194.肉調達部隊結成
神社とログハウスのために木材を大量発注させられ、日本まで戻って大人買いしたぜ。
MINELを立ち上げたのはサイエスだけだし、木材も自腹か……。
商売始めの3年は赤字と言われているしな。
これも先行投資!
ヘビ様にも久々に挨拶したら、相変わらず酒とツマミを強請られた。
一応、天照大御神に甘やかすなと釘を刺されているからなぁ。
新会社設立でお金が~的なことを零したら、〇〇駅前の宝くじ売り場へ13時に行けと言われた。
お勿論、見返りはガッツリ要求されましたが何か?
身の丈に合わないお金を持って自滅はしたくないので、全て目標達成のための資金として口座を分けている。
マリーやアンナ達が、サイエスと日本を行き来して日本の従業員の給与やシフトを組んでくれているので、本当にありがたい。
留美生にMINEL指定フォルダに木材があると伝えたら、早速重機を乗り回して元大衆食堂を更地に変えていた。
重機の存在に大層驚かれたが、そういう物ですの一点張りをしてスルーした。
毎日食事と水の配給をしていれば、最初に見た時に比べて元気になったようだ。
「姉、そろそろ建設に着手したいんやけど」
「おお、ええで。拠点を優先して建ててくれ」
拠点が無いと、鍵を使っての移動が出来なくなる。
「了解。じゃあ、イスパハンは神社建設の現場監督な。二班に分かれんで」
「女子供は、飯炊きと雑務要員にするから残して行けよ~」
「はいはい」
むさ苦しい野郎共を引き連れて行ってしまった。
「野郎共が汗水垂らして建設している間に、私らは飯を作るで! 掃除と洗濯もガンガンするぞ」
水は幾らでも魔法で出せるしな!
Cleaningで済ませるなんて、私は許せない。
石鹸も業務用のお得パックを使っているので、低コストで泡立ちは抜群!
石鹸の香りのよさと泡立ちに吃驚した主婦は多かろう。
「数時間後には、腹を空かせた獣共が戻ってくるからな! 食い尽くされんようにガンガン作るでぇ」
「「「はい!」」」
良いお返事です。
COOKPADIのサイトから煮込み料理を抜粋して、寸胴を何個も使って作ったさ。
味付けが大味だと文句を言われたが、それが私の手料理だとドヤ顔で言ったら料理番から外された。
酷す!!
私が抜けた穴は、イーリン達が埋めている。
仕方がないので、周辺の森で狩りをした。
ローテーションで手透きの人間を捕まえて、連れまわしたよ!
自衛って大切じゃん?
お手本を見せて、武器を持たせて止めを刺すという簡単なお仕事。
魔物の中には食べられるものもいるので、見つけたら即狩りである。
野菜はアンナがパンジー経由で寄越してくれるから良いが、肉は正直買うより狩った方が早いしお金も経験値も入るので控えて貰っている。
毎回運よく狩れるというわけではないので、野菜7:肉3の割合でお願いしている。
毒で麻痺させると肉にも影響が出るので、試作品の薬が使えないのは残念である。
「やっぱり、キヨちゃんが居ると魔物が入れ食い状態で助かるわ~」
右手に須佐之男命から預かった刀、左手には山賊の手が握られている。
ドロップされる前に心臓と魔石の回収のためだ。
「レン様は、出鱈目な強さですよね……」
「んあ? 私も最初は羽虫の如く弱かったで。死ぬ気になれば出来る! 駆け出しの頃、ゴブリン軍1万匹ほどを殲滅したことあったなぁ。いや~、あれは流石に身代わり人形が無かったら死んどったわ」
ハハハハと笑って過去の体験談を離したら、皆顔が青い。
「どうしたん? 顔が青いで?」
「魔物の遭遇率が異様に高いのは、レン様が居るからってことはないですよね?」
恐々とした顔で聞いてきた村娘に、キラッと良い笑顔で親指を立てて云った。
「何今更なことを言ってんの。私のせいに決まってるやん。運だけは人の数倍高いからな! 私と一緒に結界の無い外へ出れば、魔物に襲われるに決まってるやん。魔物によって異なるけど、弱い奴から狙うから良い訓練になって一石二鳥」
「私達が強くなる必要って……」
絶望的な顔をしている面々に、
「自己防衛出来んと、折角苦労して手に入れた物を奪われることになんで。神社が建てば、太陽神と学問の神様をお祀りするからな。この町だけ栄えたら周辺の村は嫉妬して、その根源になる物を手に入れようとするやろう? その時に何もできずにただ指を咥えて奪われるのを見ているか、それとも抗って死守するかは村人達の判断や。でも、私は自分が建てた物を土足で踏み荒らされたり奪われたりするのが大嫌いやねん。使えるもんは使うし、出来る限りの手は打つ。1週間前までは、本当に生気のない人間が今では意欲的に動けるようになったやん。ええことや。それに、ある程度腕っぷしがあれば自給自足も出来るやろう」
今、私がやっているみたいに肉が食いたければ狩りに出れば良い。
冒険者ギルド・薬師ギルドは完全にこの町を放棄している。
裏を返せば外的から守ってくれるものが居ない。
傷や病を癒す術もない。
それらを考えても、力はある程度必要なのだ。
「私は、出来んことはせん。見込みのある者を選んで仕事を振ってるからな。今、私と一緒におる奴は戦闘に向いているってこった」
武器や攻撃方法は異なるが、素質のある者に戦闘経験を積ませている。
私達が去った後でも、今していることは将来財産になるだろう。
「そこまで考えて下さってたんですね」
何か拝まれている。
この国に来てから拝まれることが多くなった気がするのは何故だろう。
「今日は、こんなもんかな! 帰るまでが狩りの演習やからな!! 気を抜いたら死ぬから留意せえよ」
食料調達部隊は、着実に実力を付け後にリオンの殿を務めるほどの戦闘力を持った。




