も氷水の入れ替えを行ってきた。
壊斗はエメルを外に連れ出し、腕の復元を行わせた。
「そういえばエメル 切れた腕ってどうやって治すんだ?」
「千切れた腕さえ残っていれば それを代償にして新しい腕を生やすことが出来る 腕だけの話じゃないけどね 足だって指だって 部品さえ残っていれば治すことが出来るよ」
淡々と能力を解説しながらエメルは手から緑色の魔法陣を出し、切れたトパーズの左腕が消え、左肩からトパーズの腕を生やした。
「ありがとな エメル」
「その名前で呼ばないで」
「悪かった エメラルド」
二人の仲が治るのはいつになるのだろうと壊斗は思う。
「バン 早く家を壊してくれよ」
話を聞いてなかったエメルが、えぇ!?と驚いている。
エメルには軽く事情を話した。
「その前に家具を売る 少しでも金を得なきゃ」
「誰に売るんだ?」とトパーズは尋ねる。
「この世界にも質屋はあるだろ?」
「一度買ったものは売るとか誰が買うんだよ 譲ったりするなら分かるけど」
「え…」
「大切な物 移動に持っていける範疇の物以外は残念だが家諸共潰れてもらうしかない」
壊斗は渋々金以外の家具諸共家を破壊することを決意した。テレビは結構高かったんだが。
「じゃあな 建ってから一ヶ月の家…」
まだ自分の力を完全に理解しきってない壊斗は、手でふぁさっと仰ぐようにした。すると、小さな竜巻が起こり、大豪邸であった家は見るも無惨に崩壊した。
やっと全話編集が終わりました!これで新しい話が書ける…!




