59.お買い物Day
アンナは、山田アンナとして日本で活動してもらう事にした。
戸籍? ノン! ちょっと市役所のネットワークに海外経由でハッキングして戸籍作りましたよ。
オタクだからと言って何の特技もない人間ではない。
オタク趣味が高じて色々とパソコンを触っているうちに詳しくなりました。
逆探知できないように足跡も消しているし、逆に辿れたとしてもウイルス感染してアボンになるので問題なし。
役所が困るだけで、私に人的被害はなし。
アンナの戸籍も出来たことだし、大手を振って外に歩けるぜ。
契約カルテットは、勿論お留守番を言い渡したらブーイングの荒らしだった。
魅惑のボディについ同行を許可してしまいそうになった。
留美生が(物理的に)止めてくれなかったら、危なかった。
「ミオンモールで買い物するでぇ!!」
シャルルの財布をガッチリ掴んで、いざ出陣とミオンモールへ突撃した。
まずは、アンナの私服や下着をゲットすることだ。
防具系は留美生が作ってくれるが、流石に私服までは手が回らないだろう。
化粧品セットのボトルとポーション類のボトルを作って貰わないといけないしね!
「最初は下着だよね。花令も下着買う?」
「買う!!」
勿論じゃないか! 下着は大事だよ~。ヨレヨレパンツとか穴の開いたパンツとかゴメンだよ。
運気も下がるし、ただでさえ少ない女子力がマイナスになっちゃうじゃないか!
「じゃあ、アンナさんにお金の使い方も知って貰う為にそれぞれに今日の買い物代金渡すな~」
アンナには15万、私には3万をしか渡してくれなかった。非道だ。横暴だ。あんまりだ。
私が一生懸命働いているのに、何で3万円しか渡してくれないのと文句を言おうとしたら、睨みつけられた。
文句を言ったら絶対金額減らされる。くそっ、言いたくても言えないじゃないか。
「使い方が分からんかったら、私か姉に聞いてくれたら良えで。後、最後にスマホの契約にも行くからね」
いや、それ先に言っておくべきじゃね? という私の突っ込みは無視された。ひどす。
「スマホって何ですか?」
アンナさんの最もな疑問に、
「これ! 使い方は遠くに離れた人に連絡が取れたり、調べものがその場で出来ちゃう優れ物なのだ!」
とドヤ顔でいう留美生は酷く残念な顔をしていた。
スマホの初期設定出来ないくせにドヤ顔とかないわ。せめて初期設定とwi-hiを接続できるようになってから、ドヤ顔をしろ。
「使い方は追々説明するね。色々とデザインや機能が違って来るから好きなのを選べば良いと思うよ」
説明は私がすることになるんだろうなぁ~と思いながら、取敢えずまずは下着を買おうとアパレルショップに突撃したのだった。
お留守番中の契約カルテットが、下らないものを作って冷蔵庫の中を漁っている間、私達3人はショッピングを楽しんでいた。
やっぱり久しぶりの買い物は最高だわ~。予算は3万円だけど。
アンナは、見るもの触るものが全てサイエスとは違い質の良いものだから始終恐縮していた。
だから、アンナにサイエスの通貨と日本の通貨の価値を教えた。
青銅貨1枚=10円
銅貨1枚=100円
銀貨1枚=1000円
金貨1枚=10000円
今回、白金貨は省いた。だって、説明が面倒なんだもの。
私達は金が高騰しているので、金貨が欲しい旨を伝えた。
金貨1枚4.8gだから22,516円になる。
日々変動するので多少の誤差はあるが大体2万円ほどになる。
金貨1枚が、諭吉さん2枚に変わるんだよ!
その事を伝えたら、アンナの目の色が変わった。
うん、私も目の色変えたし留美生もそうだ。
本当、現金だよね。
やっぱり3万円では足りなかったので、留美生に土下座して追加で10万円融通してもらった。
やったね! まあ、会社の業績が良いのと私のモチベーションが下がると生産力も下がると分かっているんだろうね。
本当に姉をよく観察しているよ。
アウトレットモールなので、ブランド品でも50%offで買えてしまうのが良い!
