34.商業ギルドで稼ぎます
朝です! 気合を入れてスーツとパンプスでビシッと決めてみました。
お化粧もバッチリですよ。
就活っぽくないように、お洒落可愛めなスーツです。
商談だからね。見た目が第一。化粧品とかも売りたいし。
今日は、お気に入りのビトンの巾着トートバッグです。使い込んでいるので状態は良くないけど、シーンに合わせて使っている。
愛用のブランドバッグです。
蛇ちゃんズとサクラは同じくビトンのショルダーバッグの中にいる。革なので硬いけど強度はあるんだよね。
全身ブランドで固めて、いざ商業ギルドへ出陣と思ったら留美生に出鼻を挫かれた。
「折角来たんだから、町の中見てみたい!!」
「お前、地図持って無いじゃん。絶対憲兵さんのお世話になるよ」
地図買うにはスクロールがいるし、金貨単位での購入になる。
地図の共有化が出来たら一番らくだけど、それは出来るんだろうか? 後から検証してみよう。
「必要事項や現在地を教えるのに。念話使えば良いじゃない」
「最悪道に迷ったらググル先生の地図アプリで検索すれば道案内してくれるからね」
「うぃっす」
確かに、折角念話スキルを取得しているのだから使わないと勿体ない。
私は二つ返事でOKと返した。
町を散策するってことは、市場調査や売れる物などを確認しているのだろう。
私はというと、巾着型のボストンバッグを担いで商業者ギルドの門を叩いた。
「すみません。アンナさん居ますか? 例の商品が入荷したのでお餅しました」
受付のお姉さんに伝えると、内線でゴニョゴニョ。アンナさんも上の職についている人なのかもしれない。
数分後に、アンナさんが現れ前よりも豪華な部屋に通された。完全にVIP待遇ですね。
「約束の砂糖・塩20キロずつです。胡椒は1瓶になります」
「見せてもらいますね」
鑑定で調べているみたいだ。
「これほど良質なものを卸して頂けるなんて光栄です。塩は不足しておりましたので10kgを金貨30枚、砂糖は貴重なのでこちらも10kgで金貨53枚、胡椒は金貨62枚で合計金貨198枚になります。大口だと白金貨に替えることも出来ますが、如何なさいますか?」
上場の売上だ。大金を持ち歩くと、ゴロツキに絡まれるので預金できないかと聞いてみた。
「金貨180枚預金して、残り18枚は手元に残します。貯金することで何かメリットはありますか?」
「年会費が1割ほど安くなります。レン様のように仲介なしで良い商品をとなると、買取費用も抑えられてギルドとしては満足です」
それをメリットとして売り出しているので、実質元は大幅に取れているので目先の良くにとらわれるのは商売人としてアウトだ。
値崩れがしない程度に販売しつつ、妹に書かせた料理レシピを用意してもらうのも有かもしれない。
正直、サイエスのご飯って不味いんだよね。
「後、試作品でまだ売れるか試してないんですが基礎化粧品と石鹸を作りまして。そちらも売れるか相談に乗っていただけますか?」
「基礎化粧品とは何でしょうか?」
想像がつかないのか、頭に? マークを乱舞させている。
私も、初めて就職することが決まった時に施設の先生から化粧道具一式餞別として渡されたわ。
「美を追求した物です」
自作化粧水・乳液・100円ショップの美容液、固形石鹸と泡立てネットをアイテムボックスか取出した。
瓶は、留美生が拘ったお洒落な小瓶に詰められている。
「まずは、このクレンジングオイルで化粧を落とします。あまりゴシゴシ擦らなくて大丈夫です。撫でるように気になる部分をマッサージしてみて下さい」
クレンジングオイルが全体にいきわたり、人肌ほどの温かさになると水を少しずつ加えてマッサージ。
「マッサージすること5分で顔全体が白っぽくなってきたら不要なものが取れている証ですよ」
アンナさんは、小鼻と目元が気になるみたい。
「そのまま水かぬるま湯で流して下さい。流し終わったら、このネットで石鹸を泡立てます」
ふわふわの泡が出来た。きょーじ屋で作られたきめ細やかな泡立つネットらしい。
普通の石鹸でも綺麗に泡立ってくれてホッとしたよ。
「顔をマッサージするように泡を塗りたくります。この毛穴ブラシで軽く全体をくるくるして、気になる部分は念入りにしてみて下さい。後は水で流すだけ」
ザバザバと顔に水を被るように泡を落としていく。
泡が残りやすい部分は、撫でるように落とすのがコツだ。
「洗いあがりが、こんなにスッキリするとは思わなかったわ。それに良い香りだし、肌も突っ張らない」
テンションが上がっているのか、商品を解説し始めた! でもね、アンナさん。まだあります。
「洗顔後に付けるのが、この化粧水・乳液・美容液です! 化粧水は金貨1枚分くらいの大きさを5~6回に分けて顔に浸透させるように塗ります。パチパチとパッティングするのも良いですよ。乳液は顔全体に、美容液は気になる部分に塗り込むと効果的ですよ」
実演販売をしてみると、徐々に食いつきが凄くなってきた。
美に対する執着は、世界を超えても県債のようだ。
「これだけの物をそろえるとなると、相当お金がかかりそうですね。貴族中心に販売されるんですか?」
「いえ、一般人を中心にします。調合スキルを持ってますので、基礎化粧品を作るのは材料さえあれば簡単です。入れ物が高いので多少値ははりますが、化粧水銀貨8枚・乳液金貨1枚・美容液金貨1枚と銀貨5枚でどうでしょうか。使い終わったボトルを持ち込みされるなら。その分を1割引きしようかと考えています。貴族様用には、入れ物が凝った作りになるのと中身もワンランク上の物になりますので、化粧水金貨1枚・乳液金貨2枚・美容液金貨3枚を予定しています。石鹸は1つ銀貨1枚です。花の香を楽しみたい方は、専用の石鹸があるので1つ銀貨3枚でと考えています」
