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社畜OLは、打倒邪神を目指す!  作者: もっけさん
ハルモニア王国王都
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70.食事は争奪戦です

 留美生(るみな)は、拡張空間ホームのアトリエに籠ってノルマを作っている。

 その間、私とアンナは留美生(るみな)の装飾品・装備品・服の販路をどうするか相談していた。

 ギルドに任せっぱなしだと、無名作家なので上手く売れるとは思えない。

 ギルドに卸す分とは別に露店販売もしようという事になった。

 留美生(るみな)には、言ってないが追加で各種50個ほど作って貰おう。

 欲しがっていた魔石をチラつかせれば、渋々だが作るだろう。

 MPポーションもあるし、馬車馬のように働かせるぜ!

「複製で作った化粧品セット(劣)も売り捌きたいんだよね。素材は同じだから(普)と遜色はないけど、やっぱり少し劣るんだよなぁ」

「なら、お試し品という事で格安で提供してみては如何でしょうか? 正規品は高くて買えないけれど、お試し品なら一度試して実感出来れば購買意欲につながると思いますよ。付録付き雑誌と感覚は同じです」

 流石、アンナさん。生粋の商売人は違うね!

 私は、俄か商人だし。

「付録か……、そのアイディア頂きます! 折角だから雑誌も作れば良くない? 雑誌と言っても、カラーコピーした紙を和綴じした物を付けて、商品は商業ギルドで買えますよ~って誘導すれば万事OKだと思うんだけど」

 懐かしいわ。薄い本を手作りしていた時を思い出す。

「良いですね。ただ、本を付けるとなるとお値段が高くなりませんか?」

「そこは、大丈夫。そもそも、元手が0に近いからカラーコピー代が掛かっても問題ないよ。これが見本」

 手渡したのは、昔書いたBL小説。有名な絵師さんと仲良くなり、一度だけ格安でイラストを描いて貰ったものである。

 殆どは文章だが、所々に白黒の美麗な挿絵が入り、表紙はカラーコピーされた某同人誌の王道ジャンルの攻めと受けが怪しく絡み合っている奴だ。

 私が持っている中で一番マシな奴だ。濡れ場は朝チュンで終わらせてあるので、サラッと読めるだろう。

 BLに抵抗がなければ。

「紙に拘らなければ、コピー紙で十分だと思う。それもコピー紙だし」

 無言で食い入るように小説を読んでいるアンナには、私の声は届いてなかった。

 彼女が読み終わるまで暫く待つか。

 待つこと30分。煌々とした顔で読み切ったアンナの姿があった。

「面白い物語でしたわ」

「絵も凄かったでしょう」

「はい、このような本は初めてです」

「それは、同人誌だからね」

「同人誌って何ですか?」

 良く分かっていないアンナの為に、同人誌や腐女子、BLなどの知識を植え付けた。

 後に立派な貴腐人になり、コミケやアニメイトにも足しげく通うようになるとは想像しなかった。

「原作は自宅にあるから暇な時にでも見て良いよ。さっきのは絵だったけど、写真をコピーしたものがコレね」

 留美生(るみな)と私がディゼニーシーのミラココスタで撮った写真をカラーコピーしたものを手渡した。

「これは素晴らしいですね。写真に比べると画質が荒いですが、見本としては分かりやすいかと思います」

 頬を染め若干興奮気味に喋るアンナに、これは売れると確信を持った。

 化粧品(普)・(良)・(極)をスマートフォンで色んな角度から取り、一番出来の良い物をカラーコピーすることにした。

 ホームページの広告で使った私のスッピンと化粧後の写真も載せた。

 煽り文句なども考えて、雑誌名SAKURAに決まった。

 SAKURAは、留美生(るみな)のモチーフが全て桜が入っているからだ。

 創刊と廃刊を一度に迎える記念すべきカタログである。

「後で、留美生(るみな)の作った物も撮って完成させないと」

「そうですね。それよりお腹空きません? ご飯の支度して留美生(るみな)様を待ちませんか?」

「そうだね。籠って結構時間も経っているし、ご飯の用意位はして待ってあげるのも優しさでしょう」

 全部、留美生(るみな)が作ったものなんだけどね。

 盛り付けするだけで終わるのが楽で良い。

 丁度盛り付けが終わった頃に、留美生(るみな)がお腹空いたと戻って来た。

「うぅ~腹減った。今日は何??」

「ごぼうサラダと蟹の味噌汁に鰤の照り焼きです」

 アンナが本日のメニューを朗々と語っている。すっかり地球のご飯に慣れたのね。

契約(テイム)カルテットにご飯先にあげるわ」

 私に一言入れて、留美生(るみな)契約(テイム)カルテットの飯を用意した。

<おーい、契約(テイム)カルテット、ご飯やで!>

 飯の一言にワラワラと出てくる契約(テイム)カルテット。

 それぞれの皿に乾パンとマウスを突っ込こまれていた。

 馬鹿二匹からブーイングの嵐があるのに、留美生(るみな)は完全に無視している。

 全員が揃ったところで、

「「「頂きます」」」

の合図でご飯争奪戦が勃発した。

 洗い物が面倒だから大皿で出したのだけど、取り合いになるとは思わなかった。

「ちょ、そこの部分は私のやで!」

「此処が一番美味しいんや!私が食う!」

 私の箸を押しのけ、鰤の一番美味しい部分を取ろうとする留美生(るみな)との攻防に

、隙を突いたアンナの箸が一番美味しい部分を抉り取った。

「「あぁああああああああ!!アンナ(さん)!!!」」

「食卓は戦争なんです。ムグムグ、美味しい。」

 私達に感化され過ぎじゃないか? 前は、もっと謙虚やったのに。

 今では、堂々とおかずを奪いに来る始末。

 値切りのアンナを改名して大食いアンナにしたらええのに!