激安なのでついつい、あれこれ買ったら両手に袋でいっぱいになった。
一旦トイレに入り、各自拡張空間ホームの自分専用フォルダに収納することにした。
重たい荷物を持って歩くなんてしたくないもん。
持つのはお財布の入ったビトンのウエストポーチだけで十分だ。
身軽になった私達は、またブラブラとウィンドショッピングを楽しんでいたら馬鹿男に絡まれた。
「彼女~、可愛いね! モデルとか興味ない? 君みたいな子なら芸能界で絶対人気出るよ」
確実にアンナ狙いの男が、モデルと言って勧誘している。
横に私や留美生がいるのに、良い度胸しているじゃねーか。
不機嫌に男を睨みつけると、
「そっちの子達も、一緒にどう? 養成所とかもあるし」
などとフザケタ事を宣った。鑑定してみるとAVのスカウトマンだった。
「えー、本当にぃ。お兄さんにそんな事言って貰えると何か興味出ちゃった。名刺貰えますぅ?」
「ああ、俺は赤塚忠雄って言うんだ。この通り芸能プロダクションのスカウトマンさ」
名刺を見て、留美生に渡す。留美生は、ネットで名刺に書かれた会社とアダルトビデオで検索を掛けたら、出るわ出るわAV情報が。
「芸能界とか言って、何も分かってない女の子を無茶な契約をさせてアダルトビデオに出演させるのが目的なんですよね? うわっ、キモイんですけど」
「そんな事しないよ~」
「はい、ダウト! お兄さん、気付いてないかもしれないけど相当恨み買っているよ。死なないと良いね。その仕事から足洗っても、近い将来悲惨な目に遭うと思うけど。自業自得・因果応報って言葉知っている? 騙された方が悪いとか思っている奴ほど、後で自分が騙されて取返しのつかない事態に陥るんだよ。女の子を食い物にしている糞野郎にはお似合いかもしれないね。精々生き地獄を味わいながら生き延びてね」
薄ら笑いを浮かべながら云うと、ヒッと小さな悲鳴を上げて逃げて行った。
肝の小さい男だ。金玉付いていのるか?
「レン様、さっきの話本当なんですか?」
恐る恐る聞いてくるアンナに、私は小さく肩を竦めて首を横に振った。
「そんなわけないじゃん。アイツやアイツの事務所が、色んな奴らから恨みを買っているなんて予測出来るし。それに鑑定したら、AV事務所のスカウトマンだって分かったからね。後は、ネットで会社名とアダルトビデオで検索掛けたら、情報が出てきたってわけ。それで黒が確定したから脅したの。まあ、この世界では自分の行いが自分に返ってくる。それは、良くも悪くも等しくや。だから因果応報・自業自得っていう諺があんねんで」
「そうなんですか」
「そう、目的はアンナやけど私らはオマケで着いてきたらラッキーみたいな感覚やったんやろうね。目論見は外れて、見えない恐怖に怯えて暮らすがええわ」
ケケケケッと悪どい笑みを浮かべて笑う私に、留美生は冷たい視線を寄越した。
「あんなアホを撃退するだけに時間割かんといて。これからスマホの契約しにいかなあかんねんから」
「悪い悪い。つい、ああ云う輩を見ると潰したくなる性分やねん」
腕時計を見たら結構時間が経っていたので、遅い昼食を取る前にキノコ印の携帯会社へ行かなければ!
契約は、私名義だよねー。アンナの保険証はないし。ハッキングして保険証の発行手続きしないといけないな。
「私の名義で一旦契約して、折を見て名義変更すれば良いよ」
そうそう困ることはないと思うし、基本的に使うのは電話とメール・ネットくらいだもの。殆どオプションは使わない。オプションを付けるなら携帯保証くらいだろう。
「気を取り直してスマホ選びに行って、ご飯食べよう」
アンナが選んだのは、私達と同じディゼニー携帯だった。
最新型なのが、ちょっと羨ましい。
設定等は私がその場でして、充電池を付けて充電しつつ基本操作を教えたらあっという間に使いこなしていた。
流石、知能がレベル3に対し375もあるわけだ。本当天才だよ。
スマホカバーは、私のお宝から好きなのを選ばせてあげることにした。
ダンボール1箱がスマホケースだから、サイエスでは使えない&売れないものNo.1である。
そろそろ減らさないと留美生に怒られる。
拡張空間ホームがあるから、付録やブランドバッグが場所を取ることはないが買う度に小言を言われるので、誰かに売るか上げるくらいならアンナにあげる!
そうじゃないと辛すぎる。
帰ったらスマホケースを選ぼうねと話し合って穏やかな空気だったのだが、帰宅した冷蔵庫が荒らされ床に散らばったお菓子の食べかすやおつまみ、果ては酒瓶の数々が床に転がっていた。
同時に、酒盛りしていた蟒蛇2匹とお菓子を貪っている2匹に特大の雷を落としたのだった。




