81.ルミナ&アンナ式ブートキャンプ
「嫌や~嫌や~。こんなおっさんばっかりのパーティーなんて嫌や~」
私は、花令に命じられてボブ・イスパハン・ジョンの引率をしている。
むさ苦しいおっさんパーティで唯一の癒しが楽白だけ。
私の頭の上でうごうごしているので、何か怪し可愛い踊りでも踊っているんだろう。
気楽で良いね、おまいは。
「さてと、しゃーないから行きますか」
アンナ用に買った原付と私の原付、後電動スクーターを取出して言った。
「ボブとイスパハンは二人で乗ってな。ジョンは、これに乗れ。私は電動スクーターに乗る」
「あの、乗り方が分からないんですが」
困ったような顔をする二人。若干1名は、出された原付とスクーターに興味津々の様子だ。
「イスパハン、バラしたら半殺しやからな」
「わ、分かった」
念のため釘を刺しておくと、ちょっと青い顔をして冷や汗を流していた。
こいつ、解体する気満々だったな。
乗り方を口で説明するよりも実践で体験した方がいいだろう、
エンジンの掛け方、減速・加速の仕方、停止方法を教えた。
入れ替わり立ち代わりで1時間も乗れば、慣れてきたのかそれなりにみれる形にはなったと思う。
「時間も限られとるし、ほな行くで」
索敵使って森の最深部を目指す。その間、原付&電動スクーターに引き殺された魔物多数。
引き殺した直後に、停止しドロップ品はちゃんと回収するを何度も繰り返した。
結構深いところまできて、原付とスクーターから降ろし、ポイポイポイと武器を渡してジャイアントアントの群れの中に放り込んだ。
「そのイヤリングがある限り、死にはせーへんから! うちも後方支援したるから頑張れ」
と言ったら、
「ギャーッ!!」
「ちょっ、死ぬ死ぬ死ぬ!」
「助けておかあちゃーん」
なとど腰の抜けたことをほざいたので、お茶セットを拡張空間ホームから取り出して観戦することにした。
根性なし共め。少しは男気見せて戦えっつーの。
武器を滅茶苦茶に振り回しても、ちゃんと体のどこかに当たる命中率。
流石、契約カルテットが人の素材をくすねて作った武器だけはある。
あいつら人の目を盗んで勝手にチートアイテム作るから売るに売れない。
箪笥の肥やしになっている現状、こうして使い手も現れたことだし、武器も本望だろう。
売れない武器を量産するのは止めて欲しい。
それで怒られるのは、何故か私なんだ。
姉に幾ら契約カルテットが勝手に作ったと言っても、返ってくる言葉は決まって「監督不行き届き」の一言である。
理不尽だ。
「頭狙えば一撃で死ぬからな~」
「「「もっと早く言えぇえ!!」」」
着実に数を減らしてきているところで、アドバイスしたら怒られた。
理不尽だ。
ジャイアントの群れを殲滅し、ドロップアイテムを回収した後、次の狩場へと移動した。
ブチブチ文句を言われたが無視だ。
「お前らレベル80になるまで休憩はなしやからな」
レッドボアやアースドラゴンなどの前に放り込んで、私は戦闘観戦しつつアドバイスを送る。
鬼だ悪魔だと言われたが、パワーレベリングしても実践してなければ意味がない。
チートな武器持っているんだから死にはしない。
姉お手製のHPとMPポーションがあるので、お腹がタプタプになるまで飲ませて戦わせた。
最後は、死んだ魚のような目をしながら無言で原付とスクーターに乗って集合場所へと戻った。
山田姉妹の鬼畜ブートキャンプとは違い緩い感じで戦闘しているアンナチーム。
サクラの張った結界内から、ただ魔法を打つだけの単純作業をルーシー・キャロル・マリー達。
「基本は頭を狙って窒息死させるか、首と胴体を切り離します。飛ぶ魔物は羽を狙って攻撃して下さい。足を狙って動けなくするのもありですよ」
と、えげつない戦術をアンナは教えている。
「「「は、はい……」」」
怖くて口答え出来ないと、三人はアイコンタクトをし合い言われた通りに魔法を放つ。
魔力はあっても、魔力操作や熟練度が足りないので明後日の方向に飛んだり、魔法が不発に終わったりと様々だ。
「慣れれば出来ますから、焦らずゆっくりやりましょう。あれは、単なる的です。結界から出なければ、怪我したりしませんから」
ホホホッと上品に笑いながら見本と称して上級魔法をぶっ放すアンナに、三人とも顔が引きつっている。
山田姉妹のようなブートキャンプにはならなかったが、アンナは格上の敵を見つけては指示を出して攻撃させる。
「キャロルは、土魔法で相手の足場を崩して! ルーシーさんは、青い炎が出るまで魔力を練ってダイアウルフの顔面にぶつける!! マリーさんは、ウィンドカッターで首と胴体を切断を意識して下さい!」
ガンガンとサクラの結界を破ろうと結界に体当たりをするダイアウルフに、一斉に魔法攻撃が炸裂する。
敵=的な考えを持って攻撃しろと激を飛ばすアンナに、三人は涙目になりながら攻撃を続けた。
スタボロなダイアウルフは、あと一歩のところで逃亡した。
「チッ、逃がしてしまいましたか」
柄悪く舌打ちするアンナに誰も声を出せないでいた。
「大分精度も上がってきたことですし、一度皆と落ち合いましょう」
アンナ式ブートキャンプは、こうして幕を閉じたのだった。




