43.命大事 お金も大事
留美生達と別れ、1人でセブールの街に戻ろうとしたら途中で遭いました。
Aランクモンスターとの遭遇です。
索敵・隠密で避けてたのに、意味ないですね! 全く!!
鑑定したら、サーベルファングという魔物。見た目は、でっかい白い虎。斑模様があるから完全な白ではない。
戦いたくないでござる。でも、死にたくないでござる。
本当、悪運様様ですよ。あの糞神、絶対このシチュエーションを狙って嗾けたんだ。
原付では逃げ切れそうにないので、足止めに残っていた虫よけの薬を顔面目掛けて散布してやった。
丁度いい感じに目に入ったのか、グゥォォオオウゥと両目を覆って地面にゴロゴロ転がっている。
否、のたうち回っていると言った方が良いのか?
原付から降り、背中の腰に装備していたテーザー銃を脳天にぶっ放す。
白い身体だから、赤いランプが良く見えて狙い安かった。
パンッという音とビリビリビリという電気音がなる。
テーザー銃を左手に持ち替え、左腰に装備していたHK416Cカスタムで両目を狙い、完全にしびれて動きが止まったサーベルファングを追い打ちとばかりに下級魔法ウォーターボールで水責めにて窒息死させた。
綺麗な毛皮と拳(大)の深緑の魔石、金貨22枚がドロップされた。
文明の力って凄いね。高度な文明は魔法だって言葉は、ある意味本当だと思う。
糞神を倒すには、レベル上げも必要なのは分かっているんだけど、命を奪う行為は好きじゃない。
だから索敵と隠密をフル活用しているのに、何故か出会う。
自分よりレベルの低いモンスターなら良いけど、毎回自分よりレベルがかなり高いモンスターに出会うんだが。
1人でいる時のエンカウント率は、洒落にならないくらい多い。
ドロップアイテムを拡張空間ホームに仕舞い、原付に跨り移動を開始する。
走ること数分で、今度はサラマンダーに出会った。
火を吐くトカゲ。竜ではない! 爬虫類は好きだけど、歯向かう奴は許さん。
態とウォーターボールで威嚇して追い払おうとしたのに、生意気にも火を噴きやがったのでサーベルファング同様水責めにしました。
10m超えの水の玉に閉じ込められて窒息死したのを見た時は、ざまぁと思った。
魔力を思いっきり注いで作ったウォーターボールだからね!
下級と侮るなかれ。魔力操作で鼻と口さえ塞げば死あるのみだ。
トカゲの分際で、歯向かってきたのが悪い。
魔力切れの症状で体はだるいし、頭が痛いが後悔はしていない<キリ☆彡>!
手持ちのマナポーションを飲んで、少しだけ頭痛が和らいだ。
このマナポーション、むっちゃ不味い。
昔、生理不順と貧血のために漢方を処方してもらった時に飲んだ薬に似ている。
「くっそ不味い! 渋みとえぐみと苦みのコラボレーションだよ。これ品種改良して、せめて抹茶くらいの苦さと味にしたい」
抹茶でもそのまま飲むと苦いがな!
サラマンダーの皮と牙、爪、心臓と赤い拳(大)の魔石、金貨13枚のドロップ品を回収する。
戻る前にエリアボス並みの敵に何回遭遇するのか考えると、背筋に悪寒が走った。
「索敵と隠密のレベル上げておこう」
索敵7→30、隠密7→30。どちらもスキルレベル30まで上げたったわ!
その分ポイントも使ったけど。
どうせ、留美生達が狩に精を出していると思うので気にしない。
流石にスキルレベルが30まで爆上げされると、高レベルモンスターのエンカウント率も低くなった。
低くなっただけで、エンカウントするんだよ!
本当、悪運様様だねっ!
幸運が良かったよ。あれ、運になっているけど絶対悪運だと思う。
結局、セブールの街に戻るまでに13回の戦闘をした。
数からして不吉だが、マナポーションがすっからかんになったのは言うまでもない。
ヨレヨレの状態でセブールの街に着き、疲労困憊を隠さず薬師ギルドへと駆け込んだ。
相変わらず閑散としている薬師ギルド。数少ない受付嬢に、声を掛けた。
「Cランクのレンです。中級と上級のHP・MPポーションのスクロール貰えますか?」
「中級でしたらご用意は可能ですが、上級になると王都に行く必要があるのとAランクにならないと無理ですよ」
ここで、初めてランクによる弊害が出た!! 本気かよ!