 と思っていたら、キッと睨まれました。

 私の考えが読まれたか? いや、念話は使ってないし。女の感って奴なのか!

 負け時と次に美味しい部分を掻っ攫い、ごぼうサラダも食べつくす。

 留美生(るみな)は、しっかり自分の分を確保している。

 おかず争奪戦は、アンナと私の一騎打ちになった。

 負けへんで!

 完食したが、食い足りない。

「もう少し量があっても良いですね。」

 アンナも同じ事を思ったのか、蟹の味噌汁を啜りながら量を増やせと要求している。

「せやな。これだけやと小腹が空くさかい、デザート出すわ」

 デザートを出そうとする私に対し、

「いやいや、滅茶苦茶食べてたやん。作り置きしてるんは三時のおやつ用やで! デザートは作ってません!」

と、留美生(るみな)は大きく両手を交差して×印を作っている。

「「何時食べるの!?今でしょ!」」

 思わず、どこかの某塾講師の物真似が同時に炸裂した。

「食べるならシャーベットな。ベリーとレモン、林檎があるから好きなん食べぇ。うちは腹一杯やからパスするわ」

 一抜け宣言をした留美生(るみな)は放置して、食の販路にもシャーベットを食べながら話に花を咲かせた。

「あ、そうそう。露店販売するから追加で各50個作ってね。マナポーションは、そこにあるからMP切れる前に飲みなよ~」

と言ったら、思いっ切り睨まれた。

 勝手に個数を増やされたから怒っているんだろうな。

「作ってくれたら、欲しがってた魔石(大)1個融通すんで」

「……分かった」

 渋々引き受けてくれた。拡張空間ホームで留美生(るみな)のフォルダを確認すると、納品する品が全て作られていた。

 後50個頑張れよと、心の中でエールを送ったが、届いたかどうかは不明だ。





「二人共おる?」

 拡張空間ホームのアトリエから戻って来た留美生(るみな)が、顔を出した。

「頼まれ物出来たでぇ!!」

 やっとか。随分遅かったなと留美生(るみな)を見るとビクッと肩を震わせている。

 まだ何もしてないのに、ちょっとその反応は失礼じゃないか?

「先ず花令(かれん)のポーチな」

 蝶をモチーフにしたポーチ! 激かわなんですけど!!

留美生(るみな)、ありがとうな! 大事に使うわ♪」

 新しいポーチに化粧セットを詰め込んでいると、留美生(るみな)はアンナにウエストポーチを渡していた。

「アンナさんはこれな」

「ありがとうございます。あの、ポーチは? まだ出来てないのでしょうか?」

 ポーチがないことに、ションボリ顔のアンナ。ギャップ萌えですか?

「ウェストポーチの中を見てみぃ。ちゃんと必要そうなの一式揃えてみたで!」

 留美生(るみな)の聞き捨てならない言葉とドヤ顔がムカつく。

 アンナは、ウェストポーチを弄り始めてから、少ししたら目をキラキラと輝かせていた。

「このウェストポーチ、アイテムボックスになってますね! 凄いです留美生(るみな)様!!」

 中に入っていた私服、戦闘服・アクセサリーなど一式をテーブルの上に出して見分する姿は正しく商人の眼だ。

 それより、私には何で作ってくれないんだ! 妹よ!!

「これ売れますよ!! アイテムボックスのウェストポーチもさることながら、このデザイン性と性能が高いお洒落服!絶対に流行しますって! 是非、量産して売りましょう! アクセサリーも素敵です。匠の技って奴ですね。しかも一つ一つに付与魔法が施されてますよ。レン様、これ是非商品にしませんか?」

「狡いで! 私には普通のウェストポーチやん! アンナだけアイテムボックスにするなんて酷い! てかどうやって作ったん!?」

 商売の前に文句を言わないと気が済まない! 文句を付けたら、留美生(るみな)はうんざりした顔で説明をしてくれた。

「アイテムボックスの理論は、拡張空間ホームを取得する前に何度も魔法陣見てるからそれをウェストポーチの内側に刺繍して発動するようにしてあるん。魔力が無い人には使用できへんよ」

「そんなんやったら、私のも最初から作ってぇーな!!」

「いやいや、ウェストポーチ作った時ってこっちの世界に来て直ぐのことやん。その時点で私はアイテムボックス作るって理論は頭に無かったで!! こっちの世界に慣れるんで精一杯やったわ!!」

と反論され容赦なく頭をぶっ叩かれた。

「痛い」

と呻く私を余所に、アンナは販売の目途などの計算をしだしてカオスな状態になった。

 留美生(るみな)は、契約(テイム)カルテットを引っ掴み拡張空間ホームのアトリエに逃げ込んだ。

 私のウエストポーチにもアイテムボックス付きにして貰う!

 そして、それも商品化決定だ!

「アンナ、カタログに載せる商品が決まったよ! ドレススーツ(上・下)、ドレスチーフ、パンプス、ブローチ、ネックレス、バレッタ、かんざし、バングル! 全て桜がモチーフになっているから、揃えると壮観だと思うので、アンナ身に着けて」

 試作品をアンナに身に着けさせ、バレッタバージョンとかんざしバージョンの2タイプで写真を撮ってみた。

 全体と上半身だけと色んな角度で撮った。

 美人は絵になるね!

 ドレススーツの邪魔にならないウエストポーチが、キュート過ぎる!

 私もああ云うのが欲しかった。

 起きたら絶対作らせてやると息巻いたのだった。


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