26.城塞都市セブール
索敵・隠密を発動させてサイエスに戻ったら、まだ日の出が出始めたばかりだった。
活動しているのは、魔物達くらいなので好都合だ。
忘れ物が無いか鞄を開けたら、居た! 置いてきたはずの蛇ちゃんズが!!
「ちょっ、お前らなんで居るんだYO!」
<そんなん決まってるやん。1人で楽しいことするなんて許さんでぇ>
赤白ちゃん、その言い草はなくね? 命がけで戦っているんだよ。遊びに行っているんじゃないんだよ。
<うちは、美味しいもん食べたい>
紅白ちゃんは、ぶれないね! そういうところ大好きだよ。でもね、魔物を食べてお腹壊したり吐き戻ししたりしたらどうすんの!
そんな私の心の声など、二匹には通じない。
「今すぐ送り返したいけど、時間がないからお前ら絶対鞄から出ないでね」
と、念押しした。後で、留美生にメールしておこう。
索敵で敵以外誰も居ないのを確認して原付をアイテムボックスから取出した。
夜が完全に明けて、他の冒険者が活動始めるまでに少しでもセブールの近くまで移動したい。
どうせ魔物はすべからく、時速50キロでひき殺されてドロップされ回収されるのだから問題なし!
原付に跨り、エンジン全開で森の中を走った。
ひき殺しては、原付を止めてドロップされたアイテムを回収すること数十回。魔物と出会うエンカウント率高くありませんか?
今日ドロップと一緒に落としたお金が、銀貨275枚・銅貨1027枚・青銅貨1211枚だ。やっぱり悪運様様の効果なんだろうか?
なんだか、某RPGに呪いともいえる魔物ホイホイのアイテムを彷彿させる。
原付を走らせること2時間弱、ようやくセブールの街が見えてきた。
その頃には、完全に日が昇っている。遠くからボーンっという鐘が聞こえたので丁度6時になった頃だろう。
腕時計でも6時を指しているので、間違いはない。
原付から降り、アイテムボックスに収納する。
徒歩で行くとなると、目測で1時間弱といった所だろうか。
【メールだよ♪ メールだよ♪】
ミッキーの声音がメールの着信音に設定していたから、直ぐにスマートフォンをタップしてメールの中身を確認した。
必要なものは無いか、だって。包丁サイズのタガーベルトを頼んでおいた。蛇ちゃんズが、サイエスに来ていることも報告しておく。宿を取ったら、一度電話した方が良いかな?
黒のジーパンに白のカッターシャツ、黒のフード付きジャケットとスニーカーといういで立ち。
旅人を装うポンチョを羽織りたかったが、悲しいかなゴスロリしかないので留美生に却下された。
最初にお気に入りのコートを汚されたからなんだろうな。
今は、生活魔法を取得しているからcleaningで汚れが綺麗に落ちるから問題ないのに。ケチだよね!
動きを阻害させないよう、右太ももにHK416Cカスタム、背中腰辺りにテーザー銃を装備。ベルトは、愛用サイトママゾンで購入したよ!
そう言えば、スマートフォンでネットも観れるらしいのでネタ半分で検索エンジンに『サイエス セブール』と出したら出てきた。
ウィキ先生に載ってました! でも、いつも表示されるウィキ先生のレイアウトとは若干違う。左上にパズルの球体(未完成)が表示されるのだが、サイエスの世界地図が表示されていた。
画面をスクロールすると、セブールの歴史や領主の名前など情報が多すぎて目が滑る。
もしやと思い、地図アプリを立ち上げてサイエス セブールと入力すると、移動距離と地図が表示された。車なら15分ほどらしい。
徒歩を選んでみたら1時間くらいと出た。後、少しか。
う~ん、歩いていて疲れたし原付出したいけどオーバーテクノロジーだから無理。やっぱり、ここは無難に自転車にしておこう。
聞かれたら、妹に作って貰ったと言い張れば良いか。
鍛冶と細工スキル持っているし、絶対あっちで何か作っているんじゃないかな。
この時、留美生がドロップアイテムをくすねてアクセサリーを作って問題を起こしているとは知らなかった。
魔物除けの薬を散布し、自転車に跨りセブールの門前近くまで走った。
30分ほどで着いた。良い運動になったわ。アイテムボックスに自転車を収納して、そこから徒歩10分ほどで門に着いた。時短大事!
「すみません。街に入りたいんですけど」
「何用で街に来た」
ありゃ? 怪しまれている?? ギルドカードを提示して、
「始まりの町の冒険者ギルドマスターの紹介で昇級試験を受けに来ました」
と答えたら紹介状の提示を求められた。解せぬ。
逆らうのも得なしと判断し、素直に紹介状を渡した。
中身を検められ、滞在税銀貨5枚を請求された。事前に情報収集して良かった。
銀貨5枚を渡し、街の中に入る。この街の詳細な地図はないので、スマートフォンのググール先生頼りだ。
インターネットで『サイエス セブール 宿』で検索したら、何件かヒットした。
ちゃんと★で評価されている。コメントも載っているのには思わず( ゜Д゜)な顔をしてしまった。
インターネットとかそういうものはないから、恐らく利用した人達の感想が呟かれたのをコメントとして認識して評価されているんじゃなかろうか。
★が一番多いところに行ってみた。ミミルという宿屋だ。
門から歩いて1時間。結構歩いたと思う。
街というだけあって、かなり大きい。移動も困難だ。バスみたいに定期便の辻車とかないのかな?絶対儲かるのに。
ヒイヒイ言いながら目的地の宿に辿り着いた。
「すみません。素泊まりで1週間お願いします」
「素泊まり一週間なら金貨4枚と銀貨2枚だよ」
始まりの町より一日の宿泊費が銀貨1枚多い。やっぱり都会の宿は高いんだな。
「従魔も居ますが大丈夫ですか?」
「従魔? 見たところ居ないように見えるけど?」
対応してくれているおばちゃんは、首を傾げている。鞄の中にいるから見えるわけないものね。
「この子達です」
「スライムとスネークか。暴れなければ一緒の部屋で過ごして良いよ。従魔の宿泊費は金貨2枚と銀貨1枚だ」
私の分と合わせると金貨6枚と銀貨3枚になる。途中でモンスター狩りまくって良かった。
金貨6枚と銀貨3枚渡して、部屋の鍵を受け取った。
当てがわれた部屋に入り、内鍵を閉めて硬いベッドに腰を下ろし一息ついた。




