2.ステータス確認だ
「何はともあれ、自称神が付けてくれた特典が本当か確かめないとね。MMORPGを模倣して作られた世界と言ってたから、ステータスオープン」
ステータスオープンと唱えたら、透明なパネルに自分のステータスらしきものが現れた。
---------STATUS---------
名前:未設定(山田花令)
種族:人族/異世界人
レベル:1
年齢:35歳
体力:10/10
魔力:8/8
筋力:3
知能:5
速度:2
運 :300
■スキル:契約(赤白・紅白)
■ギフト
全言語能力最適化
アイテムボックス
鑑定
経験値倍化
■称号:なし
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
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「……この世界の標準平均がどれくらいなのか分からないけど、日本の神様の加護が付いているのが一番の驚きだわ。これって八坂神社の主神だよねぇ」
信仰している神様が勢ぞろい。日本の神様は基本的に荒神だからなぁ。
私が手を出さなくても、拉致したって日本の神様激オコして奴をボコボコにしてくれたら良いのに。
須佐之男命は武神、その妻である櫛稲田姫命は豊穣神だ。加護があるなら、ある程度補正が効くかもしれない。
アイテムボックスには、私が地球で購入した物が入っていた。勿論、自宅の中古一軒家もだ。
パネルにある自宅を押すと見慣れたドアが現れた。
「えっと、鍵…鍵…」
鍵を取り出し、鍵穴に差し込むとまさしく自宅だった。
「ただいまー」
誰も居ないかなと思って一人呟くように中に入ったら、ドタバタと階段を駆け下りる音がした。
「花令!! いきなり居なくなるから心配したよ! あの日一体どこに居たのよぉぉおお!」
金切り声で喚く妹が抱き着いてきた。背中がエビ反りになって腰が痛い。
おばちゃんには、この体制はきついんだよ。
「落ち着け妹よ。取り敢えず、上がらせてくれ。茶入れて話そうや」
ポンポンと妹の背中を叩き、ちょっと強引に引っぺがしてリビングへ促した。
お茶とお茶請けを用意し、本題を切り出した。
「姉ちゃん、異世界の自称神様に飛び込み自殺した男の子と間違われ召喚されサイエスって世界に拉致されてさ。某MMORPGを模倣して作られた世界でその自称神様を楽しませる事になった。自称神様曰く地球に戻すことは出来ないんだと」
「……心療内科じゃなく精神科予約しようか?」
第一声がそれか、妹よ。まあ、私も逆の立場だったら同じことを言うかもしれない。
はぁ、とため息を大きく吐き自分のステータスを妹に見せた。
「見える?」
「見える。ゲームだね。てか、何ちゃっかりペットの蛇を契約してんの!! それに地球に戻れないって言っておきながら戻ってるじゃん。今、家にいるのが証拠だよね」
何言っているんだコイツは? みたいな目で見るのは止めて。心が抉られる。
「自称神様に地球で私の私物が使えるようにして貰った時に、家の所有権は半分私のだから、地球に戻れると思ったのよ。予想は大当たりだったわ。セッちゃんとコウちゃんが、契約されたのは想定外だから。玄関はサイエスに繋がっているから、裏口や窓からなら地球と繋がっているんじゃないかな」
裏口を開けると、見慣れた近所がそこにあった。私の予想は正しかった。
「これからどうするの?」
「取り敢えず、自称神様との約束通りサイエスで活動するよ。生活拠点は基本的に自宅だけどね。まず、1つ町を探す。1つ、異世界の物を仕入れて販売し生計を立てる。日常品や向こうで扱う商品を仕入れる必要もあるし、何より自称神様をぶっ殺す」
「物騒だね。通院とかどうするの?」
「今まで通り、裏口から出て通院する」
「自称神様もここまで想像していなかっただろうね」
「本当にね。まずは、地道にレベル上げと金策かな」
台所に行って万能包丁を片手に、玄関の扉を開けた。
「じゃあ、行ってくるわ。夜になったら戻るから夕飯の支度宜しく」
「あ、うん……いってらっしゃい」
玄関が草原になっているのに、気もそぞろな妹を放置し私は万能包丁を片手に異世界サイエスに足を踏み出した。
あの傲慢で無邪気な自称神様を殺すために、私は強くなる。ついでにお金も稼ぐぞとその時は思っていたのだった。