88.丸投げしました
アトリエから出てきた留美生に、ハイテンションで新しく購入した物件を自慢した。
「聞いてや留美生!! あんな、ディゼニーから車で30分くらいのところにある廃病院を格安で買えたで!! 生産工場にしても良えし、保養所にもなるお得な場所があってん!」
これでディゼニーへ行く時の宿泊場所が確保出来る。
社員旅行も夢じゃないぜ!!
後、近い場所に温泉もあるから源泉を引き込めば温泉使いたい放題だ!
なんて素晴らしい場所なんだ。
うひょひょと言いながら思わず狂喜乱舞していた私を留美生が白い目で見ていた事は気にしない。
「その廃屋って訳有りとちゃうん?」
嫌な予感しかしねぇって顔で私を見る留美生に、親指をグッと立てて滅茶苦茶良い笑顔をしたら睨まれた。
ただ働きさせようとしたのがバレたのか、思わずそっと目を逸らしてしまった。
アンナは、ニコニコと笑みを浮かべている。
留美生の絶対零度の視線を受けても笑えるって凄ぇ!
「次、大物狩ったら全部私の材料として貰うからな!! で、何をして欲しいんや?」
案の定、素材を強請られました。
まあ、良いけどね。
半ば強奪に近い形で奪ってくるし、あがらったら嫌がらせ飯でチマチマ嫌がらせしてくるから諦めている部分はある。
「素材……まぁ良いけど、して欲しいのはお前のヒールで除霊してくれ」
今回は除霊だけなので、難易度は簡単な部類に入るだろう。
留美生のエリアヒールで大体は払えるし、しぶとい奴はヒールで一発昇天出来る威力がある。
「やっぱりそれか!?」
「良えやん。アンデットやったらお前のヒールで一発昇天やで!」
「神主業も補佐もして貰うからイーリン、ジャックを借りるで」
「良えけどイーリンとジャックじゃ除霊にはならへんのとちゃう?」
意外とあっさり承諾した。
前回はゴネにゴネ捲ったのに、イーリンとジャックを補佐に欲しいと言い出しだけで、すんなり承諾するとは予想外だ。
まあ、仕事を完遂してくれるなら良いけどね。
イーリンは聖女候補の称号があるから分かるけど、ジャックは使い物になるのか?
魔力は多いけど、聖魔法は取得させていないぞ。
「取り敢えずイーリンとジャック用の武器を作るから除霊はその後にしてや」
「OK」
GOサインを出すと、留美生はキッチンに籠ってしまった。
やけ食いでもするつもりか?
肝心のイーリンとジャックを呼んで、除霊退治の話をすることにした。
「この物件の除霊を留美生をリーダーに、イーリンとジャックでして貰う」
●×不動産で貰った物件の資料と写真を見せると、2人とも青い顔をしている。
「何かすっげぇヤバイものを感じるんだけど」
「私も、見ていて気持ち悪くなります……」
2人とも良い感性を持っている。
この程度で気持ち悪くなっていると、現場に入った途端に殺られそうだな。
「そりゃ、強力な怨念の塊が蠢いているもん。写真だけで相当ヤバイと感じられるだけ、感受性は合格やな。留美生がおるから死にはせんと思うけど、気持ち悪くはなるんとちゃうかな。ゲロ袋は持参しときや。後、ジャックはポイント振るから神聖魔法を取得し。手本は、留美生が見せてくれるさかい問題ないやろう」
多少気持ち悪くなる程度で、加護もあるし死ぬことはない。
大丈夫、大丈夫とガクブルする2人を慰めにもならない言葉で慰めた。
これを人は追い打ちと言う。
ジャック達の武器が出来上がり、新幹線とタクシーを使って曰く付きの廃病院へ送り出しました。
アンナ以外の居残り組は、今日も今日とてパソコンとスマートフォンの操作をして貰うことにした。
適当に触って遊んで貰いつつ、知育アニメの鑑賞をして貰う事にした。
私が小学生の時に見ていた物の方が、質が良かったように思える。
雑学や環境問題などを深く掘り下げた題材が多く、結構人気もありマスコットキャラはそのままにお姉さんだけが変わって結構続いていた気がする。
勉強嫌いな私も、その時ばかりはテレビに食い入るように見入っていたのが懐かしい。
算数・国語・社会・理科の4科目の知育テレビを見るように言いつけて、後は好きなアニメなりドラマなりを見て良いと言い残して、アンナと共に贔屓にしている業者を訪ねる事にした。




