80.カレン式ブートキャンプ
パンジーを除く全員でパワーレベリングをする事にしました。
パンジーは家の精なので、家から離れることが出来ないので家事をお願いした。
年少組のチルドルとジャックも強制参加です。
理由は簡単。自己防衛のためだから!
一軒家たり複数の奴隷をポンと買えちゃうくらいのお金を持っていると、良からぬ輩に目を付けられる可能性がある。
そんな時、人質にされてしまうと手出しが出来なくなるので自己防衛をして貰う事にした。
というのは建前で、いずれ独り立ちした時に多少の腕っぷしがあれば食っていけるだろう。
自分の食い扶持は自分で稼ぐ!
それが山田家のモットーです。
元冒険者と私・アンナ・留美生・契約カルテットはダンジョンに入れるが、その他は冒険者登録すらしていないのでダンジョンには入れない。
それに年少組のジャックとチルドルの2人は、冒険者登録出来る年齢ではないのでダンジョンに入ることも依頼を受けることも出来ない。
だが、抜け道もある。
依頼は受けられないが、冒険者のチームに荷物持ちとして同行するのは自由だ。
元冒険者チームは一足先にダンジョンに入って貰うことにし、残った低レベルの人たちは私たちと一緒に近くの森でレベル上げをすることとなった。
王都を出て、魔物除けの薬を散布しつつ歩く事1時間。
索敵を掛けると良い感じに魔物が点在している。
「じゃあ、チーム分けするからな。私チームは、蛇ちゃんズ・チルドル・ジャック・ワウル。留美生チームは、楽白・ボブ・イスパハン・ジョン。アンナチームは、サクラ・ルーシー・キャロル・マリー」
「何で私んとこだけ物理系なん! 野郎ばっかで嫌や~」
野郎と組みたくないと駄々を捏ねる留美生に、脳天チョップをかました。
「ギャッ!」
「グダグダ文句言うな。お前、この間の昇級試験で片手斧のスキル取得してたやろう。指導したれや。念のため楽白も付けたやろう」
頭を押さえながら蹲っている阿呆は放っておいて、アンナに声をかける。
「ルーシーとキャロルは火と土魔法のレベル上げな。マリーは水魔法1を取得させたから、そのレベル上げや。サクラがおるから大丈夫やで。結界内からバンバン魔法使い。急所を狙うのが一番効率的やし、後大抵のモンスターは口と鼻を塞げば死ぬから安心して戦ってき。んで、チビっ子チームは魔法と槍を覚えて貰うで。大丈夫。あんたら魔力だけはあるから、後は適正が何か探っていきながら戦うで。無難に水魔法取っとこうか。ワウルは片手剣で戦え。お前は壁役させるからな。何かあったら念話すること。じゃあ、3時間後にこの場に集合!」
ポイントを割り振ってチルドルとジャクには水魔法を取得させた。
ボブとワウルは片手剣。
イスパハンは大剣を取得。
マリーは水魔法を取得させておいた。
私はチビっ子2人とワウルを連れて移動開始。
索敵してたらホブゴブリンの群れに遭遇した。
豪運様がいい仕事をしてくれたよ!
ザッと30匹はいる。
経験値はショボいが、初心者の戦闘には丁度良い材料だろう。
留美生から内緒でかっぱらった巫女の耳飾を装備しといて良かったわ。
巫女の耳飾・改と合わせて使うと、丁度良い感じに収まってくれた。
悪運が幸運に好転してくれただけでもありがたや~。
「ギャアァアッ! ホブゴブリンっすよ! あんなに居たら死ぬっす」
「そな騒ぎなや。EccentricShock」
雷魔法1なので威力はないが、いい具合に感電してバッドステータス(麻痺)で動けなくなっている。
「よし、今や! ワウルは、剣で止め刺してこい。おチビ共は、水魔法で口と鼻を覆い。5分経ったら槍でグサッと止めを刺すんやで」
大体5分もすれば完全に意識は落ちてほぼ95%の確率で死亡している。
念のために止めを刺せば、確実にこの子らに経験値が入るだろう。
蛇ちゃんズには危なくなったら、チビちゃん達を守るように言いつけてある。
ド素人でも使える剣(物攻12000・会心50%・命中20%)と誰でも達人になれる槍(物攻8000・会心30%・命中60%)を渡しているので大丈夫だろう。
魔力の扱いに慣れていないためか、顔を覆うくらいのウォーターボールを作ってたり、維持するのが大変だったりで溺死させるまでには至らなかったが、昏睡状態にして槍で確実に止めを刺していた。
ワウルは、腰が引けつつもグサグサと心臓を狙って刺している。
15分程で片が付きました。
私も蛇ちゃんズも出番が無かった。
「じゃあ、次行で~」
「ちょっ、姐さんもう止めましょうや。ホブゴブリン30匹討伐したですよ。この辺にしときましょうよぉ」
弱腰になっているワウルの尻を蹴り飛ばし、
「グダグダ言うな。チビ共の方が、お前よりも根性座っとるやん。見習え」
ドロップアイテムを蛇ちゃんズと共に回収し終わり、索敵で獲物を見つけて次の場所へと移動を開始する。
自転車を2台出して、チビ2人に乗らせてみる。
最初は、転んだりと危なっかしかったが、30分もすればスムーズに走れるようになった。
よし、これで足は確保した。
「しっかりついてきや」
私は原付を出して、ワウルを後ろに乗せ先導する。
速度は30キロ未満なので、私にすれば低速度である。
いつもなら80キロは超えている。
次に遭遇したのが、キリンが現れた。馬に角が生えただけなのに、種族名がキリンって!
