79.運再分配と奴隷達のステータス
サクラに全員エクストラヒールを掛けて貰い、アンナ指導のもと風呂に入っていた奴隷達が、パンジー先導で戻ってきた。
「んじゃ、奴隷諸君は私と制約魔法を結んでもらうよ~。拒否権は無いからね」
私の言葉に、奴隷一同顔色が悪い。
悪い方向に取ったみたいだ。
「君らは、うちの従業員として働いてもらう。奴隷としてではなく、対等な人間として働くんやで。ただ、うちらの諸事情で制約魔法を掛けんと不都合があんねん。私は、商人やから化粧品や香辛料なんかで商売しとる。手が足りんかったから、あんたらを買った。日当は金貨1枚。週1日休み。女性は生理休暇・産休もある。病気とかなったら、うちらが直したるから安心し。臨時収入も出るで。社員旅行は、今んところ考えとらん。残業や休日出勤した場合は、金貨1枚・銀貨3枚・銅貨5枚になる。別途、何か特別な仕事に就く場合は手当が出る。部屋は多いから、家族は広い部屋使い。独身連中は、個室が与えられる。食費やその他諸々は、全部こっちで負担するから気にせんでええよ。制約魔法の内容は、『私達に関するあらゆる情報を漏らさない。裏切らない。絶対服従』です。殺生与奪は私が握ることになる。裏切ったら魂ごと消滅するからな。因みに、そこにいるアンナとイザベラ、後ここにはおらんけどワウルも制約魔法を受けてるで。先輩から一言どうぞ」
とアンナに振ると、
「殺生与奪と言ってますが、全然気にすることないですよ。寧ろ、受けた方が恩恵が大きいですし、何より衣食住に困らず新商品や新作をいち早く手に入れられます! 仕事もやった分だけ稼げます! 自由も多いですし、何より面白いですよ」
何が? と思わず突っ込みたくなるようなアンナのアピールに奴隷一同戸惑っている。
「あの……本当に、奴隷にお給金が払われたり、病気になっても直して貰えるんですか?」
奴隷の1人が挙手をしておずおずと質問してきた。
「私、神聖魔法持ちだし。薬師ギルドのCランカーだから。それに、私より従魔のヒールスライムがエクストラヒール使えるから死ななければどうにでも出来るで?」
その言葉に、全員が私との制約魔法を承諾した。
1人1人制約魔法で縛っていき、終わったのが1時間後でお疲れモードです。
「自己紹介していこうか。ステータス見せて貰うで。名前と特技と挨拶してな! 1人30秒で宜しく。はい、一番右の人から」
長くても面倒臭いので、30秒の持ち時間という無茶ぶりを振ってみたら皆ちゃんとしてくれた。
「私は、ルーシーと言います。18歳です。流行り病で亡くなった親の借金の肩代わりに奴隷落ちしました。私も病にかかり、死を待つばかりでした。特技は暗記です。レン様ありがとう御座います」
「私は、キャロルと申します。32歳です。商売に失敗して借金が返せずに奴隷落ちしました。奴隷として働いている最中に大怪我をし、満足な手当もされずあの部屋に入れられました。特技は暗算です。土魔法が得意です」
「ボブと言います。今は亡き妻の度重なる治療で借金をし、奴隷になりました。特技はありません」
「俺は、イスパハン。見ての通りドワーフだ。鍛冶をしていたが、取引相手に騙されて奴隷落ちした。鍛冶が得意だ。素材さえあれば、何でも作れるぜ」
「僕は、チルドルです。10歳です。元々身体が弱くて、僕の病気を治すために両親が無理をして神官様にポーション貰ったり、神聖魔法を掛けて貰ったりしたのですが回復できず一家で奴隷落ちしました。僕は、あそこで死ぬと思ってました。こんな綺麗な服を着て身体も楽になって凄く嬉しいです。レン様への恩は一生かけても返します。特技はないです」
「私はマリーと申します。チルドルの母です。特技は料理です。息子を助けて下さり、一家全員を買って下さり本当にありがとう御座います。この御恩は忘れません」
涙を浮かべながら深々と頭を下げるマリー一家に私はポリポリほ頭をかいた。
慈善事業で助けたわけではなく、スキルとかを見て買っただけなので泣きながら恩に着られても困る。
「私はジョンと申します。チルドルの父です。特技は芝刈りです。体力には自信があります。マリー同様、レン様本当にありがとう御座います。生涯この御恩は忘れません」
重い! 重すぎるっ!! 次!
