82.お家に帰るまでがブートキャンプです
濃厚な3時間を過ごし、私・留美生・アンナ・契約カルテット以外は皆死んだ魚のような目をしていた。
「どうしたん? 元気ないで」
「死んだ魚のような目しとるな」
「本当ですね。ちょっとやり過ぎましたかね?」
ちょっとモンスターの討伐しただけで、これではこの先大変である。
せめてアンナくらい図太い神経を持って貰わないと困る。
ステータスを見ると平均で60前後と成果は芳しくない。
これならCランクの冒険者として通用するかどうかというところか。
「短時間で平均レベルが60前後なら、結果良しと判断するべきかなぁ。せめて、欲を言うなら80台は行って欲しかったけど」
そう私が呟くと何故か元奴隷一同が絶望的な顔をした。
「時間的にそれは難しいかと思いますよ? 私も慣れるのに結構時間がかかりましたし」
とアンナが突っ込んだ。
そんな素振りは見せたことがないのに、驚いた。
何でも出来ちゃう人だから、結構な無茶ぶりを振ったこともある。
その都度、余裕綽々な顔をしてこなすから『それが当たり前』だと思っていた。
認識を改めないと精神を病んじゃうね。
「皆、ごめんな。自分の基準で考えてた。詰め込み過ぎは良くないしな。これからは、気を付けるわ」
「いえ、良いんです」
「そうですよ! 私たちの為を思っての事だって分かってますから」
「そうです!」
口々に恐縮の言葉を述べられてしまった。
むぅ……、やっぱり元奴隷だからか距離が遠い気がする。
「じゃあ、一度屋敷に戻るか。帰り道にモンスターと遭遇したら無視の方向で。向かってきたのだけ私らが相手するから、帰りは戦い方を見ときや。留美生、お前はその斧で戦えよ。後、アンデッド系のモンスターが出たらヒールな。それ以外の魔法は禁止」
「何で私だけ羞恥プレイなん?」
「斧を使うところを後輩に見本見せたれや。大体、お前魔法の才能ないやん。前衛的なヒールってアンデッドモンスター以外に効果ないやん。グダグダ言わずにやれ。私も魔法で戦うんやし文句言いな」
世の中に出したら、それこそ戦争に利用されかねないチート武器である。
大体、作業に没頭して契約カルテットを放置した結果、売れない系武器を量産されたのだ。
その尻ぬぐいをこういう形でさせても文句はないはず!
というか言わさない!
デフォルメされた肉球斧とかないわぁー。
絶対装備したくない武器ランキングで上位に入るわ。
「前衛って私だけやん! お前も前衛しろや」
「は? 何言ってんの。契約カルテットがおるやろ。私は、解説しながら魔法を使うんや」
「後衛ならアンナがおるやん! 自分、恥ずかしい武器を使うのが嫌なだけやん」
「そうや! そんなアホな名前かつ変な武器使いたくないでござる!」
ドンッと胸を張って答えたら、どこから取り出したのかハリセンでしばかれた。痛す。
「後衛はアンナだけで十分や。てか、お前が一番レベル高いんやから前に出て戦え。私1人に羞恥プレイさせんな」
拡張空間ホームから取り出されたのは、山賊の手だった。
「いや、これ武器ちゃうやん! これで戦えと? これ単純に何か解除する時に使うやつやろ。剣とか渡せよ」
ガッデムッと怒鳴ると、フンッと鼻を鳴らしシラ~とした目で睨まれた。
「お前の腕力なら物理でもいけるやろう。大体、お前に剣なんか勿体ないわ。てか、持たせたらその辺伐採しまくって環境破壊になるやん」
図星を指されたよ。
確かに私のレベルでチート武器を振り回したら、それこそ地形が変わりかねない。
だからと言って、山賊の手は無いわー。無いわー。
白目を剥きながら仕方がなく山賊の手を手に取った。
帰り道を歩くこと1時間。
その間に遭遇したモンスターの数は21回。
前の私だったら、もっとエンカウントしていたから少ない方だと思う。
山賊の手を使ってモンスターから金目の物を奪い撲殺を繰り返すこと21回。
山賊の手って何でもご開帳できるのが良いね。
その場から狙った獲物の口を問答無用で開けてくれるので、痺れ薬とか投入するのが楽だった。
後、死体がドロップ品に変わる前に魔石を奪い取ることも出来るのは良い発見だった。
これには、留美生が一番歓喜していた。
魔石の半分(良質)は売り払うんだが、ちゃんとそこのところ分かっているんだろうか?
撲殺なので返り血が半端ない。
門が見えた辺りでcleaningを皆に掛けて、屋敷へと戻った。
帰ったらパンジーが迎えてくれた。
しかも、どこも彼処もピカピカになっていて驚いた。
一息着こうということで皆でリビングに移動したら、リビングのソファーで某アニメの魔法少女がプリントされたTシャツと短パンで寝そべって漫画を読んでいるイザベラの姿があった。
「……何しとんねん」
「? 漫画読んでいる」
「いや、何でお前レベル上げに来てないの?」
「何も言われなかったから」
そう回答されて、確かにイザベラには声を掛けてなかったことに気付き崩れ落ちた。
リアルOTZの状態である。
「自発的に参加しようよ」
「いや、漫画見たい」
それは、私がお勧めしたカードキャプチャーさくりんだよね!
面白いのは勧めた私が一番分かっているけど、何てマイペースなんだ。
「私たちが居ないことに気付かなかったの?」
「気付いたけど、静かだから丁度いいと思った」
「……」
「お前の落ち度やな」
「……」
留美生に指摘されて怒るに怒れない。
「イザベラは、別で今日の分も含めてレベル上げするからな」
「マギ☆コレ全部見てからでも良い?」
「ダメです。全12話+劇場版3作もあるやん」
「じゃあ、やらない」
ぷくぅと頬を膨らますイザベラに、
「レベル上げ終わったら見ても良いし、マギ☆コレのスマホゲームの先も見せたるねんけどなぁ~」
フリフリとスマートフォンを振ると、少し考えた後に頷いた。
チョロイ。
「じゃあ、お茶しながら反省会して家に戻るで」
「ういっす」
「はい」
留美生・アンナ・イザベラ・ワウル以外は分かってない様子だが、後から分かるので今は無視して反省会をした。




