第3話 古城、恋をした。
プロローグは終わり本編スタートです!
登場人物
主人公 奥野 卓球部
親友 松岡 卓球部 幼馴染
親友 山寺 野球部 幼馴染
友達 古城 サッカー部
友達 城之内 毎日笑ってるやつ
あの子 祖父の家の近くの子 昔から見てた
堀北さん 学年1の美少女
6月14日、いつもと変わらず流れていく日々。
いつもと変わらない昼休憩時間。そこで始まった。
「うち、ピアノが大好きなんです!すっごい好きで弾いてるの大好きで大好きでたまりません!」
「はぇー。おれはピアノのどこにドがあるなんかさっぱりわからないわー。天才やねー。」
「いえっ、そんなことないです!」
「あ、そいやよく給食のピーナッツ残すけどなんでなん?」
「うちピーナッツアレルギーで食べれないんです!今日の給食にピーナッツあるじゃないですか!入ります?」
そんな感じでおれはあの子と班が一緒なこともあり給食はよく一緒になった。さらに会話を楽しむついでにピーナッツをゲットしていた。
すると、5人班の1人である松岡が割り込んできた。
「奥野くん!今日は俺の開発したギャラクシーサーブ食らわしてやるよ!」
「なんだよ松岡!おれのギガントエクスカリバースマッシュで返り討ちにしてやるですぞ!」
松岡と必殺技の開発をする会話の方をいつのまにか楽しんでしまっていた。
そんな時、ヒソヒソと教室に城之内がやって来た。
「奥っち!奥っちだけでいいから!来てくれ!めちゃくちゃヤバイ重要な話がある!」
「んだよぉ!私の奥野くんを奪うなんて最低ね!」松岡がまたいつものようにボケる。
まだ時間もあるし、おれはギャーギャー叫ぶ松岡を置いて教室のある3階の端にある美術室まで着いて行った。
「奥っちさ!奥っちの隣のいる女子バレー部の子おるやん!俺はあの子と同小なんよ!んで頼まれてさ、あいつサッカー部の古城のこと大好きなんよ!」
(え・・・・)
「俺と奥っちさ、古城と仲良いやん?俺、古城がどんな奴が好きか教えて欲しいって頼まれたんよね。だから頼む!面白うだし、明日の土曜、古城の家一緒に行こうぜ!」
まぁ、なんと不思議なことにが起きただろうか。
あの子には好きな人がいて、その好きな古城の事を知るために間接的に俺が依頼されるなんて!
そんなことを知るわけもない古城は俺と城之内が遊びにくることを許可してくれた。
翌日の土曜日。昼のお笑い劇場を見てから俺と城之内は古城の家まで自転車を走らせてやってきた。古城は自分が去年の夏祭で手に入れた金魚やサッカーのグッズなどを見せてくれた。そして俺たちは大流行中のモンスター育成ゲームで遊んでいた。
「城之内!お前そろそろ聞いたら!」
「え、でもオイラ怖いよぉ〜」
お互いがお互いを譲りあいをしていながらゲームをしていた時、2階から古城の母さんが降りてきた。
「ごめんねー。掃除したから今からはうちの子の部屋で遊んでくれるー?」
どうやらここは古城の部屋ではなかったみたいだ。
2階の古城の部屋に行くと壁一面に水着のアイドルのポスターがあった。これは、今社会現象になっている会いに行けるアイドルのポスターだ。
「いやー、奥野くん、見て!この可愛い娘たち!特にこのみもちぃ!このアヒル口!可愛いよ!」
比較的によく話す古城だが、この時だけは口を閉じろと思うほどよく話す。
「奥っちは知らんかったか!実は古城は天性のアイドルオタなんよ!こいつやばいやろ!」
数々とでてくるアイドルグッズ。親はよく許したなと疑問に思う。
●この頃の私たちは自分達の趣味、好きなものを紹介するとクラスの中心的な存在、ガキ大将たちに晒されて馬鹿にされるというのがあった。人を家に招くのは本当に信頼できる人、だから趣味を紹介しても大丈夫というのがあったのだろうと今になると私は思う。
止まらないアイドルトークを聞いてきょとんとなっていた俺に、救いの手が差し込んだかのように
ピンポーーーンとチャイムが鳴る。
「古城ー!!何を内緒に3人で遊んでんだ!」
