181.仕方がないので指南してみた
2時間経過したが、未だ倒せていない。
宣言通り死ぬ前に回復させたり、死に直結しそうな攻撃は紅唐白が攻撃している。
今は、魔力枯渇による行動阻害でへばっている。
仕方がない。
足を潰して動けない状態にして戦わせるか。
ゲルドの前に立ち、ゴーレムが振り下ろした腕をいなしつつ、HPとMPポーションを渡した。
「それ飲んだら再開すんで」
「は、はいぃぃ」
ゲルドの襟を掴み、後ろに飛び距離を取る。
腰を低く落とし、足に力を入れてゴーレムに向かって飛び出す。
丁度、刀がゴーレムに届くかというところで抜刀した。
豆腐を切る感覚で、スパッとゴーレムの足が切れた。
勿論、切り落とした部位は回収済である。
ゴーレムが体制を崩したので、取敢えず私の出る幕は終わりかな。
「動けんようにしたから、攻撃するなら今やで~。後、自分の魔力残量はちゃんと把握出来るようにしいや。1割切ったらマジでヤバイから」
「そんなの出来るのは、あなたぐらいですよぉぉおお!」
半泣きでロッドを振り回しているゲルドを無視して、観客席に戻る。
「……普通は魔力残量なんか把握出来ねえよ」
「あ? 何か言ったか?」
ギロッとリオンを睨んだら黙った。
私が化け物か何かのような目で見るのは止めろ。
コーヒーを片手に啜っていると、
「流石に、あれ1人で倒すのは可愛そうじゃないか?」
「なんや、イスパハンも参加したいんか? あんな雑魚倒しても経験値なんて知れてるから、もっと大物1人で倒させたるで」
イビルドラゴンが良いかな~。
それともエンシェントドラゴンでも良いかも~。
と呟けば黙った。
「大体、レベル40程度の魔物くらい一撃で倒せるくらいにならんと」
耐性は耐性であって、無効ではないのだから即死させるくらいのダメージを与えれば良い。
「レベル差は大したことないのに、何でこんなに苦戦すんのかな?」
首をひねる私に対し、
「普通はパーティー組んで討伐するんだが」
「イスパハンに教えたる。うちはうち、他所は他所っていう格言があんのや。大体魔法ってイメージの問題やん」
「そのイメージが難しいんだよ」
特撮やアニメで魔法のイメージがあるから、簡単だと思っていたけど異世界では難しいのか。
それなら仕方がない。
「おーい、ゲルドさん。一度手本見せたるから、その通りにやってみて~」
「わ、分かりました!!」
「じゃあ、ちょっと下がってや~」
ゲルドを下がらせ、私がゴーレムの前に立つ。
「水剣」
細長い棒状の水を出して、サクッとゴーレムの左腕を切り落とした。
「え?」
「え? やないわ! ちゃんと見とれ。水圧を利用して切ったの! ほれ、真似してみ」
ゲルドが一生懸命に水を棒状にしようとしているが、形は崩れまくっている。
「魔力操作も出来んのか! あんた、魔法メインとか言ってたけど魔力操作は基礎中の基礎やで。良い機会や。この戦闘で魔力操作もついでに覚え」
両手足を奪って、的になったゴーレムに魔法の指導をした。
その間、二人はお茶を啜り菓子を食っていた。
やっと水剣が出来るようになり、威力はまだまだだがゴールドゴーレムはちゃんと倒せたので良しとしよう。
大量の金の延棒にウハウハしながら、ゲルド達を連れて11階へと進んだのだった。