普通は、ユニコーンじゃなかろうかと思ったが微妙に違うらしい。
レベルも53と中々美味しい経験値の塊じゃないか。
よし、狩ろう!
雷魔法を持っているので、耐電スキルはあると思った方が良さそうだ。
そうすると、水魔法もあまり期待出来ないな。
「Concrete」
キリンの足場をコンクリートで固定し、顎を掴み無理やり口を開かせた。
「続けて試作品の麻痺薬を口に流し込んでっと。うん、良い感じに痺れてんな」
足から崩れ落ちへたり込み痙攣を起こしているキリンを見て、後ろにいた3人に声を掛けた。
「丁度いい感じに痺れているから、薬の効果が切れる前に止め刺そうか。頭を重点的に狙うんやで」
「……姐さん、外道っす」
「じゃかあしい! お前のレベルよりも上なんやぞ。正攻法で勝てると思うな、ボケ。汚い手だろうが勝手生き残れば正義なんや。大体害獣に仏心は無用や」
大体モンスター討伐に外道もくそもあるかとワウルを叱りつけ、止めをさせと急き立てる。
チビ2人の方が、槍を使って一生懸命戦っている。
根性は立派なもんだ。
10分毎に痺れ薬をしこたま仕込んで、3人に頭をタコ殴りにさせる。
「武器の使い方を学びや。それは的やと思って戦い。大丈夫、痺れて何も出来んから怖ないで~」
剣なら教えられなくはないが、槍は知らん。
自己流で覚えて貰うしかない。
まずは、突きから覚えればいいだろう。
本当は往なし方を覚える方が先なんだろうが、師事する人がいないので仕方がない。
槍使いの奴隷でも今度買おうかなぁ。
1時間かけてキリンを倒した。最後は、恐怖に怯えた目で私を見ている。
なんか、ちょっと罪悪感が出るね。
最期は見るも無残な姿になっていた。
体のあちこちに切り傷や刺し傷が沢山あった。
ドロップされたアイテムは、幻獣の角・毛皮・透明な魔石(大)・幻獣の尻尾・金貨400枚だ。
取得金2倍のスキルが良い感じで働いてくれている。
留美生様様だ。
「じゃあ、次は実践行ってみようか~」
「ちょっ、実践って俺らだけで戦うんすか? いやいや、無理無理。マジ、無理っす!」
青い顔でガクブルしているワウルは、本当に根性がない。
チビっ子2人を見ると、若干青い顔色ではあったが反論はしてこない。
根性が座っていて良いね!
そういうの大好きだよ。
「子供が文句言わんのに、大の大人であるお前が何文句言ってんねん。3人の平均レベルは40前後まで上がったんやから、大丈夫なんとかなる。というか、何とかしろ。私も最初はレベル1でワーウルフを倒したんやから。やれば出来る。いざという時は、ちゃんと助けたるし怪我しても常時回復されるから死にはせん。痛いだけや」
「それでも嫌なもんは嫌っす! 怖いんっすよ」
絶叫するワウルの頭をハリセンでしばき、地面に沈めた。
「ギャーギャー五月蠅い。武神の加護貰っておいて、何やねんそのヘタレさは。もし、脅されたり攫われたりした時、1人で対処出来るようにならんかったら、この先生きていかれへんで。その為の訓練やろうが。キリキリやれ」
ううっと呻きがなら地面が濡れている。
大の大人がこれくらいの事で泣くなよ。
キモイな。
「この先、ずっと一緒にいるとは限らんのやから自立出来るように強くなれ。金も力も知恵も自分の手で手に入れるんや。そうすれば、誰かにいちゃもん付けられても大抵の事なら対処出来るようになる。それに、コネ作りも大切やで。お前も一番知っとるやろう。ワウル、お前に一番欠けているのは自己防衛出来る手段がないことや。人に良いように扱われる人生で終わりたくないなら剣を取れ。そして戦え。レベル80になるまで戦うからな」
そう宣言して、パワーレベリングという名のブートキャンプをやりました。
終わるころには、皆の目が死んでいた。
ちょっとやり過ぎたかもしれないと自己反省したよ。