たまたま近くの公園で遊んでいた松岡、山寺をはじめ、計7人が古城の家に強引と割り込んできた。
どうやらこの7人のうちの誰かが自転車で古城の家に向かう俺たちを見つけたようだ。
古城は嫌々だがその7人を招くことにした。
「お、おいこの部屋サイコパスかよ!」
「すんばらしい!なんだこの部屋は!目の中に入り込んでくるハーモニー!」
「キモすぎやろ!マジ変態やん!」
瞬く間にわけがわからなくなった。
最初は荒らさる自分の部屋を止めていた古城だが、諦めたのか城之内に後は頼むと任せておれを自分の家の庭に案内してくれた。
古城の家は海沿いにあり、自分の庭がそのまんま砂浜と繋がっておりプライベートベーチを獲得したのも同然な最高の家だった。
「奥野くんはアイドルとか意外に好きな人いるの?」
唐突な質問に動揺する俺。少し間を空けて、城之内との約束を叶えるためにも口を開く。
「い、いないよぉ!古城くんは逆にいるの?」
「実は俺、堀北さんのことが大好きなんよ!」
びっくりした!堀北さんといえばうちのクラス、うちの学年で誰もが認める美少女ではないか!
その妖精、天使的な存在から人類が生んだ奇跡とおれが勝手にあだ名をつけていた。
「いつか俺は堀北さんに告白して幸せな生活を送るんだ!フハハハハ!!」
それから古城は堀北の好きなことを語っていった。だけどおれはその話が頭に入ってこない。
あの子と古城が両想いではないことに何故か安心してしまった。そしてこんなこと三角関係と呼ぶんだっけ。
城之内のために、あの子のために。というわけではなく、自分のためにが強かった。
「実は古城くんのこと俺の席の隣の女子バレの子わかる?あの子が古城くんのこと大好きなんよ。古城くんはどう思う?」
恐らく、これは普段の自分だと聞けなかった。
「あぁ、奥野くんの友達か!あの人はキョロキョロしてるしタイプじゃないよ!敬語多いしね」
おれにとっては嬉しいようで嬉しくなかった。
[嬉しい点]
古城から見るとおれのあの子は友達らしい。
古城とあの子が両想いではないのが正式化。
[嬉しくない点]
あの子の願いが叶わなかった。
あの子のことを少しバカにしていた口調だった。
「ね、奥野くん。時間って限りがあるよね!そこで俺、来週の金曜までに告白することにする!」
あの子の話題はその一言で終わったにも関わらずに堀北さんの会話は終わらなかった。
まぁ堀北さんのことを可愛いと思わない人は目が腐っているに等しいし、堀北さんが可愛いと認めない人はもうそいつは人間でも何でもないと思っていた。
「わかった!応援するよ!金曜になっても告白してない場合は強制連行してやるよ!」
現におれからすると古城は学年1のイケメン、堀北さんは1番の美少女。こんな素晴らしいことは他にないと思っていた。
こうして土曜の夕方。自分のアイドルグッズまみれの部屋が野郎どもによって荒らされる中、男同士の約束が交わされた。
帰り道、城之内とおれは今日のことを笑いながら話していた。
「そっかー。奥野っち!あいつは堀北さんのことが好きなのかぁ。」
「あの子にはなんて伝えるの?アイドル好きはやばいんやない?」
「まさか、オイラ達が今日古城の家行ったなんて知らないしな!色々と要点だけ伝えておこうと思う!早く教えておかないと可哀想やしな!」
どうやら城之内は正直に答えるみたいだ。
城之内と別れた俺はこの衝撃的な1日を思い出しながら自宅に帰っていった。
その帰り道、必ず通ることになるあの子の家。あの子の家の2階からはピアノの音が聞こえていた。
翌日、日曜日。おれは母の言いなりで動けない祖父のために弁当を運んでいった。2日連続で通るあの子の家。あの子は家の前でバレーの練習をしていた。土曜にあんなことあったなんて知らないんだろうな。
「オッス!バレー頑張ってね!」
声をかけるもあの子は固まってしまっていた。
その後の祖父に弁当を届けて帰った後、そこにはまだあの子がいたけど、何故か怖くなったおれはあの子と会わないためにかなり遠回りをして帰っていった。
