俺達、僕達、私達はトクタイセイです。
本来の小説に近付けるために「」の終わりの。を無くし、点も変更した作品となります。
慣れるまでは昔の癖が出てしまうかもしれません。
他の作品も少しずつ修正をかける予定です。
「この学校に男子がいます」
現生徒会長がそんなことを言う。
ここは女子高そんなことはあってはならない。
だからこそこんなに大それた舞台で盛大に言う必要があるのだろう。
勿論、周囲の女子生徒はざわつき始める。
どちらなのかは知らないけど。
さて、生徒会長の発言に対して特に驚きもしない人がいるな。そう、僕だ。
勿論、耳にイヤホンをしているわけでもないし、女子高に男子がいることに対して不審がっていないわけでもない。
なら何故か。
理由は単純明快、至極簡単。
僕が男だから。
さて、どうしてこうなっているのか、簡単に説明しよう。
約二十年前、突如奇病が流行ったらしい。
名前は無駄に長くて覚えてないのでどんな病気かだけ説明。
『異常な程に男子が産まれにくくなる病気』
尚、対処法も治療法も見付かっていないらしい。
そのため今男性がいるとすれば25才が普通。
それより若いとかなり珍しい部類に入る。
そのため男子校というものが存在しなくなった。
まあ、当たり前と言えば当たり前か。
経営が成り立たないからね。
このままだと女性専用車両が8割を占めたり、逆に男性が乗らないから無くなったりするかもしれない。
まあ、1番の問題とすれば『どんどん子供は減る』
これ以上のことはないだろう。
そりゃあ男性がいないから自然とそうなるんだろうけど。
つまりは今の日本において男性は貴重である。
僕の場合は貴重であるがゆえ、虐めにあった。
とは言っても落書き程度のものだったんだけど、当時の自分にはだいぶ堪えた。
1クラスに3人もいなかったと思う。
クラスに居場所は無かった。
中学になると逆にチヤホヤされた。
親から「結婚しないと辛い」とでも聞かされたのだろうか。
これはこれで居場所が無かった。
因みに中学の3年間同じクラスに男子がいたことは無かった。
そして僕が高校に入るタイミングには1割強の共学校と9割弱の女子校のみになっていた。
卒業間際、僕はトクタイセイに選ばれた。
援助は大いにあったので言われた数日後にはそれを承諾した。それがほんの数日前。
そして今、女子制服に身を包み、ここに立っている。
「その男子を発見したらこの私に報告に来るように!」
ここで「はい、ここにいます」
なんて言ったら即退学なので無視無視。
国からは許しは出てるけど生徒側から出てるとは言ってなかったし。
想定内ではあるけども、めんどくさいな。
廊下を歩くと女子、女子、女子。
これも当たり前だけどね。
自分のクラスの自分の席に座り学校側の進行を待つ。
片時も油断なら無いのでひたすらに疲れる。
「諸君、おはよう。私がこのクラスの担任『氷道 真須美』だ。始業式とはいえ全員出席とは先生嬉しいぞ」
やたらとテンションの高い先生だ。
クラスにいるだけで体感温度が上がった気がする。
窓際の人が羨ましい。
「さて、まずは自己紹介から参ろうか。名前と趣味程度は伝えてもらおう」
典型的なイベント、自分の順番までは半分くらいあるし悠長に読書に浸ることにしよう。
楽しくは読めないけど。
「辻、次はお前の番だぞ?」
思った以上に早かったな。
10人も聞こえなかった気がするぞ。
「今呼ばれたのでそれで良くないですか?」
「良くない」
まあ、いいか。
不審に思われても困る。
「『辻 雫』趣味は読書。決して一人が好きなわけではないけどわりと一人の時をよくみると思う。表情にはあまりでないと思うけどわりと話しかけられると喜ぶ方です。よろしく」
雫、男子とも女子ともとれる中途半端な立ち位置。
楽な点は一文字で書きやすいところ。
そして今の自己紹介文、決して嘘は言っていない。
顔の件は親から言われていたことなので正解かはまるで不明。
さあ、あと半分。早く終われ。
いや、もう一人話す必要がある人がいるのか。
窓際、前から二つ目の席に座りヘッドフォンを首にかけた眼鏡男子。
ポケットからはみ出た携帯ゲーム機に右手が触れかけている。いや、触れてるか。
因みにヘッドフォンのコードはそこに刺さっている。
「俺は『早見 はじめ』です。趣味はゲーム。というか早く続きがやりたくてウズウズしてます。ゲーマーの子大歓迎。一緒にゲームしましょう」
早口でそう言い切ると椅子に座る。
尚、ゲーム機の手は離さなかった。
計37人の自己紹介が終わった。
また学校側の指示が出るまで待機だ。
「全くあいつは‥‥‥」
一番後ろの席、回りに誰もいない中、ポツリと呟く。
あったのは部屋分けの話だ。
5~6人で1部屋。
僕にとってはわかりきっていることなので何の楽しみもない。
さあ、放課後だ。
問題の方を呼び出すとしよう。
いや、あいつは呼んでも来ないやつだったわ。
「早見!」
「何?これ狩り終わるまで待ってて」
ヘッドフォンを着けゲーム機のボタンを乱打している。
幸いにもこっちの声が聴こえてないわけでは無いようだ。
「クリア~。んで、どうしたの?雫」
「どうしたもこうしたも無いだろ‥‥‥一人称」
「あ~、それ?今さら変えられないし先輩にだって同じ一人称の人いたよね?」
「お前はジャンルが違う」
早見の言っている先輩は運動部の先輩で違和感がないからそれで問題がない。
「あと、早見っての止めてね~?ゲーマーの心は脆いんだから」
「はいよ、はじめ」
「それじゃ、ゲームに戻りま~す」
「部屋についてからにしろ」
そう、僕達2人は同じ部屋だ。
そして他に3人いる。
僕達の部屋の全員はトクタイセイ。
はじめを含めて全員数日前に会ったばかり。
でも、仲良くはできる。
「お、開いてる」
「いや、はじめがゲームしてるの待ってたからだからな?」
「そうだっけ?」
全くこいつはどうしようもない。
「ただいま~!!」
「はじめて入るのにただいまとは…」
中にはさっき話した通り3人いた。
「あ、お帰り。昼食どうするか相談したいんだけど、いい?」
「ついでに役割も決めた方がいいかと」
「はじめちゃん、はじめちゃん。後で一緒にゲームしよ!!」
ここにいる5人は今年のトクタイセイ。
特別な体と性別をもった生徒。
特体性だ。