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第6話 永遠の片想い

年が明け、毎年のように近所の子供たちの最年長であるおれは弟と一緒に近所の高橋家、新田家、杉原家の子供たち10人を連れて近くの神社に初詣をしに行っていた。

「おぉ、みんなの子守をしよるんやねぇ。偉いねぇ。最近の子にしてはなかなか見ないねぇ。」

歩くたびに笑顔でお年寄りたちに話しかけられる。これはいつものことであって偉いというよりなんの疑問も思わなかった。

いつものように神社にお祈りする。

(今年は嫌なことがありませんように。幸せになりますように、できたら可愛い彼女が告白してきますように)そう願った。

周りの子供達は大きくなりたい!や、ヒーローになりたいと願い事をする。


漫画では、無人の神社を神のいない哀れな神社と紹介されていた。つまり、住職のいない神社や寺に行ってもいいことなどひとつもないとされていないと書いていた。寧ろ、神のいない神社には神を首になった野良犬のような神がいてバチが当たるとされていると紹介されていた。おれはこの漫画の内容と全く状況の神社にお参りしたところで意味はないと思っていた。


●この頃のことを思い出すと怒りしかないが、いい思い出である。面倒を見ていた女の子たちは大きくなったら私と結婚したいと言っていた。けれど後に私と遊びたいという子は1人もいなくなるのだが。近所の親たちからすると面倒な子育て、子の暇つぶしを解消することのできる最良の人材だったのだろう。間違いなく無料の保育士であった。現にこの頃の私は土日の何もない日にはほとんど子供達の面倒しかしていなかった。今、時給換算するととんでもないことになっているのは間違いない。


そして始まった3学期。

城之内に2人目の彼女ができた。

「いやぁー、今回は必ず成功してみせます!

奥野っち今回は必ず成功するので応援よろしくな!今回はダブルデートで下校や!」

城之内が嬉しそうにアピールする。

「ふーん、頑張ってー。」と塩対応をするおれ。

実際、少し羨ましいけどだからという気持ち。

だけど実際、城之内は自分の幸せをアピールしたがっていた。

「え、まじで彼女できたん!これは尾行や!」

松岡がテンションを上げる。

山寺も同じように上げる。

「馬鹿ね!あなた達そんなことを言って私を本当は2人で私とデートしたいのね!手伝ってあげるわよ!」おれはオカマギャグをする華麗にスルーされたのであった。

「おい、尾行したらお尻ぺんぺんや!」

城之内は笑顔で言い返していた。


結局、尾行大作戦は決行された。城之内の彼女のいる大道さんが所属しているテニス部が終わるまで城之内は校門で待っていた。

の、後ろの外れの草陰でおれと松岡、山寺は待機していた。下校する他の部活の奴らからすると尾行する気満々なのがバレバレなのに、よく城之内に言わなかったと思う。


そして18時の完全下校の鐘が鳴る。

走って校門までやってくる城之内の彼女の大道さん。と、その後ろに一緒に走ってくる男女。

あ、そういえばダブルデートらしいなと思って、ついでに新しいカップルも見物するかと見てみる。


そこには白崎とあの子がいた。



城之内は大道と手を繋ぎ、

白崎はあの子と手を繋ぎ会話を楽しみながら帰っていた。


おれは尾行は絶対嫌だったが、これをみた時に誰よりも尾行をしたくなった。が、急にテンションが変わるのもなんなのでその嫌だアピールを全開にして、尾行はしたくないが仕方なくしている可哀想な少年役を演じることにした。


進めば進むほどわかる幸せな空間。

おれはもう永遠に片思いなのか。と粉雪の舞う学校からの坂道をアホ2人と歩いていた。

が、そのアホ2人のまるで気付いて欲しいようなオーバーリアクションをとっていた。

簡単に述べよう。尾行作戦は開始3分で終わった。


白崎が怒る。

嬉しいのか怒りがあるのか白い歯を見せながら城之内は追いかける。それを見ながら苦笑いする大道さんとあの子。おれは本格的に終わった。あの子の幸せを傷つけた。

なんとか逃げ切った俺たちは会話をする。

「あの2人が付き合っていたとは。」

「どうやら両思いでそれがわかってどちらかが告白したらしいよ。」と松岡の疑問に山寺が答える。そりゃそうだ。白崎はイケメンでスポーツ万能。おまけにあの子が好きなのかアイドルの小島のくんの髪型を完全再現している。

それにおれを2位指名した時から5カ月、あの絵を見てから3,4か月がこようとしている。無理もない。人の心は変わっていくもんだと思った。


おれは諦める決心がついた。こうしておれの恋は終わったのであった。以降人を好きになることはないのだろうと思った。が、翌日、いつもと変わらずにあの子が何しているかなと様子を見てしまう。人間は恋をすると中々切り替えれないものなのだと思った。あの子は白崎のためにか手袋やマフラーを編んでいた。「おい、内職でもしてるのか」理科の教師が授業中に編んでいるあの子に注意していた。

しかし、徐々にその気持ちは薄れていった。おれはそれよりも今後の想像もできない進路のことの方で頭がいっぱいだった。この頃になると前より白崎達の妨害はなく、体育も唯一得意のソフトボールであり、ストレスはなかった。通信教育の教材の問題を解いていく日々が過ぎていった。


また、部活面でも変化が起きた。3年生は受験もあり、一切部活に遊びに来なくなった。それを境に体育館の使用が男子バレー部と卓球部が一緒の時は卓球部は練習場所を奪われていた。卓球部は先輩達が来なくなったこともあり、部活は2年生1人、1年生10人しかいなくなっていた。これでうちの中学では1番規模の小さい部活になったのである。卓球部の顧問は3年ということもあり、

進路指導に必死。体育館に顔を見せにくるとは17時過ぎが当たり前になっていた。どうやら男子バレーの顧問が勝ち目のない卓球よりバレーに力を入れてお前たちを優勝に導くということを宣言したそうだ。事実、1人を除いて公式戦で2回戦以上に進んだ部員はいない部活だった。みんなその理由もわかってか、文句は1つも言わなかった。

ただ、おれはよく見ていた。17時が近づくと無言で体育館の活動の面積を縮めていくバレー部。うちの顧問が来る時には体育館の使用面積は半々になっていた。


おれはそれを見てこの顧問兼おれの担任とバレー部が大嫌いになった。


こうしておれの1年生は終わった。

この時のおれは勉強だけを生きがいにするガリ勉となっていた。

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