50.理不尽に勝つにはお金と力が必要だ
100万円するミシンを購入させられた腹いせに、留美生にディゼニーで購入した商品の複製を100個作るように命じた。
半分嫌がらせだけど、半分は本気で売りに出す。
地球でコピー品を売ったら逮捕されるが、異世界で売買するのは関係ないもんね!
私は、大手検索サイトYapoo! で広告を出す事にした。
私の職歴が、こんな所で役に立とうとは思いもしなかったわ。
小説家志望で金貯めて専門学校まで行ったけど、結局小説家にはなれず文章を書く仕事をしたくて広告代理店で製作・校正のスタッフとして契約社員していた。
一応、賞は取れなかったけど出版の話はあった。自費出版だけど。
流石に、専門学校通いながら日々の生活費稼いで貯金も満足に出来なかった私は、自費出版すら諦めた。
毒親を見て育ったからね。身近で借金こさえて、給食費すら真面に払えず、日々の食事は給食だけなんてザラじゃなかった。
施設に出戻りして、ガリガリだった身体は幾分ふくよかになったけど、それでも標準体重には程遠かった。
痩せの大食いと言われたこともあったけど、一定以上は太らなかった。
体質なんだろうね。
小さい頃から色々抑制され押さえつけられて生きてきたから、ストレスが堪りに堪って爆発して壊れた。
殆ど壊れかけていたのだけど、完全に壊れてボロボロになって心の病気なんだと言われた。
言われたのは、葬儀の時に泣きもせず無表情で笑っている私に対して親戚が罵った言葉。
本当、笑えた。面白いくらいに笑えた。ケタケタ笑う私達を無理矢理引き摺り出して、式場から追い出した。
体裁を気にする人達だもの。私達は、その時「ああ、やっと縁が切れた」と思った。
何もかも失って残ったのは妹だけで、家族が欲しくて赤白ちゃんと紅白を家に迎えた。
留美生は分からないが、私は人間という生き物自体興味がない。
居ても居なくても良い存在だとさえ思っている。
困っている人がいれば助けはするが、それ以上の感情はない。義務みたいなものだと思っている節がある。
不本意ではあるが、サイエスに行ったことは私の中で転機だった。
赤白ちゃんや紅白ちゃんと話せる事だけは感謝している。
サクラや楽白も加わって賑やかになった。
一応、ご主人様だけど私にとって彼らは家族なのだ。
だから、頑張ろうって気持ちになった。
やる気が出た。
まだ薬を手放すことが出来ないが、少しずつ改善している。
無表情だった顔が、笑顔が増えた。それは、留美生も一緒だ。
怒ったり、笑ったり、驚いたり、泣いたり。
喜怒哀楽が出来るようになってきたのは、悔しいけどあの糞神がくれた切欠だ。
切欠をくれたのは感謝しているが、存在は消す。あんなのが居たら、あいつの気分次第で見知らぬ誰かが誘拐される。それだけは、絶対阻止してやる!
その為にも、スキルやレベルを上げる。
大量に買ったグッズだって、ある意味スキルのレベル上げの一環だ。
私が立ち上げた会社もそうだ。
理不尽なこの世界とサイエスで生き抜く為に必要なのは『お金と力』である。
お金があれば、食べ物が買える。
お金があれば、知識が買える。
お金があれば、服が着れ靴も履ける。
お金があれば、寝るところがある。
力があれば、暴力に屈しない。
力があれば、留美生達を守れる。
力があれば、理不尽な世界を覆すことが出来る。
出来ないことも出来てしまう。
私の生きる世界は、理不尽で満ち溢れている。
黒だと言えば白も黒に変えることが出来る力が欲しい。
だから、私は私なりに考えた。どうやったら、あの邪神に勝って地球で悠々自適に暮らせるのか。
その答えは、サイエスで手に入れたレベルとスキルを活かして商品を作り販売する。
作ることでスキルは伸びる。レベルを上げれば、邪神すら超えられる力が手に入るだろうと。
お祀りしている神様達からの加護もあるし、とことんやってやる!
その為には、軍資金が必要だ。
お金は、時に人を生かしも殺しもする。
それは、サイエスでも一緒。
だから、なおさらお金が重要となる。
そこで、広告で初回から3ヵ月間無料。その後、自動的に定期コースへと変更となる旨の記載をした広告を出した。
一応フリーダイヤルも取得して、携帯へ直転送するように設定しているが、反響が増えるようだったら人を雇う。
その時は起動に乗っている頃だろうし、お試し期間を1ヵ月に減らすけどね。
メールフォームもあるし、後は反応待ちかな。




