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関係が進展しすぎました。

「出来ることなら、なんでもする」

雫は私の目の前でそう、言った。


今朝の出来事。

今日は休日。


「ほら、好きな人のために休日も会いに行ってやんな」

「う、うん!」

あ、あれ?

「からだが震えてインターフォンが押せない!!」

「マジかよ」


ピンポーン

空気を読まず押されたインターフォン。

中から出てきた、恐らく、初恋の人。


「お、おはよう。今日は休日だぞ?」

「え、えっと‥‥‥」

「ちょっと、朝食のお誘いにな。最近真弥がかなりお世話になってるみたいだし」

「ごめんね、真弥っち強引で」

「いや、ブーメラン」

私以外の2人がキョトンとした。

ブーメランは確か言ったことに対して自分もそれに当てはまってること、だったかな。


真依(まい)(ひかり) も悪い人じゃないから!!私のこととかも理解してくれる優しい友達だから!!」

私は2人の事が好きだ。

優しい友達だ。

「まあ、真弥が言うなら、そうなのか。ちょっと掃除する。少し待っててくれ」

奥に消えた雫は数分のうちに帰ってきた。

「お待たせ」


そうして中に招き入れてくれた。


「お邪魔しまーす」

「あ、いらっしゃ~い」

「あ、いつも雫ちゃんが言ってる人?」

「どうも‥‥‥」

「あと2人寝てるけど、いつものことだから」

「少し広いと思ったら5人部屋だったのか。騒がしそう」

「騒がしいよ」


料理は雫の担当じゃなかった。

隣に立って一緒に作る~みたいなのも楽しそうだけど、そうだよね。



「朝から来るのは心臓に悪いんだが」

「ごめんってば‥‥‥」

「こう見えて雫は怒ってないけどね」

「吹っ飛ばすぞ、はじめ」

「キャーコワーイ」

「‥‥‥いつもこんな感じなんですか?」

「いつもこんな感じかな」


雫の他に4人もいるんだったら2人きりになるのは無理かな‥‥‥

と、思った矢先、助け船を出してくれたのは当の本人雫だった。

「それで、間違ってたら恥ずかしいけど何の用?朝食だけじゃないでしょ?」

「そ、そうなんだけど‥‥‥2人っきりで話したい、かな」

「了解。じゃあ、僕の部屋で」


私の手は雫に引っ張られていた。

顔が熱くなった。

「真弥?」

「な、なんでもない。じゃあ、ちょっと話してくるね」

「おう、いってら~」

「私たちのことは気にしなくて良いよ~」


私は幸せだ。



「それで、今日はどうしたの?」

「えーっと、その‥‥‥」

「?」

「その、デート、したくて」

「どういうこと?」

うわぁ‥‥‥引いてる、引いてるよぉ。

そうだよね。同姓だもんね!!

同姓(・・)でデートするのは、おかしい、よね」

「同姓、‥‥‥それは別に何も思わないけど」

「じゃあ!」

「別に良いよ。しようか、えっと、デート?」

「はいっ!」

ここまで簡単に行くとは思わなかった。やったね!


「でも、デートって言うのは‥‥‥止めろ。‥‥‥恥ずかしい」

「うん、ごめん。一緒に出掛けるだけじゃ、違う気がして。こういう言い方をしちゃった」

「一緒に出掛けるだけじゃ、違う?」

そりゃそんな顔をするだろう。

ましてや訳のわからないことを言ってる変な人だと思うだろう。

だけど、私は構わない。

「私は、多分、雫が好きなんだ。だから、デートがしたい」

「それは、今は、受け入れることは出来ない。今の時代わりと普通に起きていることだけど」

「だよね、ごめん。忘れて」

「でも、約束は守る。‥‥‥デート、するんだろ」

雫の顔が赤いのがわかった。

真っ赤だ。

「ありがとう、雫」

「‥‥‥」

やっぱり雫は優しい。



「おかえり、どうだった?」

「デートはしてもらえるみたいだけど、振られちゃった」

「そっか、お疲れ」

「ありがと。それじゃあ、行ってくるよ」

「雫も、行ってくるの?」

「うん、一応、デートだから」

「‥‥‥そっか。行ってらっしゃい」


扉を潜る。

直後、私に手を差し出してくれる。

やっぱりツンデレだと思う。

「‥‥‥行こっか」

雫と私は手を繋いで歩き出す。

まだ、人は少ない。


しばらくして、雫が口を開いた。

「そもそも、デートって何をするのかわからないのだが‥‥‥」

「ごめん、私も、わかんない。私から言ったのに、ぜんぜん、わかんないや」

再度無言が続く。

手は繋がったままなのに、行動のしようがない。


「まあ、でも、現実で合っているのかわかんないけど、小説の中ならこうだった」

私は雫に引かれるまま、近くのお店に入った。


「こういう店に入って、会話をする、らしい、ん、だけど‥‥‥合ってるのかどうか‥‥‥」

「私はこういう時間も楽しいと思うな」

「なら、間違って無いってことで、いい?」

「うん、多分」

だって、

「最低でも、私は楽しいから」

雫が再度赤くなった。


私達は軽いデザートと飲み物を頼み、席で会話をする。

私はこの時間が堪らなく、楽しかった。



「やっぱり、いつも通りになっちゃったね」

「次はもうちょっと考えてからだな」

「次、あるの?」

「今日のはカウントに入らないだろ、こんなにぐだぐだじゃ」

「‥‥‥ありがとね」

ここで、平和に終わるものだと、思っていた。


「危ない!」

前方からの自転車に気がつけなかった。

私は雫に腕を引かれた。

今日二回目だ。

違う、そうじゃない。

それ自体はうれしい出来事だった。

けど、気になるのはその先。

絶壁だったけど、その先。

全く無い。


床に叩きつけられた雫の上に私は乗っかっている。

つまり、雫と体が密着した。

その時に確信した。

無い、と。


「雫‥‥‥」

「油断した。しかし、仕方ないか」


そこから無言で、再度雫の部屋へとお邪魔することになった。

周りはすでに暗い。


雫は他の同居人にも「話すことがあるから入ってこないでくれると助かるかな」と告げた。


ここで、冒頭に戻る。

「出来ることなら、なんでもする」

頭を下げられた。

「勿論、100万と天秤にかけたらそんなのバカな話に感じると思う。だけど‥‥‥」

私は最後まで聞くつもりは無かった。

既に決めていたことだから。

「じゃあ、私と本当に付き合って」

キッパリ、言い切った。

雫はきょとんとしている。

「さっきのは私の不注意だし、それに‥‥‥」

恥ずかしい、けど、言ってしまえ。

「私の恋心は100万より価値があると思ってるから」

「‥‥‥ありがとう」

とてつもなく小さな声でそう、言ったのが聞こえた。


こうして私達は交際を始めた。

百合なのか、普通の恋愛なのか。

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