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プロローグ
私には兄がいると聞いた。
でも、
何処にいるのか、
どんな人なのか、
誰に聞いても、
何も教えてくれない。
もしかしたら本当はいなかったのかもと思ったことだってある。
でも、私は覚えているのだ。
兄がいた、楽しかった日々を。
これが嘘だなんて、信じられない。
そして、私は見つけた。
兄を。
見つけてしまった。
誘拐されていたのだ。
私は決めた。
なにがなんでも連れて帰る、と。
私のことを覚えていなくても、かまわない。
兄が戻ってくるのなら。