貴族用の装飾品の箱は、留美生に作らせれば良いか。
「この石鹸でも銀貨1枚はするのに!! 安くないですか?」
取り出されたサイセス産石鹸(劣)を出されて、石鹸の認識をまず変えたい! と切に思った。
「良い品は万人の手に渡ってこそ、利益が上がります。1人の貴族よりも1000人の一般人の方がお金儲けしやすいのです。商品ですみ分けはさせて頂きますが」
貴族に1個売っても、一般人に100個打った方が利益が上がる。
経済は一般人で回っていると言っても過言ではない。
「これらは癖がありますので、宜しければアンナさんが使ってみて商品化しても問題ないと思ったら売り出しましょう。後、髪を美しくする洗髪料と髪のを整えるコンディショナーがあります。シャンプーと言いまして、これをサクランボ大の大きさを出して髪を洗って下さい。汚れが酷い時は泡立たないので、泡立つまで洗って下さい。その後、軽く髪の水分を切ってコンディショナーを塗ります。5分ほど放置して洗い流して下さい。そうすれば、美髪が手に入りますよ。流石にシャンプーとコンディショナーの実演は出来ないので、サンプルとして1カ月ほど持つ容器に入れたボトルを渡しますね」
「美髪……良いんですか?」
基礎化粧品でうっとりしていたので、更に美髪が手に入るとなると食いつきが違う。
「ええ、是非使って感想を聞かせて下さいね」
「ありがとう御座います」
ガシッと両手を掴まれて凄く感謝された。基礎化粧品が浸透したら100円ショップのコスメを提案してみよう。
「あ、後これ宜しければ使って下さい」
一つは大きなトラベルポーチ。もう一つは化粧品などを入れるポーチだ。どちらもマチがあって大容量で使いやすい。
留美生に雑誌の付録を処分するように言われていたので、コネを作るためにも渡してみたら、ポーチに興味を持たれた。
「凄く可愛いですね、見たことのない布地です。縫製もしっかりしてますし。なによりこの金具を引くと開閉ができるなんて画期的です! これは、特許申請しましょう」
薬師ギルドの婆に渡した時と似た反応が返ってきた。それよりも熱意を感じるのは気のせいと思いたい。
「特許のことは分からないのでお願いしても良いですか?」
「はい! もし予備があるならサンプルとして貰っても良いですか?」
ポーチは腐るほどあるので、キャラクターが描かれたものを渡したら、可愛いと叫ばれた。
アンナさん、出来るバリキャリ風だけど可愛い物好きなのかもしれない。
「化粧水などはひと月分あるので試しに使ってみて下さい」
「ありがとう御座います。良い商談を」
商談がやっと終わった! と思ったら、何故か留美生が商業ギルドに来ていた。
受付でエリーゼさんの紹介だと言っているが、紹介状らしいものはないので対応に困っているようだ。
「アンナさん、あそこにいるの私の妹なんですけど誰かに紹介されてここに来たみたいです」
「レン様の妹さんですか。少し、お話を伺って参りますね」
アンナは、受付で揉めている二人のところに割り込んでいった。
そして、留美生を連れて私のところに戻ってきた。
「エリーゼ様からの紹介と仰られているのですが、紹介状などはお持ちではないとのことで対応に困っているんです」
「妹よ、そのエリーゼ様って人の紹介で来たなら紹介状の一つくらい貰っておきなよ」
「名前を言えば分かると言われたんだよ」
困った顔で答える妹に、嘘はないと判断した。
「何が切欠で紹介の話になったのさ」
「街で美味しいって言われているカフェに入って試作品広げてたら人が集まってきてさ。その時に助けて貰ったの」
装飾品も作っていたのかな?
「アンナさん、妹の作品も見て貰えませんか?」
「レン様の頼みであれば」
快く承諾してくれてありがとう!! 先程のVIP室に逆戻りして、留美生に試作品とやらを出すように言った。
出るわ出るわ試作品の数々。以前狩った素材も使われているじゃないか!
こいつ、素材をぱちっていたな!!
「これは、匠の域ですね。どれも美しく目移りしそうですね」
女性向けを意識したアクセサリーは、売れると確信し売り込みをしてみた。
「どの作品にも刻印が押されていますので一点ものになります。高レベルのモンスターの素材を使っているので、販売するとなると富裕層がターゲットになると思います」
「無名なので、高額では売れないでしょう。ですので、個数限定で一般人に販売し話題作りをしてから、指名依頼という形でオリジナルのアクセサリーを受注するのが良いかと思います」
「まずは、ギルドの受付嬢の皆さんから反応を見たいと思います。今回限りということで、格安で販売しますので宣伝お願いします。これならどうでしょうか?」
「少し、こちらを持って行っても良いですか。相談してきます」
留美生作のアクセサリーが受付カウンターにいる受付嬢に見せている。
キャーキャーいう声が聞こえる。反応は良い感じだ。
「留美生、最低どれくらいで売りたいの?」
「金貨1枚かな。損して元取れって言うしね」
「了解!」
戻ってきたアンナさんは、受付嬢の了解も取り付けたということで金貨1枚均一で52個のアクセサリーを売り捌き、その後ジワジワとアクセサリー作家『留美生』の名前がサイエス内に広がっていった。




