182.イメージは大切です
ゲルドの妄想力ではなく、想像力が著しく乏しいので子供向けの図鑑を読ませた。
漫画なので読みやすいが、ゲルドには日本語は読めないので私が読み聞かせる。
3時間ぶっ通しで読み聞かせするのは辛いね。
声がかすれちゃったよ。
元素を理解した後、魔法少女もののアニメと魔法の世界が舞台のラノベアニメと特撮を延々と見せた。
ちょくちょく解説を入れて説明する。
作りものなので、科学的根拠はないがイメージを思い浮かべるには良い題材になる。
リオンも何故か一緒に見ていた。
5時間くらい同じ場所に留まり講義をしていたので、多重結界の外には魔物がうじゃうじゃいる。
「レン殿が仰るように、イメージは大切ですな」
「無詠唱が出来れば、奇襲するには良いな」
リオンが物騒なことを言っているが、果たしてこの世界で無詠唱が可能なのかは謎である。
スペルが英語なので、発音が間違ってなければ発動可能だ。
発せず発動するかは試したことが無いので、確かに無詠唱が出来れば一歩先を行くことが出来る。
あのクソ神が、ゲームに似た世界を作ったのなら抜け道はあるだろうが、その辺りは追々探求していく必要があるだろう。
「ゲルドさん、成果を見せる時です。丁度良い感じに集まってきたんで、蹴散らして下さい」
「やってみますぞ。Rock Lance」
ガンッと杖の先をを地面に叩きつけ、全方位に向かってRock Lanceが放たれる。
地面から無数の鋭利な槍が生成される。
集まっていた雑魚たちは、一掃されてしまった。
「うんうん、良い感じやね。でも、結界内でRock Lanceが出現するのは頂けへんな。自分の周りだけやなく、味方も含めたパーソナルスペースを見極めて術を使わんと」
「精進します」
「じゃあ、サクサク進むで~」
ゴールドゴーレム戦で魔力操作を獲得したので、ゲルドの魔法精度は順調に成長している。
科学の知識やアニメを見せた甲斐もあり、魔法構築に無駄が無くなってきた。
ただし、まだ自分の魔力残量を計ることは出来ないのか残量1割を切ってしまうこともしばしばある。
その都度、下級MPポーションを飲ませて前線に送り出した。
20階は、セイレーンだったので雷魔法をガンガン打たせ回復や魅了を使わせる暇を与えず攻撃させた。
そこの頃には、顔つきが最初と比べて大分変っていた。
いくつもの戦場を潜り抜けてきた猛者のようだ。
「鍛えてみるもんやな。良い感じに仕上がってるやん」
ゲルドを見て満足している私に、
「昼夜問わずに魔物の中に放り込まれれば、誰でも悟りを開くぞ」
とリオンに突っ込まれた。
「ちゃんと睡眠時間と食事の時間とトイレ休憩は確保してるやん」
まるで私が鬼畜だと言われているようで言い返すと、
「それ以外は朝から晩まで戦闘じゃねーか。MPが枯渇しかけたら、物理攻撃に移行とか鬼だろう」
「鬼の所業じゃな」
イスパハンと2人で責められた。
鬼畜認定されているよ!!
「強化合宿より激アマやん」
「あれに耐えられるのは一握りの人間だけだってことをいい加減気付け」
などと言われてしまう始末。
可愛げがなくなって来たぞ、リオン。
どうして留美生が拾ってくる奴は、可愛げがないんだろうか。
「私は限界を見極めてやらせてるんや! 出来ん事はさせてへん。実際、ゲルドさんも魔法精度や構築精度が上がったやん」
「無理矢理上げさせたの間違いだろう」
「口答えせんで宜しい! 自己防衛くらい出来て丁度良いんや」
誰かに守って貰おうなんておこがましい。
最終的に自分の身は自分で守るしかない。
「私から見れば、まだまだ改善の余地はある。そんなに戦闘に参加したいならリオンが25階まで一人で戦い」
「何でそうなるんだよ!!」
「これも修行。大丈夫、死ぬ前に回復させたる」
「裏を返せば致命傷を負わない限り回復しないってことだろう」
「動けるうちは回復しないだけや」
フンッと顔をそっぽ向き、ゲルドを下げてリオンを前線に押しやった。
強化合宿をこなしただけあり、回復することなく25階まで進んだ。
その後は、ゲルドとバトンタッチして攻略に励み30階でケロベロスと(ゲルドが)死闘をした後、無事ダンジョンを制覇したのだった。
制覇に掛かった時間は4日間。
ああ、お風呂に入りたい。




