53.テイムカルテットが暴走した結果…
世の中はHappy Halloweenとか言ってるんだろうが、私は全然ハッピーじゃない!
留美生からのお迎えコールが夜中に鳴って、迎えに行ったよ。
そしたら、留美生もゴブリンと遭遇していた。
留美生の話を聞くと、ゴブリン討伐(パーティ用)の依頼をソロで受けて、集落を発見したからそのまま襲撃したと言われ、顎が外れた。
ソロで受けるのは、所持している武器の関係で仕方がないにしても、集落を見つけたからって襲撃するなよ。
死んだらどうするんだ。私みたいに身代わり地蔵使わなくて済んで本当に良かった。
「……あんた、本当に馬鹿なん? 百歩譲ってソロで討伐は分かるで、集落襲撃とかアホやん。死にたいの? ねえ?」
「いや、私は殆ど何もしてないというか。ごめん。契約カルテットが、暴走しました」
「何その契約カルテットって」
「赤白ちゃん、紅白ちゃん、サクラちゃん、楽白ちゃんの4匹のことだよ。私も突撃する気はなかったよ。ほんまやで! でもな、こいつら勝手に突撃して率先して敵を倒していくねん。うちより強いもん。チートやろ」
「はあぁ?」
思わずドスの効いた声で返してしまった。いかん、血管ぶち切れそうだ。
クールダウン、クールダウン、OK。落ち着いたぜ。
「この4匹が、暴走して収集付かずに集落襲撃に繋がったと?」
「うん、そう」
あははは、と笑っている留美生の脳天にチョップを入れて大きな溜息を零した。
「私も人の事言えんけどな、無謀な事しなや。命が幾らあっても足りへんで。済んだことやしええけど、この4匹は暫く留美生と一緒に家で留守番させようかなぁ」
「嫌や! 堪忍してーや。毎日毎日毎日エンドレスで同じもん作らされたら、精神がやられる。死ぬから嫌や」
全力で拒否りやがった、チッ。色々作らせようと思ったのに……。
「じゃあ、無謀なことすんな! ちゃんと手綱握っとけ」
「無理! 最近、私の云う事聞かへんもん」
薄い胸を反らして、堂々と宣う妹に蹴りを反射的に入れてしまった。
「ギャッ、何すんのさ!」
「イラっと来て。私も約1万のゴブリン相手にしてたからストレスがね……」
身の危険を感じたのか、ザッと留美生が後退る。
別に何もしないのに、避けられると何かしたくなるじゃないか。
ニヤニヤと近寄ろうとするとギャーッと悲鳴を上げられた。失礼な!
「花令の方が、超無謀な事してるじゃん。何で私だけ怒られるん? めっちゃ理不尽!!」
留美生は、ギャイギャイと文句を言う。
「私は、悪運様が働いたんだよ! 私一人だとエリアボスのエンカウント率が高いんだ!! 好きでこんな体質になったんじゃないやい」
その言葉に、留美生から憐みの眼でみられた。
「うん、ごめん。私が悪かったよ。それで、遭遇したゴブリンは殲滅できたん?」
「した。MP・HPポーションと弾全部使って倒した。身代わり人形と包丁がなかったら死んでた。フルレイドでもおかしくない戦闘なのに、1人で殲滅したんだよ! しかも、ドロップ品が酷かった。めっちゃショボイもん。拡張空間ホームに収納してるから勝手に見て。あ、後何勝手に素材使ってんの! アラクネトロの心臓売るつもりやってんで」
ドロップ品のことで思い出した事を突っ込んだら、留美生は自分じゃないと言い張った。
「私、勝手に使ったりせーへんもん。したら、お前怒るやん」
「だったら、何でこんなんあんねん! 物理攻撃高いしアホでも無限に使える神聖魔法の杖とかチート過ぎるやん。作る前に一言報告しろよ。そして、何でもっと早く教えへんの! 知ってたら杖でゴブリンをタコ殴りして殺せたのに!!」
キーッと発狂してたら、念話が入った。
<それ作ったんわしらやで>
<そうそう、留美生は関係あらへん>
「わしら……? 契約カルテットか!」
赤白ちゃんと紅白ちゃんの突っ込みに、一瞬思考停止しましたYO!
契約カルテットが作ったのか……なるほどな。
そりゃ、幸運だけで生きている奴らが手を出せばチートアイテムくらい作れるだろうよ。
ん? 生産系のスキル持って無かったよね?
「どやって作ったの?」
<うんとね~。楽白ちゃんの糸を固くしてガリガリ削ったの~>
サクラ、お前の説明はざっくり過ぎて良く分からないよ。
「楽白は、糸の強度を変えられるってことで良いのかな?」
楽白に聞くとそうだよと言いたげに前足を上げた。うん、可愛い。
「それを使っておまえらが、加工したと」
<せやで>
<わいらの力作や>
ドヤ顔テラカワユス! でも、激オコな今の私には通じないぞ。
「はい、アウトォォオ! そんなチート性能なもの売れないでしょう。売れないものを作るのは禁止! 後、勝手に素材使うな。売りもんだから使っちゃダメ!」
「あ、もう売った後だわ。いやー、良い値で売れてさ。白金貨150枚だった」
「白金貨って何?」
「さあ? 金貨の上の硬貨らしいよ。金貨100枚が、白金貨1枚になるんだって」
Oh……何てこったい。売った後かよ。絶対目を付けられた。
面倒ごとが起きそうな予感がする。こういう時の勘だけは外れないんだよねぇ。
「どこで売ったの?」
「商業ギルドで買い取って貰った。花令の名前を出したら、花令専属のアンナさんって人が出てきて買い取ってくれたで」
力が抜けてリアルOTLの状態になった。
担当ではあるけど、あくまで化粧品なのに武器までとなったら、本当に面倒臭いじゃないの!
転移魔法覚えて逃亡しよう!
最終手段は自宅に避難すれば良いか。
「おまいら、勝手に素材は使わない! 魔石は特に使っちゃダメ! 売るんだからね」
留美生と契約カルテットからのブーイングが五月蠅かったが無視したら、無視され返されて泣く泣く半分は使ってよいと許可を出したのだった。




