６０．ルミナ、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム（神）
一足先にリビングに入った留美生の悲鳴が聞こえてきた、
「嫌ぁああああああああああああ！！！！」
何事かと思ったら、食べ物の空袋や瓶・缶が床に転がっている。
飲んだくれの蛇共は良い感じに出来上がっているし、サクラと楽白は一心不乱にお菓子を食べている。
よく見たら、お取り寄せの芋羊羹じゃないか!!
慌てて冷蔵庫を確認すると、一週間分の食料とお小遣いで買った地ビールと大吟醸幸丸が消えていた。
「ゴラアアアアアアアアアアアアアア！！ この糞蛇ぃ！！」
思わず泥酔している馬鹿蛇二匹を掴み宙吊りにした。
<あー花令が居るぅ～>
<鬼が居るぅ～>
デロンデロンに酔っぱらっている馬鹿二匹は、失礼なことを宣った。飼い主様に何たる暴言。許すまじ！
「何で冷蔵庫を開けられたんだ！？」
吐けと蛇を持つ手に力が入る。
<もうちょっと優しくしてーなぁ。>
<わし等の魅惑のＢｏｄｙが傷付くやないの～>
完全に酔っぱらいの戯言だ。
ダメだ。全然話にならない。
酔ってないサクラを鷲し掴みにし、ギチギチと〆上げた。
<痛っ、痛いですのぉーーーーーーー！！>
と、悲鳴のような念話が聞こえたが知らね。
「どうやって冷蔵庫を開けた！？」
サクラの悲鳴を無視して、鬼の形相でドスを利かせた声でサクラを脅す。
レッツ尋問タイムだ！
サクラも何かを察知したのか怯えて身体を高速プルプルさせていた。
楽白もシャカシャカとお菓子の袋に身を隠している。
そうか、そんなに怖いか。でも、お前らがした事は許されることじゃないんだよ。
人様の飯と酒と菓子を無断で食った罪は重い。重罪だ。
日本人特有の言葉で『飯の恨みは凄まじい』という言葉を進呈しよう。
「あぁ、一週間分のご飯が……しかも奮発した高級チーズやビールとか無くなってるやん！！」
「私だってビール飲みたかったのに！！ 節約って発泡酒しか飲んでへんのよ！ 今日という今日は絶対に許さんからね！ さぁ、キリキリ吐くんや！ 何で冷蔵庫を開けれたん？」
吐けとサクラを握る手に力が入ったが気にしない。痛いと喚かれようとも許さない。
<うぅ、赤白と紅白がルーちゃんの材料使って何でも開けれる物を作ろうって皆で作ったんですぅ～。それでぇ酒盛りするってぇ～>
ブルブルと怯えながら姉を伺うサクラ。
「アトリエ見てくるわ！！」
それの言葉に、留美生は弾かれたようにリビングを飛び出していった。
ほうほう、それは留美生の素材を勝手に使ったのか。
確かに素材は半分使用許可を出していたけど、あくまで留美生に対してであって契約カルテットにではない。
こいつらが作ったチートアイテムは、世に出せない代物になるからだ。
「留美生に渡した素材を勝手に使って、変な物作るんじゃありません！ 大体、お前らが作るとろくなもん作らんやんか。世の中に出せないもん作っても意味あらへんやろうがっ！ 大体あんた等には素材渡してないでしょ！！」
ガミガミとお説教をしていたら、留美生がリビングに戻ってきた。
<素材はルーちゃんのだもん～>
自分は悪くないと、言わんばかりの主張にブチッと切れる。留美生に向かってギンッと睨む。
「留美生、あんたどんな管理をしてるの！？」
杜撰な管理をされていたなら、それこそ素材を全部取り上げなきゃならない。
「ちゃんと管理してたよ。それより素材使用禁止が出てたのに私の素材を使うとは思わないでしょ！？」
「そうだけど実際に使ってるじゃない！アンタの管理の仕方が悪いんじゃないの！？」
言い訳に対し、一刀両断してお前が悪いと断言すると文句を言ってきた。
「管理の仕方はアンタと同じやもん。それやったらアンタの管理の仕方も悪いって事になるで！！」
と言い返したら、思いっきり痛いところを突かれた。確かに、拡張空間ホームは共有化しているから『誰でも使える』ようになっている。
このままだと、また同じことが起きるかもしれない。
自分用フォルダに鍵を掛けられる仕様にした方が良いだろうか。
フォルダ作成が出来るなら、パスワードを付けることも出来るだろう。
全くこいつらは、溜息を吐き食い散らかされ汚されたリビングを眺めていたらグロテスクな手が出てきた。
「何やこれ？」