●この時の私は、あの子より古城の恋で夢中になっていた。そのこともあってあの子と普通に会話ができたのではないかと思う。
翌朝、月曜日。古城のことを応援する気持ちが大きくいつもは朝礼ギリギリまで行かないおれだが、はやく学校に行った。するとあの子もいた。
「あ、のっさんだ。」
「へ。」
「奥野ののでのっさん。今度から呼びます。」
急にそう言われておれが今度は固まった。
「昨日会いましたよね!とってもかっこよかったです!あ、あ、あ!服装とかですよ!」
入学式当初、会っても話さなかった2人。それがここまで進展したのか。そう思った。
よく近所の年下にはお兄ちゃん好きとか言われることはあるものの、同級生にかっこいいと言われることのなかったおれは嬉しさと馬鹿にされたのかという2つの思考でこんがらがっていた。
そうしているうちに次々とみんなが登校してきていつものメンバーに自然というより強制的に戻っていった。いつメンというのは本当に厄介だ。それ以外の人と付き合うとなんらかの噂にされ、メンバー同士の絆もダメになる。いつメンをほったらかしにすると下手すると1人になってしまう。
そんな感じでいつメン、友達とはと考えていた。
朝の会の出席確認で古城は微熱があるので1日休むらしいという知らせが入った。
一昨日のことであいつは頭が痛くなったのかとおれは思い、笑ってしまった。
2限目の数学。授業が速く進み過ぎたこともあり自由に喋っていいことになった。どの道、数学の先生の急用で数学の先生は早く学校から帰らないといけないので数学の先生からすると助かったのであろう。
暇ー。なんか面白い話ないのー?とクラスの女子達が喚く。
そんなクラスのイケてる女子のために話題を提供しようとしたのか松岡と山寺が語り始める。
「実はおれら古城の家はじめて行ったんよ!めちゃめちゃ面白い!あいつの部屋アイドルの水着ポスターまみれやで!」
「めっちゃくちゃ変態やろ!!」
と、面白そうに話す2人。
笑うクラスの男子達。ヒソヒソと女子同士で話す女子。そんな感じだった。中でも女子はさっきまでの勢いがなくなった。
何してんねんこいつら。そう思いながら塾の宿題をしていた。その隣にあの子がいる。城之内はあの子ともう話をしたのだろうか。そしてこの話を聞いたのだろうか。どういう気持ちだったのだろうか。気になってしまったけどあの子の方向だけを見ることができなかった。入学してから2ヶ月これまでトップだと思われていた古城がスクールカーストというピラミッドの頂点から降格した日だった。
翌日、どこまでを知ったのか知らないのかわからない古城がやって来た。
おれは絶対に古城に昨日のことを言う気はなかった。本当にそうだった。可哀想だったし。
一日中寝込んだこともあり、古城は告白する覚悟を決めていた。
放課後、堀北さんのいる吹奏楽部のところに会いに行った。告白が失敗、成功したとしてもおれにはいて欲しい。もし、一緒に帰ることになったらその時はサインするから別に帰って欲しい。
そういう約束をした。
それから10分後、古城はまるで何もかも失ったかのように帰ってきた。
ここでは誰かに見られるかもしれないからすぐに校門を出て帰ろうと焦っていたので、命令に従う。
「奥野くん、おれダメだったよ。でも、まだ先があるからいつか絶対、堀北さんを振り向かせるようになってみせる!ダメでも近くにいるアイドルと思って下心で全力で見ておくよ!」
いつもより早い口調。いつもより大きく高い声。
一切おれの方に向けてこない顔。ずっとどんどん暗くなってくる空を見つめている。そんな彼と一緒に別れ道まで育成モンスターゲームの中に出てくるモンスターの育成法について話をした。
けれど、お互い頭に入ってこないのかもう一度言って欲しい、なんの話してたっけ、どうやろと、会話が長続きすることはなかった。
翌日、古城はいつもより元気でいじりがいのあるテンションだった。そんなこともあってかいつの間にかアイドルオタとして男子にいじられはじめる古城。おれはこいつを一生大事にしようと決めた。もちろん、人として。
