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水槽の月~我思うとも、我在らず~  作者: 相対冷夏
狐鬼抗争編
2/49

一話「目覚め」

バシャッ!


冷たい水を顔に感じて俺は起きた。寝耳ならぬ寝顔に水だな。

目を覚ますと二つの人影があり、その向こうには山、上には空がある。

仕事がきつすぎてついに夢遊病を起こしたか。だがよく見れば拘束されてるし服も変わってる、なんだ?新手の誘拐か?

取り敢えず会社には間違いなく遅刻するだろうな。憂鬱ではあるが正当な理由があるので淡い希望は抱ける。

目のピントを二人に合わすとそこには美人と笠を深く被った男が居た。


「おっ、起きたか。」

「やはり叩き起こすには水が一番ですね。」


もっと寝かせて欲しかったんだがな…それはともかく


「あんたらは何者だ?」


完全和風テイストの身なりをした男女二人に囲まれるってそうそうないでしょ。


「随分と高圧的なもんだ、神罰下しちまうよ?」


「それはこっちが聞きたい事なんですよ。」


見た目に似合わず貴女も高圧的じゃないですか。

ん…ちょっと待てどういう事だよ。身元も知らない人間を寝ている間に拘束するってないだろ普通。

あと「神罰下す」ってのもなんだよ、「下されてしまう」だろ。


「名前はあるのか?」


表札見ろよ。珍しい名前で言いたくないが仕方ない。


薬師寺やくしじ わらべだ。」


童って言う下の名前は結構なコンプレックスなんだけどなあ。


「なるほど。」

「……性があるって中々じゃないか。」


性が無い方が珍しいと思うが…そういう地域なのか?


「ここは何処だ?」


疑念を晴らすには聞くのが一番だ、スマホないし。


「ここは諏訪のちょうど中心辺りですね。」


諏訪市か、そこまで遠くは来てないみたいだな。


「野放して何か事を起こされては面倒ですし連れて行きますか?」


笠のやつが提案する。コレちょっと話が見えないな。


「あと聞くの忘れてたがそっちの名前は?そしてなんで俺は拘束されてるんだ?と言うかなんで諏訪市に?長野ならもっと別の場所があるだろう?」


これで動機とか諸々分かるだろう。


「……怪しいから捕まえてくれと言われたのさ。まあ色々あるから付いてきてくれ。」


なんかさっきの間に嫌な予感を感じたが仕方なく付いていこう。





―割と長い間歩かされてるんだが一体どこへ行こうというのだ?


「着きましたよ、ここが私達の拠点です。」


笠の男の優しい口調が教えてくれた。そこでまず目に入ってきたのはあまりにのどかな農村だ。

農作業をしている男たちの道具も重機なんてものは見つからず使っているものは先の部分しか鉄製でない農具だ。

なんとも度し難い気持ちだ。少なくとも自分の知る場所、時代ではなさそうだな。

ん?なんだ、あの女が祠に向かってる。見た感じ神道系だ。宗教は文化だから理解しておくに越したことはないって歴史に教わった気がする。

…おっ、誰かと一緒にこっちに来た。俺のことを指さしてるから紹介でもするのか?


「お前が見つけたこの男は私の眷属だ、鬼の身でありながら私に仕える者だ。

名は薬師童子やくしどうじという。」


…?何を言っているんだこの人は、俺はお前の眷属でもないしましてや鬼でもない。ただの人間だ。―!?急に背中に冷たい何かが走る。やめろ、目の前で跪くな、俺は、お前に、なにもできやしない。


「恐れることはありません、ただ、与えるだけでよいのです。さあ、手を出して―。」


笠の男の耳打ち、やはり優しい口調だ。ただ、冷え切った何かを感じる。俺はただその言葉に従い、手を杯の形にして突き出した。




――体に水が伝う感覚がする。足から胴を登り、肩を通ってそれは自分の手に溜まって行く。溜まったモノを目の前の男にかけてやる、すると男は喜び帰って行った。


「おめでとう、今日から君は新しい神になる。私は吞乃水城あまの みずき、そっちはタチガミだ。これからよろしく頼む。」


昇ったばかりの月を背負う彼女―、吞乃はあまりに神々しい。

今回は導入です。次回は世界観の解説だったりです。話が動くのはもうちょっと先カナー

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