幕間──女神たちの戯れ
微妙に百合展開あり。苦手な人は飛ばして下さい。
辺りには雲が漂い、真っ白な神殿が立ち並ぶ。その中の一つに私は入って行った。
「ヘスティナ〜。どこに行ってたのぉ?」
「グラーツィア」
彼女は私の玉座の横で凭れるように座っていた。
「少し野暮用があってな」
「ふーん。ねぇ、今日の私、綺麗?」
そう言ってグラーツィアは歩み寄ってくる。古代ローマの民族衣装を纏い、美しい宝石や黄金の装飾品で全身を飾り立てた彼女は可愛らしい声で聞いてきた。
「とても美しいよ……」
「なら、他の人に構ってないで私と遊びましょう」
彼女は自身の褐色の脚を私の脚に絡ませる。
「…………とても魅力的な誘いではあるが、まだ野暮用は済んでいないのだ。済まない」
私は彼女の脚を解いて玉座に座り、水晶玉を浮かべる。その中にはフレイア・ディ・ティルノーグの姿が写っていた。
「もうっ! 最近そればかりね。壊れかけの世界なんて放っておけば良いのに! ねぇ、そんなものより私と気持ちぃ遊びをしましょ」
グラーツィアは私の首に腕を絡ませる。
「済まないが、この世界の整備をしなければならないんだ。少し待っていてくれ」
「どうして今更整備するのよぉ」
「他の神と賭けをすることになってね」
「賭け?」
「この少女が、あの壊れゆく世界をどう変えるのか。面白そうだろ?」
私はグラーツィアに水晶に写るフレイアの姿を見せると、彼女は面白くなさそうに鼻で笑って言った。
「ただの小娘ね」
「そう。ただの小娘だ。異世界の魂を持つ……ね」
それを聞いたグラーツィアは目の色を変えて、瑞々しい唇で弧を描いた。
「へぇ。それは面白そうね」
「だろう。君も参加するか? ゲーム」
「そうねぇ…………勝ったら何でも言うこと聞いてくれる?」
「ふむ……まぁ良いだろう」
何を頼むつもりなのかはわからないが、彼女もまた大抵のことを叶えられる神という立場に居るのだ。願うと言っても神力を使うようなことではなく、私自身に何かの行為を願うのだろう。
「さぁ、良い子だから少し待っててくれ。すぐに整備を終わらせる」
「はぁ〜い!」
私は目の前に地球によく似た球体を作り出した。フレイア・ディ・ティルノーグが住む世界『シュテーリア』だ。そして目を閉じて神力を注ぎ込む。
私の神力が風となって種を運び、水となって土を潤し、太陽となって世界を照らす。荒れた世界は瞬く間に正常な働きを始めた。
「これで十分だろう」
世界を営みを回復させれば、この世界が壊れても自然のせいではなくなる。人々の欲がどれほど醜く、業が深いのかを見せて貰おう。
「ねぇ〜。終わったぁ?」
グラーツィアが私の耳を甘噛みし、首にキスの雨を降らせる。
「終わったよ。待たせたな」
私はグラーツィアの上に覆いかぶさって耳を舐め、瞼、頬、唇、喉とキスしていく。グラーツィアの口から甘い吐息が溢れた。
「……ん……はぁ…………」
ガリッ
鎖骨に小さな噛み跡を残すと、グラーツィアは大きく身体を揺らした。
「私の愛しいグラーツィア……」
私はグラーツィアを抱き上げて寝所へ向かう。
「しばらく寝れると思うな」
「ふふふ…………」