おれは雨で外で遊べないこともあり、教室の後ろでエア卓球バトルを始めていた。
その近くに堀北さんとその友達たちがいた。
「何で古城くん振ったの?」
と、1人の堀北さんの友達であろう女子が聞く。
自分も聞く耳を持つ。
「あんなキモいアイドルオタク好きになれん。」
衝撃だった。理由がキモいという理由だった。
女子とは一体。そして、もし松岡たちが家に来なかったら。松岡たちが暴露しなかったら。古城が月曜日に来ていたら。そんな後悔の念でいっぱいだった。そんな感じでおれの6月は疑問と後悔と謎で終わっていった。
けれど、いつもよく話す隣のあの子。楽しい卓球部生活。土日になると遊ぶ松岡や古城。おれは今のところ文句の付け所がない学校生活を送っていた。
ある日、隣のあの子がこちらを授業中によく見てくることが多くなった。おれの趣味の落書きを見ているのかと思い一度牽制として「見てくんなや」と聞こえるか聞こえないかでの声で発言した。その後あの子がどうしたのかは見なかった。
●7月の初め。この頃になると3クラスしかいない1年の男子は全員の男子と一度は話をしたことがある、女子は全員の名前を覚えたという話をよくしていた。
そして非常に馬鹿らしいことが流行した。好きな人ベスト3を答えろ、それが嫌ならクラスの女子の中の女子を出席番号の順番ずつに上中下のランクで答えていけというゲームが流行った。これは男女どちらともはやりクラスの中心的な存在な男女が聞きにきていた。おれは島田に理科の授業中に聞かれた。本当のことを答えるのが恥ずかしいのと聞かれたら怖いというのもあり、上中中上中という順番で答えていった。
恥ずかしながら、隣のあの子を中とわざと持っていくために仕組んだ順番で、いつこの質問がおれにきた時でも答えれるように対策していた。
そんなある時、ついにあの子に対して質問が回ってきた。島田、高川があの子に聞いてきてた。
私はこの会話を生涯忘れることはないだろう。
今度対戦する古城のモンスターの相棒、悪夢のナイトアイの睡眠攻撃対策を俺の机の左斜め後ろにある山寺の机で考えていた。
「俺的には睡眠でも攻撃ができる技をつけるべきだと思うんだけど。」
「いや、松岡!おれはあいつより素早いやつを出して火力ゴリ押しか猛毒で削っていこうかなと考えてるんよ。」
そんな会話をおれと松岡と山寺としていた。
すると、島田と高川がやってきてまた来たかと思った。今度は誰やと思ったけどおれは驚いた。
今度のターゲットは隣の席のあの子だった。
島田が聞く。「お前の好きな男ベスト3答えろや」
「え、そんなの恥ずかしくて言えないです!」
「誰にも答えんけん喋らんとこの筆記用具返さんからな!」
「うぅー、内緒ですよ。1位は古城くんでしす!」
松岡と山寺の会話を無視して全集中力をあの子の会話に注いだ。
「は、あのアイドルオタク堀北が好きなんやろ。もうダメやんけ。」
「もー、言わないでください!」
「はいはい次は?」
時期が時期だし城之内は古城のことをすでに話ししているしもう諦めてるんだろう。
「3位は白崎くんです!」
「あぁー、サッカー部のやつね!」
「ん?2位とんどるやん 2位は」
ずっと待っても答えない。いくら待っても聞こえない。あの子が好きな人第2位。
「おい、はよ答えよーや!」と高川が脅す。
次の瞬間、あの子の左手が人を指差す形に変わり勢いよくおれをの方向に向いてきた。
「これ!」初めて聞いた敬語ではない言い方。
これはわずか1秒もない一瞬のことだった。
びっくりした島田と高川は
「何もこれ扱いしなくとも..。」と言って引き上げていった。
松岡と山寺ははしゃいでこんなことがあったことを1つも気付いてない様子。あの子もおれにバレないように言ったはず。ただ、おれは見てしまった。
一言でいう。おれはあの子に恋をした。
次回は主人公の前に新たな女子が2人登場します。