25.一時帰宅中です
原付での移動は楽だわ。セブールから2番目に近い村が、目と鼻の先にある。
と言っても、徒歩で移動すれば2時間程度かかるが。
「今日は、自宅に戻るか? それとも2時間歩いて近隣の村で宿を取るか、どちらが良い?」
「う~ん、宿で寝たい気もするけど時差の確認が終わってないから自宅へ戻る」
「了解。じゃあ、スクーター仕舞うから降りて」
留美生を電動スクーターから降ろして、原付と一緒にアイテムボックスにしまう。
「赤白ちゃん、紅白ちゃん、サクラいるね?」
赤白と紅白を虫かごに入れて、サクラはショルダーバッグの中に入れて、周囲を確認して良しと自宅を出した。
玄関だけが宙に浮いている状態に妹大興奮! ちょっとは落ち着きを見せてくれ。
「誰かに見られたら面倒な事になるんだから、さっさと入って」
留美奈の背中を押し、ズベッと玄関ですっ転んでいる。
それを無視して、私も中に入り施錠してリビングに向かった。
その間、留美生の背中を踏みつけて行ったのは態とではない。
決して態とではない! 大事なことなので2回言いました。
「いつまで寝転がっているつもり。さっさと起きてリビングに来なよ」
リビングに置いてある蛇ちゃんズゲージの中に、赤白ちゃんと紅白ちゃんを入れた。
サクラはテーブルの上でゴロゴロしている。
ひき殺してドロップしたアイテムを整理していると、恨みがましい視線が背中に突き刺さった。
「妹を踏みつけて行くなんて酷い! 暴力反対だ」
「退去勧告はしたのに居座ったお前が悪い。今、アイテムの整理しているんだから邪魔するな」
「それも大事だけど、時差確認の方が重要じゃない?」
そう留美奈に指摘され、そうだったと腕時計を確認する。
サイエスで過ごした時間は丁度1日半だ。TVを付けてニュースを見ていると、時間差が7時間だ。
契約されたものは、すべからく私と同じ時間で生きることになるようだ。
「留美生達も私と同じ時間差になっているよ。サイエスで1時間過ごせば、こっちでは約3時間過ごしたことになるから、これで受診をすっぽかす事もなくなるし、用事が入っているなら前日に帰ることも出来るね」
時間管理は面倒くさいけど、地球とサイエスを行き来き出来ること自体がイレギュラーなのだ。これくらいのハンデは仕方がない。
「あ、向こうでスマホ使えたよ。メールもネットも出来た」
「本気か! 最初にスマホ渡された時に何で使わなかったんだ、私!」
ガッデムッと頭を抱えてのたうち回る私に対し、何やっているんだお前的な視線がグサグサと突き刺さる。
サクラに至っては、私の謎の行動が踊りに見えたらしく身体を上下に伸縮させてリズミカルに踊っていた。
「本当、そういうところは抜けているよね」
ぐはっ! 追い打ちを兼ねないでくれ、妹よ。
私の心のHPは、もうマイナスになりそうだ。
「誰だって凡ミスはあるもん。いきなり異世界に飛ばされて、レアモンスターのエンカウント率が高くって、それどころじゃなかったんだい」
「はいはい、言い訳ワロス」
絶対どこかで復讐してやる!私は、そう心に誓った。
「明日は、どうする? 一緒に行くの?」
セブールも原付で行けば目と鼻の先にある。 数時間で着くだろう。
セブールを留美生連れて入れるとなると、身分証を作らないといけないから面倒臭い。
冒険者ギルド・商業ギルドに登録するだろうな。細工師のスキルを使ってアクセサリー作る気満々みたいだし。私も塩とか胡椒を卸したい。
「一週間も家を空けていたから、明日は蛇ちゃんズと一緒に残るわ」
「私は、原付でセブールまで行って用事済ませてくる。多分、2~3週間は空けることになると思うよ」
用事が1日で済んでくれれば良いが、多分そう簡単にはいかないだろうな。
だって悪運様様だもの。絶対トラブルに巻き込まれると思うんだよね。
「用事が長引きそうならメールするから」
「電話も試してみて! 電話チャットならリアルタイムで状況確認できるし」
無茶な注文来たぁ! サイエスでは、スマートフォンはオーバーテクノロジーなんだよ。
魔法道具と言い張れば済むかもしれないけど、変な奴に目をつけられたらどうすんの!?
「……誰も居ないところで電話してみる」
「ええーっ」
非難の声が上がったが気にしない!
面倒ごとを持ち込んでいるんだから、これ以上拡散させるのはゴメンだ。
「じゃあ、電話もメールもなしで」
「分かったよ。誰も居ないところから電話して。私からの電話はOK?」
「即留守電に切り替わるように設定するからOKだよ。着歴見て連絡するわ」
「了解」
やっと納得したのか、ふんふんと鼻歌混じりにサクラをムニムニしている。
本当、自由な奴だ。その図太さを分けて欲しいものだ。
現在の所持金:金貨82枚・銀貨178枚・銅貨385枚・青銅貨655枚
※ギルドに預けている分は除く