「じゃあ、中級だけで良いんで下さい」
「畏まりました。中級のスクロールを読んでも、調合スキルレベルが低いと中級ポーションは出来ませんのでご注意下さい」
更に衝撃的な事実発覚! 始まりの街で無理矢理ポーション作りした時に、説明してくれよ糞婆……恨むよ。
「……それでも良いんで下さい」
「中級ポーションのスクロールは、それぞれ金貨100枚になります」
Why!? ぼったくりにも程があるだろう!
「それは、どこの薬師ギルドでも同じなんですか?」
「はい」
「Oh……」
絶句したわ。下級ポーションの時は、スクロール代取られなかったけどタダ働きさせられたからね。
「あのー、肉体労働でスクロールの値段を下げて貰う事って可能ですか?」
「それは、どういう意味でしょう?」
「MP・HPポーションをそれぞれ100個ずつ作るので、半額にして下さい」
「……上に確認取ります」
受付嬢のお姉さん、絶句後ギルドマスターに確認という流れになった。
無茶言っている自覚あるけど、中級ポーションごときに金貨100枚は出せない。
魔石を売れば高く売れるだろうけど、留美生が加工するから取っておく。
他の素材を売っても、魔石ほどにはならないだろう。
となると、冒険者稼業だけでは儲からないのだ。
命大事と等しくお金大事!
ケチれるとことはケチります。
始まりの町で出来たんだから、セブールでも出来るはず!
「お待たせしました。確認したところ、半額は無理ですが金貨70枚なら可能との答えが出ました」
うっし! 言ってみるもんだ。
「分かりました。それで良いです。作業中のMP回復用にポーションを飲ませて貰いますけど、それは勿論ただなんですよね?」
「はい」
何でそんな事知っているんだ的な目で見られた。
やっぱり、あれは裏技なんだね。
始まりの町で地獄のポーション作りを体験していて良かったよ、今思うと。
「スクロールの代金は、貯金から引いて下さい」
ギルドカードを渡し、金貨70枚引かれた状態で手元に戻ってきた。
「こちらで作業をお願いします」
通されたのは、大きな作業台と空っぽの空き瓶が入った箱の山だ。
「こちらが、MP・HPの中級ポーションのスクロールになります」
差し出された2枚の紙を流し読みをする。読み終えるとやっぱり綺麗に消えてしまうのが、ファンタジーだ。
「では、約束のポーション各100個を納品お願いします。ポーション(劣)は、数えられませんのでご注意下さい」
厳しいね! ちょっと勿体ないけど、スキルポイント使ってスキルレベル上げて早くポーションを作ってしまおう。
調合2を調合10まで上げた。今日一日で使ったポイントは、約30万ptだ。
スキルレベル上げるだけで、こんなに使うことになるとは思わなかったよ!
腕まくりをし支給されたMPポーションをテーブルの上に置き、ポーション作りに没頭した。
没頭しすぎて時刻は20時を回ってました。
出来たのが以下の通り。
HP中級ポーション(良)×38
HP中級ポーション(普)×114
HP中級ポーション(劣)×21
MP中級ポーション(良)×27
MP中級ポーション(普)×103
MP中級ポーション(劣)×11
魔物除けの薬(特効)×20
魔物除けの薬(良)×150
解毒剤(特効)×15
解毒剤(良)×167
虫よけ(特効)×222
虫よけだけが、ゾロ目になった。作り過ぎた感はあるが、言われた普通以上を100個作ったので良いだろう。
言われた通りそれぞれ100個ずつ納品し、残りは拡張空間ホームのアイテムフォルダにぶち込みました。
ネコババではありません。れっきとした対価です!
ついでに、自作の基礎化粧品も作ってみた。
化粧水(極)×100
化粧水(良)×200
化粧水(普)×300
乳液(極)×100
乳液(良)×200
乳液(普)×300
美容液(極)×100
美容液(良)×200
美容液(普)×300
そう言えば、始まりの町の薬師ギルドの婆がレシピ売れ売れ言ってたな。
う~ん、レシピ売っても良いけど。ここは、留美生と相談して決めよう。
(極)は、瓶の蓋が薔薇の飾りで統一されている。化粧水は透明、乳液は白、美容液は薄ピンクと色付けしているから一目で分かる。ボトルの大きさも化粧水・乳液・美容液の順で小さくなっているから間違える心配もないしね。
(良)は、瓶の蓋がリーフの飾りになっている。(普)は、ただの瓶。なんの細工もなし。
300円ショップと100円ショップを梯子して購入して貰った甲斐があったわ。
これを卸すタイミングも留美生と相談して決めよう。
まずは、納品して帰らないと。留美生達に怒られてしまう。
調合室を出て、受付嬢にポーション(普)をそれぞれ100本納品して急いで宿に戻ったのだった。




