３０．調味料は金のなる木です
アンナさんに通された応接室のテーブルに塩・胡椒・砂糖の入った瓶を並べて置く。
アンナさんは、誰かを呼びに言ったようだ。
待つこと１０分、小太りのおっさんと一緒に戻ってきた。
「お待たせ致しました。マスター、こちらがレン様です。レン様、この方は当ギルドのギルドマスター・ウォーレンです」
「ウォーレン・キースと申します。今日は、塩・胡椒・砂糖の販売をされたいと伺いました。間違いありませんか？」
「はい。こちらになります」
テーブルに置かれた品を見て、大きく目を見開いている。
「手に取っても？」
「はい、構いません」
耳かきくらいの小さなスプーンで中身を掬い、小皿の上に乗せた。
指に付けて味を確かめて、感動したと言わんばかりに歓声を上げた。
「なんて素晴らしい！ 雑味が一切ない。しかも、どれも上質だ。特に、この胡椒は手が込んでいるのか、サラサラしている」
あらびき胡椒じゃないからね。塩も砂糖も地球産です。全部業務用スーパーで購入しました。瓶は１００円ショップだけど。
「この瓶も素晴らしい。これほどの透明度となると相当お高いのでしょう。是非、当ギルドで購入させて頂きたい。幾らぐらい用意出来ますか？」
「瓶付きなら１０本用意出来ますが、瓶ではなく袋となるとお日にちを頂ければ塩と砂糖は１０キロを２袋用意可能です。胡椒は、これくらいの壺で１個ですね」
両手で〇を作り、直径１０センチくらいの壺になると言った。
「そうですか。そちらも当ギルドで購入させて頂きたい」
「分かりました」
「値段ですが、こちらの瓶に入っている物ですが瓶代も含めてた値段で全部で金貨８枚で如何でしょう？」
元値が６４２円なので、８万円に化けるとは驚きだ。
私が無言でいると、
「むむっ……で、では金貨１０枚で」
値段が吊り上がった！
「その瓶はシンプルですが、透明度も高いのです。良質な胡椒ですので、瓶代込みなら金貨１２枚くらいでないと」
吹っ掛けてみたら、渋い顔をされたので、美味しい餌をぶら下げてみる。
「塩・砂糖・胡椒は、優先的にセブールの商業ギルドに卸します。如何でしょう？」
「分かりました！ では、金貨１２枚で買い取りましょう」
小瓶３つが金貨１３枚って凄いね！ まだ、在庫あるけど。様子を見ながら吐き出そう。
「して、この入手先はどちらになりますかな？」
「……商人に入手先を聞くのは野暮ですよ」
ニッコリと営業スマイルで一掃した。だって、地球の業務用スーパーで買った物なんて言えないもの。
「そうでした。仕入れ先を聞くなど、商人の命のようなもの。失礼しました。塩と砂糖を１０キロ２袋と胡椒を１瓶追加で注文したい」
「分かりました。２・３日お時間下さい。値段は、塩１０キロで金貨２５枚・砂糖１０キロで金貨３５枚・胡椒１瓶金貨６０枚で如何でしょう」
「むむむっ……」
ウォーレンさんの頭の中でそろばんが弾かれている音が聞こえてくる。
「本来、仲介が入っているのでもっと掛かるんですが大口で買って頂けるなら仲介料分を抜いた額で販売しますよ」
今、必死に利益計算しているんだろうな。
ダメ押しの一言を添えたら、即決した。
「買いましょう！」
「では、用意出来次第お伺いしますね」
「アンナを通して貰えれば、その場で買い取りますので宜しくお願いします」
「レン様専属になりますので、以後宜しくお願いします。珍しいお品などありましたら、そちらも買取致しますので。是非！」
何かＶＩＰ扱いされてる？ アンナさんが、担当なら話しやすいし花令特製基礎化粧品も売れるかもしれない。
「今後とも宜しくお願いします。では、後日改めて」
鞄を手に取り、商業ギルドを後にした。
丁度その頃、何故か留美生が単独でサイエスに来ており、セブールの近くにいるとは予想もしていなかった。
所持金：金貨８０枚・銀貨４２９枚・銅貨１４０８枚・青銅貨１８６２枚
冒険者ギルド預金：金貨１４枚・銀貨９枚・青銅貨６枚
