71.ルミナが小汚いおっさんを拾ってきました
露店用の商品を追加発注したら、留美生が逃亡した。
あいつ、帰ってきたら〆てやる。
仕事放棄は許しません!
私だって販路拡大のために、色々作らされているんだから!
アンナの目力には勝てなかった。
お金が絡むと性格変わる人っているけど、アンナも多分その手のタイプだと思われる。
精神疾患を患っているのに、余りの忙しさに病気どころの話じゃなくなってきた。
昼まで寝る事が少なくなって、朝早く起きるサイクルが出来ているのは良い傾向だ。
でも、馬車馬のように働かざる得ない状況に頭を抱える毎日です。
何で会社なんか立ち上げちゃったんだろう。
それも、これも留美生に調合を無理矢理取らされたんだよね。
私は、当初ポーションも化粧品も作る予定なんて無かったからね!
留美生のゴリ押で取得しました。
今では、自作ポーションは当たり前。更に化粧品すら作ってしまう、自分スゲー。
効果が思った以上にあったから、我が家の化粧品は全て私作である。
愚痴っても何の解決にもならないので、アンナと一緒にミニカタログを作って時間を潰していた。
逃亡から数刻して、戻ってきた留美生の後ろに小汚いおっさんが居た。
兎に角臭い! cleaningを数回掛けて、漸く臭いがマシになった。
石鹸とシャンプー&リンスと体を洗う垢すりスポンジを渡して風呂に叩き込んだ。
最低、泡立つまで洗えと厳命してだ。髭剃りも入れてあげたのはプライスレス。
「あんな汚いもん連れて帰ってくるなんて!! 元居た場所に捨てて来い!」
小汚いおっさんを拾ってくるなよ! 犬猫じゃないんだから。ブチブチお説教をしていると、興味深いことが聞けた。
「あのおっさん、とっても面白いスキル取得してるで! 情報操作の上位スキルや! ユニークスキルらしいが、何かしらの条件クリアしたら、うち等でも取得できるかもしれへん。それに面白い情報も持っとった! 三日後にハイエルフが奴隷として出品される闇市があるねん。うちな手伝いさんが欲しかったんよ。ハイエルフは魔力が多いさかい色々と便利に使えるやろ?」
確かに奴隷が居れば作業も効率良くなるし、見目が良かったら売り子にも出来て一石二鳥だ。
人を雇うより、制約で縛った方が色々と安全だからな。
悪くはないか。
留美生の考えは一考の余地ありと判断し、取敢えず男から情報収集だ。
尋問グッズを用意していたら、何か小ざっぱりとしたイケメンが部屋に入ってきた。
「おー姐さん、サッパリしたわ」
「あんた誰?」
警戒心MAXにして不信者を見る目で男を睨んでいたら、留美生が拾ってきた男と判明した。
「あのワウルおっさんやで」
と言われ、ビックリした。
アンナも驚いている。
やっぱり私の感覚は間違っていなかった!
全然別人なんだけど! 無精ひげを剃って、ボサボサの髪を櫛で梳かしたら、こうなるのか。
「マジか!?」
「え、詐欺じゃないですか?」
私達の言葉は丸っと聞こえないふりをした留美生は、ワウルに新品の服を与えている。
「ばっちぃ服は捨てたで。それと予備でこの服あげるから着ろ。身だしなみには注意せえよ。鬼が二人おるからな。んで、今からあの二人に闇市の話とお前の知ってる情報をゲロって貰うからな」
何か物騒な物言いに文句を言いかけたが、何やら面白い単語が私の耳に入った。
闇市か。中々興味深い情報じゃないか。他にも面白い話が聞けそうだ。
表で売れない商品を卸すのには、良いかもしれない。
アンナとひそひそ話していたら、留美生にストップさせられた。
「おーい、お二人さん。そろそろ良えか??」
「あ、闇市の話ですよね」
「ん、スキルの話もやな」
私の前にワウルを置いて、
「そのおっさん、私の奴隷にするから逃がさんといてな!!」
と物騒な事を言って逃げた。
「そんな! 姐さんの下僕になるだけで、奴隷にはなるとは言ってないぞ!」
「あぁん、そのブラブラ切るぞ!? 温情かけて性転換せいへんかっただけでも有難いやろ!? 下僕=奴隷や! という事で、二人共絶対にコイツ逃がさんようにしてな。色々と使うんやから!」
ワウル置いて、さっさと自分のアトリエに引っ込んだ留美生。
お前が、どういう経緯でワウルを下僕にしたのか何となく分かった気がする。
大方ワウルが絡んで、過剰な正当防衛をしたんだろう。
逃げようとしているワウルをウォーターボールで顔面を覆う。
息が出来ずもがく様はゴブリンと余り変りないが、死なれても困るので程々にしてあるが。
「さてと、キリキリと吐いて貰おうじゃないの。留美生との出会いから何から綺麗にゲロって貰うわよ」
情報を根こそぎ頂きました。留美生に逃がすなと言われたので、仕方なく天照大御神の名の元に制約で契約している。
むさ苦しいおっさんを契約するのは嫌だったが、これも金のためと思ってやりましたよ。
ワウルのステータスも、極振りの縛りプレイなスタイルのステータスだった。
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名前:ワウル
種族:人族[サイエス人]
レベル:40
年齢:28歳
体力:50
魔力:39
筋力:34
防御:32
知能:1036
速度:617
幸運:999
■装備:カーキーのニットシャツ・黒のジーンズパンツ・スニーカー
■スキル:情報収集9、俊足15、索敵10、隠蔽30、生活魔法1
■ギフト:韋駄天・[経験値倍化]
■称号:情報通
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■pt統合]
所持金:金貨1枚、銀貨2枚、銅貨11枚、青銅貨9枚
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知能と幸運が著しく高い、次いで速度が速い。それ以外は、カスである。
本当に私のパーティーは偏りがあるよね!!
無理矢理制約させて名前を縛らせてもらった。
拡張空間ホームは使えないように願ったら、恩恵受けられずにいたのにはビックリだ。
逃がしたら、留美生の嫌がらせ飯が待っているので人身御供だ。
許せ、そして強く生きろ。
取敢えず、索敵と隠密はポイントで底上げしておいた。
気になるのが情報収集というスキル。情報操作の上位スキルになるらしい。
只のゴロツキかと思っていたが、ゴロツキはあくまで副業。
本業は何でも屋だと言っていた。
何でも屋と云っても殺しとかはしない。
必要な情報を集めるだけという仕事。
一見簡単そうに見えるが、色々と危険な仕事も混じっているので、常に生と死の隣り合わせな生き方をしてきたそうだ。
おっさんの人生語りなんて話半分で十分だ。
「取敢えず、留美生との馴れ初めと闇市について詳しく話して貰おうやないか」
ニッコリと笑みを浮かべて床にへたり込むワウルの前に、うんこ座りして聞いて上げたら、
「キャァァアアッー」
と女性のような悲鳴を上げた。
キモイ! 思わず手が出てしまったのは条件反射だ。
「サクサク情報をゲロって貰うで」
パシパシッと教鞭を手に持って叩きながらすごんだら、あっさりゲロった。
要らんことまで喋ってくれました。
そのネタは、いつか使う時がくるだろうと思い心の箪笥の中にしまった。




