192.ワウルと合流しました
アンナと打ち合わせを終えてアウトプット町の自宅に戻ってきた。
そのまま宿に向かっている途中で小汚いおっさんに出会った。
よく見るとワウルである。
「……お前、そのばっちい恰好は何やねん」
「色々あったんすよ」
「その色々をこれから聞くから覚悟せいよ。Cleaning」
ワウルにCleaningを掛けて、宿に入った。
宿の女将に、一人追加で宿泊する旨伝えて鍵を受け取る。
念話を通じてワウルの帰還を伝え主要メンバーに集合を掛けた。
1時間後に全員が揃ったので、男衆の大部屋で夕飯を兼ねての報告会が始まった。
念には念を入れて防音魔法も掛けたよ。
「じゃあ、俺らからな。王が臥せてから数年の間に冷夏と干ばつで作物が思うように育たなくなっている。税が払えないものは奴隷に身を落としたりしている。奴隷落ちする者が多く、国は秘密裏に奴隷を他国へ売っているらしい。特に子供や若い女、見目麗しい者が奴隷落ちする状況だ」
ハンスの報告に、私の眉間に皺が刻まれる。
「あ、あの…私達も色々調べてみたのですが」
「ん? ああ、報告してくれ」
「はい。第三王子が民の為に立ち上がり救ってくれるかもしれないと噂が流れていました。ただ、状況は最悪極まるため表立って参加する者は少ないかもしれません」
シュリの報告に、頭痛がして来た。
「後、アーラマンユ教会が手を回してハルモニア王国の領土侵犯を唆しているようです。開戦も秒読みと言われています」
レイラの発言は、アンナが掴んだ情報と同じか。
「推測ではありますが王は既に崩御したと思われます。素質は過不足ない王太子と素質はあるが素行問題の多い第二王子の継承権争いの元になったのは、王が第三王子を次期王にと遺言を残したのではないかと具申致します」
とアリスが締めくくった。
「私等も冒険者ギルドに行ったけど、誰も居なかったよ。蛻の空の状態だった。念のため薬師ギルドや生産ギルドに顔を出したけど、そっちも誰も居なかった。唯一居たのは、商業ギルドに一人だけかな」
ギルド職員の撤退は、色々な意味で痛いな。
思っていた以上に深刻な状況だ。
「イーリンたちもありがとう。それで、ワウルはどうなん?」
「大変でしたよー。言われた通り、例の映像を空に映写して『第三王子リオンが、民のために立ち上がり祖国を救うために活動している』と噂をばら撒いてきました。帝国中を移動しましたから、骨が折れましたよ。リオンに期待を寄せている民衆は多いと思いますが、実績がないので実績を作る必要があるっす。後、アーラマンユ教会が裏で手を回しているのは確かっす。ハルモニアと一戦交えて疲弊したところを乗っ取る算段のようっす」
「聞いているだけで不愉快になったわぁ。Cremaの話は、こっちにも届いてるん?」
「貴族階級や商人の間では有名っすね。民間では、あまり話に上がったことは無いっす」
「じゃあ、新しい商会でも作るか。MINELでどうよ?」
「商会名はどうでもええけど、何を売るん?」
「Cremaで扱っている化粧品。ボトルはMINELに変えて作り直してな。後、和装のファッションやね。リオンの衣装が和風やん。それに合わせて和風ファッションの服を取り扱えば良えんちゃう? リオンに憧れて真似たりするかもしれんし。紫以外の色で作れば、ちゃんと差別化は出来るやろう」
紫の色を使えるのはリオンだけにして、薄紫は幹部までにすれば良いだろう。
「Cremaには、食品などの物資の依頼もしてある。近々、クロエ夫人と会談して王家に繋ぎを取る算段や。リオンにとっては、ハルモニア王家に大きな借りが出来るかもしれんが食い潰されんようにすることやな」
「姉、リオンには荷が重いと思うけど」
「これから王になろうって奴が、そのくらいの覚悟して掛れって話や。まあ、後ろに私が居るんやから下手な手は打って来んやろう」
Cremaの影響力を考えれば、無茶な要求はしてこない……はず。
「留美生、大衆食堂は手直し必要か?」
「結構年期が入ってるし、そのまま使うより取り壊して立て直した方がええな。ログハウス風の2階建ての家を作るわ。ゲルドのおっさん、村長に人手借りてきてくれ。神社と並行して建てるからな。給金は出すし、ご飯も三食出すで」
「そんなにお金を使って大丈夫なんですか?」
「当面の拠点になるんやし、それくらいの投資は必要やろう」
何言ってんだとばかりにゲルドを見る留美生に、私達の金銭感覚を押し付けたらダメだろうと思った。
「お金の心配はせんでええよ。人手はあった方がええし、1日8時間で銀貨5枚。三食付きなら文句は出ないやろう。子供は銀貨3枚やけど、毎日働けば税金くらい払えるで」
「確かに……。しかし、いつまで雇って貰えるかも見通しが付いていない状態では、民は不安になるでしょう」
「そのためにMINELを立ち上げるんやん。当面は、食料品を扱うことになるやろうけど。ゆくゆくは、衣服や化粧品を展開して元を取れば良いと思っとる」
開業三年は赤字上等でするものだ。
最初から黒字なんて考えていない。
「ゲルドさんは、飯食ったら村長のところへ行って明日の昼までには人を集めといてな」
「分かりました」
取敢えずの構想は、ひとまずと言ったところか。
これから忙しくなるなぁー。
チラッとリオンを見たが、平然としている。
「リオン。お前、この戦が平定した後、どういう国を作りたいか考えときや。答えによっては、私らが敵に回る可能性もあるから留意せえ」
それだけ言って、報告会は解散した。




