197.リオンをパシリにしたら怒られました
神社建設にどれくらい時間がかかるのかリオンに聞きに行かせたら、留美生が報告にやってきた。
「姉、伝言の返事やで。10日前後で像含め出来るわ。落成祝いしてからやし雨ごいは15日後で良えんとちゃう?」
「結構、時間掛るんやなぁ。もうちょっと早くならへん?」
「無理やな。空いてる時間に強化合宿でもしといてや。両隣の奴等からの嫉妬も出て来るやろうしな。雨ごいが終わったら町民全員のスキル鑑定してや。良えスキルがある者は囲い込みしたいからな」
ああ、そういうことね。
それは既にやり始めているが、
「別に良えけど…新兵にするんか?」
とげんなりとした顔で聞き返したら、
「新兵にするかは本人のやる気次第やな。鶴でも恩返しはするやろ。鶴でもするんやから人間な奴等も恩返しして貰わんとな。」
と返された。
リオンにデカい借りを作って、後でガッツリ取り立てる算段のようだ。
相変わらず抜け目のない奴だ。
「雨ごいになったら姉と紅唐白ちゃんがメインに頑張って貰うからな」
そう言いながら、アイテムボックスから取出されたのは幻の日本酒『橘』!
惜しげもなく渡してくるなんて、何を考えているのか怖い。
でも、飲みたい!!
「これは……もしかして幻の橘!? 松尾大社にしか奉納されないという! どこで手に入れたん!?」
「ん、地球に戻った時に参拝しに行ったんや。で、参拝してたら二十歳ぐらいの姉ちゃんが私が挿してた簪を見初めてん。売り物やないから断ったんやけど、姉ちゃんが自宅で造っている酒と交換して欲しいと言い出したんや。酒の味で決めるって言って美味かったから交換してん。新しい簪が出来たら定期的に交換する約束してんで。紅唐白ちゃんは、酒は飲めへんから雨降らせたら姉が飲んで良えで」
定期的に飲めるのか!
それは、素晴らしきことかな。
酒瓶を持ってくるくる踊っていたら、
「雨ごいが終わったら忙しくなるで。その辺は大丈夫なんか?」
と失礼なことを聞いてきた。
「あぁ、大丈夫や。強化合宿もボチボチやっとるしな」
良い感じに仕上がってきている。
神職系のスキルを持った者や、精霊魔法の適正がある者も居たので私達が居なくなっても大丈夫だろう。
まあ、ある程度の仕込みは必要だが。
精霊魔法については、私は専門外なのでリオンが手隙の時にでもアベルにでも聞いてみよう。
この大干ばつも精霊が関係してたりしないか気になるし。
「なら良えけどな。あと、殿下を使いっパシリにすんな」
「悪い。気を付けるわ」
リオンをパシリにしたことを叱られた。
普通はリオンを立てる立場だから、軽々しくお使いを頼んだのは反省せねば。
アベルにリオンの教育進捗状況を聞いてから、徐々に書類を回して行こう。
何でも間でも私が決済したら、リオンが本当にお飾りになってしまう。
バルドは……ぶっちゃけ取り柄が無い。
人を見る目はありそうだが、強かにならねば魑魅魍魎が跋扈する王宮ではやっていけないだろう。
リオンの後ろ盾になるには、少し弱い。
そこは、追々調教……げふんげふん。教育せねばなるまい。
そんな事を考えていたら、抱っこしていた紅唐白が留美生を見て威嚇している。
留美生が大嫌いだから仕方がない。
その原因を作ったのは、留美生本人だからな。
「紅唐白ちゃんをもうちょい躾せんと紅唐白ちゃんの飯をサイエス飯にチェンジするさかいな」
などとぬかしやがった!!
サイエス飯にしたら、留美生の資金源と材料をカットしてやる!
紅唐白が、神使だということを忘れているんだろうか?
出汁巻き卵みたいな竜と一緒にしないで欲しい。
私が文句を言う前に、
「私は像の作成に入るさかい、書類仕事が入ったら三人娘の誰かに渡しといて。後で目を通すわ」
と言い残し去っていった。
留美生が去った後、キューと鳴きながら雷を落としたので感電した。
無暗やたらに雷を落とす子じゃないのに、留美生が絡むと容赦なく雷を落としまくる。
「留美生がそんなに嫌いか?」
「キュッ!!」
私の言葉を肯定するように元気よく鳴いた。
「あの阿呆なら幾らでも落としてええからな。悪人と留美生以外には、雷を落としたらあかんで」
と言い含めた。




