93.薬師ギルドでひと悶着ありました
王都の薬師ギルドは初めてかもしれない。
始まりの町やセブールと違い賑わっている。
流石に商業ギルドや冒険者ギルドに比べると小規模に思えるが、ちゃんと受付嬢が仕事しているのが凄い。
カウンターでギルドカードを見せて、上級ポーションを作るスクロールが欲しいと伝えた。
「Aランクでないと上級ポーションのスクロールはお売りできません」
うん、知ってた。
なので、HP中級ポーション(極)をカウンターの上に乗せて交渉スタートだ。
「それは知ってます。こちらを見て頂ければ、上級ポーションも作れると思います。私、薬師スキルレベルが8です」
ギルドカードのスキル部分を一部表示したら、受付のお姉さんは絶句していた。
カウンターに置かれたHPポーションの鑑定をして、慌ただしくどこかへ連絡している。
本当、いつも思うけど便利な魔法道具だね。
サイエスの自宅に設置しようかな。
内線感覚で使えるし。
後で、その魔法具が幾らくらいで買えるか聞いてみよう。
「今、ギルドマスターが来ますので少々お待ち下さい」
Why? ギルマスが来るって嫌な予感しかしないんだけど。
街を移動する度にギルドマスターに合わされるって、どんな嫌がらせだよ。
苦虫を噛み潰した顔をする私に、
「レン様、薬師はレアスキルです。それもスキルレベルが高いのにギルドランクがCランクだと実力と釣り合ってません。それを踏まえてギルドマスターを呼んだんだと思いますよ」
と説明してくれた。
嬉しくねぇ。
こちらでお待ち下さいと、別室に移動させられた。
冒険者ギルドや商業ギルドほど豪華ではないが、安くはない調度品に囲まれた部屋に通された。
多分、要人などを通す応接室のようなものなのだろう。
数分待たされた後、中世的な美人が部屋に入ってきた。
胸がない。
貧乳?
いや、でも腰めっちゃ細い。
尻もちっさいけど。
男? 女? どっちだ?
「待たせて済まないね。君が、レンさんかな? 私は、リー・シャンだ。ハルモニア王都の薬師ギルドのギルドマスターだ」
女性にしては低いかなと思わせるが、男性とも思えない優雅な仕草で握手を求められた。
「レンと申します。宜しくお願いします。こちらは、私の秘書のアンナです」
「値切りのアンナさんだね。噂は聞いているよ。行き成りギルドを辞めて、冒険者になったと」
滅茶苦茶いい笑顔でアンナの地雷を踏みぬいた!!
そのふたつ名止めて上げてよ、と心の中で絶叫した。
隣のアンナの空気が寒い。
八寒地獄に放り込まれた居心地の悪さだ。
ふたつ名に触れずに話を進めよう!
「それでギルドマスター自ら会うとは、どういう風の吹き回しで?」
「薬師レベルが8なのにCランクだというからね。サボり…息抜きがてら是非とも顔を拝みたいと思ってね」
こいつ、サボる口実で出てきたんかい!!
始まりの町でも思ったが、こんな奴がギルドマスターで大丈夫なのか?
「で、実際に見た感想は?」
「驚いたよ。子供が、薬師8を取得しているとは思わないだろう。もっと年上かと思ったね」
実年齢は35歳です。
物凄いサバ読んでます。
日本人は、どうしても童顔に見られがちなんだよね。
156センチと身長も低いし。
若く見られ過ぎるのは嬉しくない。
物凄く複雑な感情が渦巻いている。
「誰かに師事を受けたのかな?」
「いえ、セブールで中級ポーションのスクロールを読み込んでから、ずっとポーション作りしてましたので。誰かに師事して貰ったりとかはありません。後は、痺れ薬とか基礎化粧品セットを作ったりしてますし」
主に化粧品セットの量産を時間が許す限り量産した。
残業手当出なかった。
私社長なのに、固定給20万円。
アンナ達の方が、待遇が良いのは何故だろう。
留美生と2人だけの時は、ブラック企業だったからね。
手取り16万を自由に使えるのは大きいよね!
でも、せめて残業代くらい付かないか留美生に相談しよう。
「偶に居るんだよね。君、経験値倍化のギフト持っているでしょう」
うわぉう、確信ついてきたぁぁああ!
「いいえ、努力の賜物ですよ」
「君から薬の匂いがしないんだけど」
犬か、お前は!
私の被っている化け猫が引っぺがされそうな勢いだ。
「今は、基礎化粧品や化粧品などを中心に作成してますからね。それに、毎日お風呂に入ってますので」
「入手困難な美の魔法薬か」
「そう言われているようですね」
金色の長い髪をくるくると指に巻き付けながら、その麗しい唇から思わぬ言葉が飛び出した。
「その美の魔法薬の作り方を売る気はないかい?」
「は?」
「うん、だからね。美の魔法薬を作り方を売って貰いたいんだ。君のギフトについては詮索はしないよ。君に見合ったランクもあげるし、上級ポーションのスクロールも渡すよ。だから、ね?」
要は、基礎化粧品の作り方と引き換えに上級ポーションのスクロールとランク上げをすると言われているのだ。
脅しとも取れる言動。
舐められたものである。
「いや、別に結構です。どうしても上級ポーションのスクロールが欲しいわけではありませんし。別の国の王都でランクアップと上級スクロールを手に入れれば良いだけの事ですから。それに、基礎化粧品の作り方は特許として始まりの町にある薬師ギルドに売ると決めてます」
ニッコリと笑みを浮かべて言い切ると、リーは青ざめた顔をしている。
「どうして? 悪くない話だろう??」
「気分が悪いので帰ります」
席を立ち、さっさと退出した。
後ろで何か言っているが知らん。
薬師ギルドを出たところで、
「上級ポーションのスクロール欲しかったのではありませんか?」
とアンナが心配そうな顔で聞いてきた。
「中級ポーション(極)なら上級ポーション(劣)相当でしょう。それなら別にここで取得出来なくても、別のところで取得すれば良いことだしね! 問題ないわ」
それに優秀な人材はいるんだから、鍛えれば留美生みたいな前衛的なヒール使いになることはないだろう。
「それなら良いんですが……」
基礎化粧品の特許権を巡って厄介ごとが舞い込むのは、少し先の話である。