「ハンスだ。ドラゴニュートだ」
え? それだけ? 特技とか奴隷になった経緯とか言ってよと突っ込んだら、教えてくれました。
「セブールで受けたBランクの依頼が、実際はAランクで依頼失敗による違約金が発生して奴隷落ちした」
「何で違約金が発生すんねん! そこは、ギルドの責任やろう」
「そう言ったが、聞き入れられなかった」
理不尽な奴隷落ちに怒ると、冷静に返された。
どこまで腐っているんだ。ダリエラ潰す! 絶対潰したる!!
「レン様、心の声が駄々洩れですよ」
「はっ! 堪忍な。つい、あの糞アマの事を思い出したら潰したくなって。ほな次な」
「ニックです。ハンスとパーティを組んでました。俺も違約金による奴隷落ちです。戦闘で負傷し、満足な治療もされずに放置されてました。槍が得意です」
「レナよ。私もハンスと同じパーティを組んでたの。違約金による奴隷落ちね。戦闘で片足を負傷し、膿んでしまって直して貰うことなくあの部屋に居たわ。双剣使いよ」
「イーリンです。ハンスと同じでパーティで違約金による借金奴隷になりました。ヒーラーでしたが、奴隷の制約でヒールが使えず娼館奴隷になるところでした」
「ヘレンです。ハンスと同じパーティで違約金による借金奴隷になりました。戦闘中の負傷であの部屋にいました。付与魔法が得意です」
「ジャックだ。あんたに隠しても仕方がないから言っておく。俺は、魔族と人間のハーフだ。母親が俺を隠し育ててくれたが、半魔族ってバレて村の奴らに売られた。奴隷として働いている途中で、魔力枯渇症を起こしてあの部屋に入っていた」
何か聞いていると壮絶な過去をお持ちですね。
おばちゃん、泣けてきたよ。
「大丈夫! 私が皆面倒見るからね! 自分の家やと思って過ごしや。後、皆のステータスチェックするからな」
---------STATUS---------
名前:ルーシー
種族:人族[サイエス人]
レベル:3
年齢:18歳
体力:8
魔力:284
筋力:12
防御:11
知能:946
速度:11
運 :21
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:生活魔法6・火魔法1(中級)・暗記82
■ギフト
[全言語能力最適化]
[拡張空間ホーム共有化]
■称号:親孝行・商人の卵[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:キャロル
種族:人族[サイエス人]
レベル:9
年齢:32歳
体力:156
魔力:528
筋力:106
防御:84
知能:528
速度:68
運 :102
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:料理10・裁縫16・家事61・土魔法7・暗算38
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称 号:なし[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:ボブ
種族:人族[サイエス人]
レベル:3
年齢:21歳
体力:31
魔力:3
筋力:7
知能:7
速度:112
運 :3
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:生活魔法1
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:俊足・[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:イスパハン
種族:ドワーフ
レベル:48
年齢:200歳
体力:1400
魔力:801
筋力:5432
知能:187
速度:129
運 :91
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:鍛冶62
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:元王室御用達鍛冶・[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:チルドル
種族:人族[サイエス人]
レベル:1
年齢:10歳
体力:2
魔力:910
筋力:3
知能:253
速度:12
運 :1
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:なし
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:なし[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:マリー
種族:人族[サイエス人]
レベル:7
年齢:25歳
体力:31
魔力:3423
筋力:5
知能:234
速度:12
運 :20
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:料理58・生活魔法∞
■ギフト:生活魔法の達人・なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:なし[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:ジョン
種族:人族[サイエス人]
レベル:15
年齢:29歳
体力:431
魔力:3
筋力:507
知能:72
速度:112
運 :10
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:芝刈り∞・片手斧60
■ギフト:[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:なし[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:ハンス
種族:ドラゴニュート
レベル:79
年齢:122歳
体力:14431
魔力:278
筋力:33507
知能:472
速度:1312
運 :2
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:超再生∞・ドラゴンブレス8・龍化2・剣術35
■ギフト:竜王の加護・[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:なし[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:レナ
種族:人族[サイエス人]
レベル:78
年齢:19歳
体力:20831
魔力:310
筋力:8740
知能:272
速度:112
運 :4
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:生活魔法1・盾75・片手剣35
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:鉄壁・[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:ニック
種族:人族[サイエス人]
レベル:76
年齢:26歳
体力:548
魔力:564
筋力:540
知能:572
速度:512
運 :5
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:生活魔法20・罠10・鍵開け7・抜き足36
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:なし[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:イーリン
種族:人族[サイエス人]
レベル:82
年齢:17歳
体力:148
魔力:34564
筋力:54
知能:572
速度:72
運 :2
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:神聖魔法29
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:聖女候補・[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:ヘレン
種族:ドルイド
レベル:92
年齢:187歳
体力:348
魔力:64564
筋力:254
知能:1725
速度:72
運 :0
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:付与魔法77
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:なし[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:ジャック
種族:半魔人
レベル:9
年齢:12歳
体力:200
魔力:4708
筋力:120
知能:444
速度:191
運 :353
■装備:白シャツ・スラックスパンツ・スリッパ
■スキル:隠蔽3・変化5
■ギフト:なし・[拡張空間ホーム共有化][全言語能力最適化]
■称号:聖女候補・[レンの従魔(制約魔法試行中)]
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]
[■pt統合]
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うん、壮観だね。全員が訳アリかつ、縛りプレイなのね。
というか、運が0の人もいるんだけど!!
