第8話 夏のイベント全部に参加する作戦 前編
城之内は結城のことが好き。
城之内三度目の恋。
「奥野っち、おれは9月が終わるまでには結城さんと付き合いたい。そのために協力を願う。」
まぁ、落書きを毎日してたら恋には落ちるか。
「わかった。協力をしよう。」
おれは引き受けることにした。
別に誰のものというわけではないが、
人のものを取られる気持ちだった。
だけど、それを口にするのもなんだかだった。
あの子の時と同じ、よくわからない。
「奥野っち、おれはどうしたらいいんだぁ。」
なるほど。こいつはもしかすると恋をすると誰かの相談がないとできないんだなと思った。
1人目と2人目の時、相談されたやつは誰だったんだろう。
「じゃあ、こうしよう。夏のイベントに全部参加する作戦でいこう!」
おれはそう城之内に言う。
「これはだな。夏休みにあるイベント全部におれと城之内とおれは全部参加するんだ!花火大会も、夏祭りも全部!そしたらそこに結城がいる!その結城と偶然を装って遊ぶんだ!そして、城之内は結城と一生忘れることのできない青春を過ごす!もう城之内とずっと一緒にいたくてたまらない!どうや!」
この作戦はおれがただ遊びたいのと、偶然にもあの子と結城のことを見ることができればという狙いがあった。恋なのかどうかわからないこの気持ち。だけど2人のことを気にしてしまう。どんどん離れていくであろう2人。けど、どうせなら側で見つめたかった。それに、城之内は賛成するのか。
「す、すごい!奥野っちは天才だ!これで行きましょう!」
向こうも向こうだった。
この後、おれと城之内はおれの家のパソコンと夏のイベント情報を調べまくった。
夏休み初日。
おれは夏の、先輩達3年にとっては最後の部活の試合に行く。と言っても、1人しかいないのだが。
おれの所属している卓球部は恐らく史上最弱だ。今まで勝ったことがない。
1人を除いて。おれの部活にいる1人の女子、野々村は最強だ。おれたちが9時ごろにある1回戦で敗北する中、野々村は勝ち上がる。そして野々村は17時の決勝戦まで勝ち進み、18時の表彰式で優勝する。これが今回のことだけではなく、いつものことだ。おれの部活の鬼の約束12条の内の1つに、「仲間が敗れるまでは最後まで応援する。」という約束がある。つまり、野々村が優勝して表彰をされる18時まで毎回待たなくてはいけないのだ。9時から9時間。暇の極みである。これがおれの卓球部3年間のテンプレートになる。
毎回おれと松岡と女子達は宿題やトランプを過ごすことになるのだが。これはまた別の機会で語ることにしよう。
そして、この試合も終わる。おれは送迎バスで
集合兼解散場所のスーパーの駐車場に降りる。
さっさと帰ってテレビでも見よう。
ちなみに悲しいことに卓球部には帰りを待つ出待ち勢はいない。サッカー部やバレー部だとよくいるのだが。おれも城之内や松岡に付き合わされたことがある。
こんな弱くて陰キャしかいない卓球部にはそんな奴らはいないよな。
重たいバッグを肩に担ぐ。
おれの自宅に向かって歩き出す。
すると1人、出待ちがいた。
珍しいこともあるもんだ。
どんな奴だろうと目を向ける。
あの子がいた。