床に転がっていたグロテスクな手を模した何かを拾い鑑定したら、高性能アホ仕様なアイテムだった。
「山賊の手、これを使えば何でも開ける事が出来る。ってコレが原因かよ！！」
何でもって事は、使い方によっては犯罪も出来ちゃう代物だ。空き巣は勿論、国家中枢の機密情報が眠っているところも苦も無く開けられる。
高々冷蔵庫の中の物を食べたいだけのために、こんな下らない物を作ってしまうなんて、その食い意地の張ったところは一体誰に似たんだい。
留美生から餌以外にお菓子やお酒を貰っていたことを私は知っているんだぞ。
留美生は隠せていると思っているけど、臭いでバレてますから。
「取り合えず、それ没収しといて、原因の二匹が素面になってからカルテットを叱ろうや。そう、地味に嫌な感じでジワジワとお仕置きせな、気ぃ済まん」
留美生の奴、何か私より地味に怒っているわ。
そうか、留美生に似たんだな。食い意地が張っているもんなぁ。
流石に飯抜きとかにはならないと思うけど、一応フォローはしておくか。
「それもそうやけど、あまり過激な事はせんといてな？？」
大丈夫とニヤリと笑う留美生に、私はドン引きした。
いやいや、お前の笑顔は目が笑ってなくて怖いから！
契約カルテットは、いちばん怒らせてはならない相手を怒らしてしまったようだ。
ご愁傷様である。ぶっちゃけ食事関係の決定権は私にはないので、当分蛇共はマウスオンリーになるだろうな。
サクラと楽白は何を与えられるのやら。
不味いものだと思うけど、これも罰だと思って絞られるといい。
二度としないためにも！
翌日、私達ＶＳ契約カルテットの構図で昨日の醜態の言い訳を聞く事にした。
「何でこんな物を作ったん。目的は何や！？」
留美生の問いに対し、思った通りの回答が返って来た。
<わし等もミオンモールって所に行きたかったん。買い物も一緒にしてみたかった！ それやのに連れてってくれへんかったやん>
ブーブーと文句を言う赤白ちゃんに追撃するように紅白ちゃんまでもが、
<せやで！ わし等も一緒に行きたかったのに強制的にお留守番って酷いわ！ 三人して美味しい物を食べてたんやろ！ せやからわし等も美味しい物を飲み食いする権利はあると思うんや！>
とアホな事を宣った。サイエスじゃないんだから、お前ら連れて行ったら人が逃げるし、パニックになるわ。
最悪通報ものの案件だぞ。
「アホちゃうん。そんな道理が通ると思ってんの！？ 人間に化けれるようになってから良いな。アンタ等が使い込んだ素材は、あんた等の食費から補填するからな！ 蛇ちゃんズはマウスのみ！ 楽白ちゃんとサクラは乾パンが素材代完済するまでずっと同じ食事にするからな！甘えたは許さんで！」
<<<嫌（や・ですのぉ～）>>>
「キシャシャーシャー」
四匹が凹む姿に私は少しだけ同情した。
アトリエ荒らされて素材もパチられて、挙句の果てには冷蔵庫のお取り寄せ品まで食べられた留美生が一番怒るわけだわ。
只のオコではなく、今の留美生は激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム（死語）な状態だ。
こうなったら、何が何でも実行する。ご愁傷様。
今回は、私の制裁は止めておこう。これ以上は過剰制裁になるし、彼らもこの件で反省するだろう。
「花令、絶対にカルテットのメロメロＢｏｄｙに誘惑されて許すなよ！ うちは絶対に許さんからな！ お前等完済するまでマウスと乾パンの刑じゃ！ 嗜好品は一切なし。これでもまだ甘い方や！！」
ギッと契約カルテットを睨みつけている留美生に、もう少し減刑してやればという意味も込めて助け舟を出したらトバッチリが来そうな勢いで言い返された。
「留美生、それはちょっと酷くないか？？」
「何が酷いねん！ これでも生易しい方や。絶食の刑でも良えねんで！？ コイツ等、アトリエも片付けせんと食い散らかした挙句、うちらの食事にまで手を付けたんや！ しかも一週間分もな！ 許せへん。絶対にや！」
「花令、アトリエの片付けがあるから戻るけど、ちゃんとコイツ等に言い聞かせておいてな。あと阿保なグッズも仕舞っといて」
そう言い残して、留美生はアトリエに戻った。
留美生の不要な発言を真に受けた契約カルテットが、後日人化を習得して問題を起こすとは、この時は予想もしていなかった。
