20.妹をテイムさせられました
「ふぁっあ~、良く寝た。やっぱり自室で寝るのが一番だと実感したわ」
軽く背伸びをして、ベッドから降りる。
クローゼットの中をごそごそ物色し、ミニクロのカーキーのカットシャツに黒のスウェットパンツ、ミッキーのソックスに決めた!
枕元でプープー寝息を立てているサクラを起こし、肩に乗せて洗面場へ向かう。
ミネルヴァマウスことミニーをモチーフとした赤地に白の水玉が可愛いヘアバンを頭に装着して早速洗顔だ!
やっぱり冷水で顔を洗わないと起きた気がしない。洗顔を終えて、リビングに向かう。
サクラをテーブルの上に置いて、私は冷蔵庫から化粧水・乳液・美容液を取出しメイクボックスをテーブルの上に並べてバシャバシャと顔に塗りたくる。
全部ドラッグストアーで揃えた品物です。髪の毛をセットし、サイエスへ行く支度をしていたらメモ用紙が目に入った。
開けてみると、隣にある部屋のダンボール箱を全てアイテムボックスに収納する事と、起きたら留美生を起こす事と書かれている。
玉は減ったからその分の補充か? と思って隣の部屋へ行くとダンボールで部屋が埋もれていた!!
何を買ったんだ、妹よ! 買い物した金はどこから出した?
色々と言いたいことが喉元まで込み上げてきたが、クールダウンだと自分に言い聞かせる。
アイテムボックスに収納すれば、自動で整理されるので後で目録を見れて確認すれば良いか。
片っ端からアイテムボックスに収納し、10分ほどで収納し終えたが、めっちゃ疲れた。
リビングに移動しソファーに寝ている留美生の身体を揺すって声を掛ける。
「起きて。おーきーてー!!」
徐々に声を大きくして揺するのも激しくしても全然起きない。
「……きて、起きてってば! 留美生、いい加減に起きろっ!!」
ムカついたので高速揺さぶりで叩き起こしにかかる。
「うぅ……はよっ、てか何?」
余程いい夢を見ていたのか、物凄く不機嫌なドスの聞いた声で何? と聞いてくる。
「アンタが起こせって用件メモしてたんでしょーがっ!!!! っかぁーーーーーーー腹立つ!」
メモ書きを突き付け文句を言うと、思い出したようにボヘーッとした顔で軽く謝れ突拍子もないことを言い出した。
「悪い忘れてたわ。うん、取り合えず私を契約してくれ。」
「ごめん、留美生……私、そういうのに偏見は持ってないけど自分の身に降りかかるってなると無理。無理! 絶対無理ぃ!!」
お前が変態だって偏見は持たないつもりだけど、私に降りかかるのはごめんだ。
必死に無理無理と連呼すると、
「私も向こうの世界に興味あるし、色々と渡し忘れたのもあるし、契約したら私も異世界に行けるんじゃね? って思ったんだけどモンスターしか無理なの?」
「アンタ異世界に来るの? マジ? ドM?」
と素で返したら、アイアンクローされた。
「物は試しだしやってダメなら諦めるよ。ちょっと確認したい事もあったし! あとこのキャリーケースとそこにある箱はマジックボックスに収納しておいて。施策金貨も出来上がっているし、試しにやってみようよ!」
ダンボールは既に収納済みだよ、妹よ。キャリーバッグがしっかり用意されていたことに驚きだよ!
食事を終わらせた後、留美生にを無理矢理丸め込まれ強制的に契約させられた。
「あ、出来た。」
意外と簡単に契約が出来てしまった。これで妹は私の下僕か……。要らねぇ、こんな暴力的な下僕。
契約されたのにハイテンションな留美生に、私はついていけない。
「じゃあ、私のスキルってどうなってるかステータス画面見せて!!」
それが、目的だったんかい! 心の中で突っ込みを入れてしまった。
言われた通り留美生のステータスを宙に表示させて凹んだ。
「ステータスオープン」
---------STATUS---------
名前:山田 留美生
種族:人族
レベル:1
年齢:35歳
体力:8
魔力:11
筋力:5
防御:6
知能:20
速度:1
運 :10
■装備:ミッキーTシャツ・黒のパンツ
■スキル:料理4
■ギフト:なし
■称 号:レンの従魔
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
■ボーナスポイント:0pt
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「え? レベル低くね? てかスキル料理だけかぁ、ポイント入ったら回復系のスキルと鍛冶師のスキル取得しよう」
「ナニコレ……」
何で料理スキル持っているんだよ。私だって料理するのに、スキルはなかったぞ。
今後の事のスキル取得に関してブツブツと呟く留美生に、本気でサイエスに着いてくるつもりなんだと恐れ慄いた。
「うっし、私も異世界に一緒に行くわ。ちょっと服着替えてくるから待ってて!」
やっぱりぃ! ダメッて言っても聞かないんだろうな。
セブールまで行く間は、戦闘もする予定だからレベル1の留美生が心配だ。
即死防止のために、身代わり人形は装備させておこう。
黒のパンク系で纏めた恰好で現れた留美生は、見慣れない武器らしきものをしっかり装備していた。後で効いたら、ドラゴンフライとM85という武器だと分かった。
私が放心している間に、留美生は電動キックボードの電池残量を確認しに玄関へ行っていた。
戻ってきた留美生は、やる気行く気満々な状態で断れない。
「花令準備はできた? 時計の針を合わせるよ。」
私の腕時計で異世界の方の時間を確認した留美生は、ペンダント型の時計の針を合わせている。
ちょっ、それ私のコレクションのスイス製のアンドレイムッシュじゃないか!
花がモチーフで超可愛い時計で、コツコツ集めていた奴を!
呆然とした私を引き摺り、異世界サイエスへと二人旅立ったのだった。




