女子高生として身を隠すなら女子高生の中。
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「諸君、おはよう!」
先生の大きな声が耳に痛い。
元気は良いことなのかもしれないけど、時間を考えて。
始業式から4日が経過した。
勿論、バレた様子はない。(生徒会の人の視線は常に鋭いのでどっちかわからないけど)
はじめに至っては何故指摘されないのか不明だ。
5日目、つまり既に授業は始まっている。
因みに僕は勉強は普通程度には出来る。
でも集中が続かないのが難点だが。
はじめははじめでおかしかった。
どうおかしいかは昨日の夜にわかった。
「あがり」
「強すぎませんか?」
「それとも運が強すぎるかのどっちかだな!」
「出たカードを覚えれば大富豪なんて簡単に勝てるよ?」
「「はい?」」
一緒に遊んでいたにとりと桃花の声が重なった。
なんなら同じことを僕も思っていた。
「流石に推測だけど出すタイミングとかで半分くらいは持ってるカードはわかるよ」
その後宣言通り2人のカードの大半を言い当てた。
はじめは記憶力が桁違いに良い。
小テスト程度では全問正解が普通だ。
勿論、テスト前のはじめはゲームをしている。
「辻さん、辻さん」
「‥‥‥あ、はい。なんでしょう?」
おっと、意識が別の方向へ飛んでたみたいだ。
隣にいつ来たのかも分からない。
「明日って空いてたりする?」
4月13日土曜日
(どうしてこうなった)
僕とはじめ(いつのまにか誘われてたらしい)それと他3名ほどでカラオケにいた。
僕を誘った女子は昨日といい一昨日といいやたらとクラスメイトに話しかけていた。
その一貫だと思っていたのだが、遊びに出掛けるまでが一括りだとは思っていなかった。
「歌わないの?」
「‥‥‥もう少し経ってからで。」
一日目にこそ「関わってくれたら喜ぶ」的な何かは言ったけどもこんなにグイグイ来るとは思っていなかった。
そしてもう1つ。
関わりを持ちすぎるとその分バレやすそう。
最初はクラスに馴染めて無かったらその分バレたり疑われるのかな、とか思って言ったつもりだったのにな。
そして今現在の問題点が1つ。
歌う曲が無い。
何を歌えば良いのだろうか。
「そういえばいつも本を読んでいるイメージだけど、どんな本?」
「見るのはお勧めしない」
「別にその程度じゃイメージは変わらないよ」
「変わるんだよなぁ」とは思ったけど口には出さない。
バックに上手いとも下手とも取れないアルトのはじめの歌が聴こえる。
でも、自分の本が他の人の手に渡ってる以上聴ける心情ではない。
しばらくして返された。
「魔法少女‥‥‥きららだっけ?アニメを見てるみたい」
「アニメにもなったしそういうのに向いている本だから」
「え?なってたの!?いつやってたの?」
「一昨年の秋かな。深夜一時過ぎにはやってたと思うけど」
「深夜一時!?もう私寝てるよ?」
「僕は起きてみてたんだよ」
男子のみに向けた作品じゃないのでそんな反応なのかな?
少しは引かれるつもりでいたのだが。
「と、言うか見たのは何処だ?」
「冒頭の文章3ページ位かな」
確かにそこだけ見ればそういう反応か。
「絵の方にも注目してほしいけどね」
「小説なのに絵がついてるの?」
「むしろ隠してるけど表紙にも書いてあるよ」
なお、この作品を読むのはもう3度目くらい。
既に出てるのが6巻位までだから苦じゃない。
出来る限りネタバレを避けようとするのはオタクの性だろうか。
「じゃあそれ、貸すよ。既に読みきったし」
「それって読む本無くならない?」
「そんなのいくらでもあるから、大丈夫」
その後折角なのでアニメ化したときのオープニングを歌ってやった。
女性ボーカルだけど僕はソプラノを出せるから問題ない。(上手いとは言っていない)
4月15日 月曜日
「これ、言ってた残りの巻」
5冊なら対して重くも分厚くもない。
持ち歩くならまだしも持ってくるだけなら何の苦もない。
この日から僕の席にクラスメイトが集まるようになった。
目立つのは困るのだが、1人よりかは目立たないのかもしれない。
少なくとも取り巻き以外の人からの視線は減った。(もしくは取り巻きに加わったのかもしれない)
「確かにその方が良いかもしれませんね」
その日の夜、夕食を囲みながら桃花が言う。
他クラスである桃花達にはクラスでの出来事を伝えることにしている。
「俺は特に変わり無かったよ?」
「変わりようが無いだけだろ」
休み時間入ってからゲーム始めるまでが早すぎるんだよ。
今日も今日とてばれそうもない。
ばれるなら、はじめ一人だろう。