よく生きてこれたね。
悪運のイザベラがいるから生きていける世界なんだろうけど、相当生きづらかったんじゃないのかな。
「取敢えず、自己紹介も終わったし仕事の振り分けとかは追々やるのでまずは皆の運を均等にしたいと思います! 留美生、例の奴持ってきて」
出来た作品を皆に渡したら案の定混沌となった。
「何なんこの鬼仕様なチートアイテムは!!?」
やっぱり再度言いたい! 声を大にして言いたい!!
「仕方ないやん。悪運を帳消しにする為に全員の運を統合、再分配する為のアイテムやもん。別にこれを売るつもりは無いんやし」
無茶ぶり振ったお前が悪いと言われ、隣でアンナが金勘定し始めて、私はリアルでOTZになりバンバンと床を叩いた。
何勝手に売り捌こうと考えているのかな!?
こんなもの世の中に出したら、色々ヤバイでしょう。
面倒事しか起きない未来が見える。
「契約カルテットは、どうやって装備すんのよ」
「蛇ちゃんズはチョーカーにしたし、楽白ちゃんとサクラちゃんは体に取り込んでるから大丈夫やで」
「さよか」
色々な意味で大丈夫じゃない。
私の精神が根こそぎそぎ落とされた気分だよ。
このイヤリングを作る事になった元凶のイザベラが、ボソッと呟いた。
「もっと可愛いのが良かった。」
「お前の可愛いは世界の基準からそれてるからあかん」
と留美生はバッサリと言い切った。
バッサリ言い切られたのが不服なのか、イザベラは私を見た。
私は目を反らしながら、言葉を濁しながら傷つけないようにオブラートを何重にも掛けて説明してみた。
「その、な…イザベラ、アンタの趣味は万人受けせえへんのや」
しかし、イザベラには通用しなかった!
「イザベラの趣味は悪いんです。ブチブチ言わずにイヤリング着けなさい。これは貴女の不運を幸運に変えるアイテムなんですよ。本当なら売りたいのに……」
ズバッと躊躇いもなく言えるアンナ凄いわ。
でも、売らないからね!
てか、売れないからね!!
それぞれイヤリングを付けてくれた事で、私の目の前に幸運のポイント再分配しますか? と表示されたので、再分配するを選択したら皆の身体がピカっと一瞬光った。
それだけ? と首を傾げた私と留美生は顔を見合わせた。
ちゃんと再分配されているか全員のステータスを確認したら、
「おぉ!! ちゃんと再分配されてんで! これで悪運666も無くなったわ! ん? 何か新しいスキルが発生しているで!!」
興奮気味にステータスを見せると、留美生も驚いていた。
「金運のスキルがある! 取得金2倍って凄いやん! 留美生よくやった!!」
「本当です。全員に金運スキルが付与されてますよ! これでモンスター狩りまくってお金を貯めましょう!」
明日は狩りの日にしましょうと、アンナのお目が(¥¥)になってる。
アンナ、お金が関わると人が変わってないかい?
「まぁ、うん、何ちゅーか明日は狩りか?」
「せやね! 腕試しってことで依頼を受けるで!!」
おーと気合を入れるアンナさんと私を他所に、留美生はグッタリとソファーに沈んでいた。




