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社畜OLは、打倒邪神を目指す!  作者: もっけさん
ハルモニア王国王都
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84.ビルの内装依頼してきました

 前回このビルを紹介してくれた不動産の渡氏の伝手で、内装工事を手掛けてくれた業者を訪ねた。

「済みません。山田です。社長さん居はります?」

 受付のお姉さんに聞いてみたら、

「アポはお取りですか?」

と返された。そらそうだ。

「アポは取ってないんですけど、急ぎで大きい仕事を頼みたくて直接来たんです。山田花令(やまだかれん)が来たと伝えて頂けますか?」

 一瞬怪訝そうな顔をされたが、そこはプロなのか分かりましたと受話器を取って確認していた。

 一言二言の後に受話器を押さえながら、

「少しなら時間が取れるとのことですが、宜しいでしょうか?」

「構いませんよ。無理に押しかけているのはこちらですし」

「では、もう少々お待ち下さい」

 受付のお姉さんは、私たちを案内すると言ったあとに受話器を置いた。

「係の者が案内しますので、少々お待ち下さい」

「ありがとう御座います」

 ニッコリと営業スマイルを浮かべて待つこと数分。

 ガチムチのおっさんが、良い笑顔を浮かべて現れた。

「山田さん、来るなら一言連絡下さいよ~」

「八代社長自らのお出迎え嬉しいですわ。いやぁ、急ぎの仕事を頼みたくて押しかけちゃいました。あ、特急料金は弾むんで仕事受けて貰えません?」

 綺麗な姉ちゃんに応接室まで案内されたかったのに、ガチムチのおっさーんに案内されるなんて不幸だ……とは言わないでおく。

「内容によりますよ。じゃあ、応接室へどうぞ」

「ありがとう御座います」

 始終ニコニコしながら、八代の後についていく。

 このおっさん、職人気質で結構どんぶり勘定なところがあるので商談としてはやり易い。

 まあ、根切りまくると続かない上に悪評を立てられるので仕事に見合っただけの報酬を適正価格で払う。

 そこは、アンナの交渉術の出番だ。

 通された応接室のソファーに座り、商談がスタートした。

「それで、今回はどのような件で?」

「1階~4階までの改装を受け持って貰いたいんですよ。1階は商品を販売するスペースとして使うつもりです。2階は二部屋に分けて、それぞれに簡易のトイレとミニキッチンを付けて貰えますか? 後、大きな作業台も欲しいですね。3階と4階は、3畳の部屋をパーテーション区切って作って貰いたいです。1フロア25部屋でお願いします。絨毯は朱色で」

「ネット回線も引くのかい?」

「ええ、勿論です。その回線の配管も設置して貰えますか。デザインなどは、全てお任せします。後、前回紹介して貰った宮大工さんに1階に神棚を作りたいので話を通しておいて貰えますか? 3階と4階は至急取り掛かって貰いたいので、通常の1.5倍は出します」

「今回も気前が良いねぇ。そんなに儲かっているの?」

「いや~、改装費でトントンですわ」

 苦笑いを零しながら、アンナとアイコンタクトを交わす。

「費用の予算ですが、3階と4階の施工費で2300万円。2階と1階で2000万円でお願いします」

「急な仕事の依頼だからもう少し上げて貰わんと」

 足元見てくるなー。ここで調子づかせたらあかんから、アンナに釘でも刺して貰おう。

「パーテーション1枚が定価1万円程ですし、LAN配管・椅子・机も発注しますので単純計算で2000万円くらいです済みます。特急料金として300万上乗せしてますので、それ以上の値上げはこちらも受けられないので別の会社に発注しますが……」

「受けないとは言ってないで。他の仕事も抱えているしなぁ。納期前倒しでやるから少し色付けて貰われへんやろうか?」

 アンナがチラリと私を見たので、机のしたでチョキとパーを見せた。

「では、2500万でどうでしょう?」

「うーん……それなら良いか。急ぎと言うからには作業はいつから入る?」

「今日からお願いしますv」

 うふっと言ってみたら、怒られた。

「無茶にも限度があるだろう!」

「あはは、冗談です。早急に着工して貰いたいんですけど、どれくらいで入れます?」

 八代は壁に貼ってあるカレンダーを見て、何やらぶつぶつ呟いている。

 今抱えている仕事と回せる人材の確保、工事に必要な材料の納品など計算しているようだ。

「そうだな。早くて2週間だ」

 二週間なら、サイエスに渡って時間潰せば良いか。

 イザベラのレベル上げもあることだし、向こうに居れば2日のロスで済む。

 いや、地球に残って社員旅行という手もある。

 これは、一旦家に持ち帰って家族会議だな。

「じゃあ、それでお願いします。手付で500万置いていきますね」

 チャネルのバッグを通して拡張空間ホームから100万円の束を5つテーブルの上に置いた。

「ほんま、金払いの良いな」

「ローンは嫌いなんで即金上等ですよ。じゃあ、2週間後にうちのビルに来て下さいね。その時に図案確認と微調整しましょう」

「山田さんの仕事を受けてから実入りが良いんですわ。紹介した宮大工の親方も悲鳴を上げてるみだいでっせ」

 ガハハハッと豪快に笑う八代に、私の顔が少し曇る。

「神原さんですね。1階に設置する神棚をお任せしたかったんですが、市販のものに頼るしかなさそうですね」

 腕利きの職人さんで、本当にいい仕事をしてくれた。

 曰く付きで誰も嫌がって受けてくれなかったお社の建設を引き受けてくれた人だ。

 40代半ばと働き盛りで後輩はどんどん独立しているのに親方の元をガンとして離れなかった人だ。

 誠実な仕事をしてくれた人である。

 その親方である加賀見氏も、70歳で第一線で活躍している宮大工職人だ。

「山田さんなら受けてくれるって。俺から連絡してやるよ」

と、行き成り電話かけ始めた。

 呆気に取られる私達をよそに、勝手に話を進めている。

 電話を切り終わった後、グッと親指を立てて良い笑顔で言った。

「神棚作りOK出たぜ。今回は若い衆にやらせて経験値を稼がせたいと言ってたわ」

「神原さんじゃないんですか?」

「神原の坊は、別の仕事を手掛けている最中だとさ。回せるのが若手連中なんで、ミニチュアのお社を作らせたい考えみたいだぞ」

 おっふぅっ!! なんか話が飛んでいるんですけどぉ!!!!

 加賀見親方の下に居る職人さんは腕が良いのは分かっているが、こうも勝手に決められると納得できん。

「若手の職人さんが作るなら、少し値段は下がりますよー。もう、八代さん勝手に決めるん勘弁して下さいよ」

「山田さんなら、絶対親方のところを選ぶだろう。良いじゃねーか。これも経験と思って受けてくれや」

 頼むわと拝まれた。

 だがしかし、アンナはニッコリと笑みを浮かべて言った。

「予算に限りはあります。後日、その若手の職人さんも交えてお値段を決めましょう。加賀見親方の方にも2週間後に当社へお越し頂くように伝言お願いしますね」

 こ、怖ぇええ!

 修羅が居たYO!!

 勝手に話を進められたのが気に食わないんだね。

 アンナは、人にペースを乱されるのが苦手みたいだし仕方がないか。

「……っと、話し込んでしまったみたいですね。工事お願いしますね」

「おう、任せとけ」

 威勢の良い声に、宜しくお願いしますと頭を下げて会社を後にした。

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