180.世の中そんなに甘くない
現在、ダンジョンの7階にいます!
ゲルドに剣を持たせてみたけど、さっぱり上達しない。
こっそり鑑定してみたが、レベルは上がっているがスキルに剣術が派生しない。
魔法メインと言っていたので、この際魔法を極めさせる方向へシフトするべきか。
魔力も平均よりも多いし、水・土・雷の3属性の適正があった。
「ゲルドさんには剣の才能なしと分かったから、後衛で魔法攻撃で敵を倒して貰うわ。私と場所を交代や」
「本当ですか!!」
死んだ魚の目をしていたのに、急に生気が戻った。
「うん、適正ないものに時間を費やすのは無駄やから。ゲルドさんは、水と土と雷の魔法適正があるから伸ばそう。ダンジョン攻略までに複合魔法も使えるようにするからな」
と言ったら、絶望的な顔をされた。
? マークを飛ばす私にリオンが溜息を吐いた。
「あんたみたいに簡単に複合魔法なんて使えるわけないだろう。大体、複合魔法は複数の魔導士で作るのが一般的だ」
「へー、そうなんや。でも、私に出来るなら誰でも出来るから。強化合宿に参加した人の中で魔法適正のある子は、複合魔法の1つくらいは覚えたで。大丈夫、人間死ぬ気でやれば出来る。お前も使えてるやん」
「……あの地獄を体験したら、生き残るのに必死になるぞ」
「そうだな」
うんうんとイスパハンと2人で頷いている。
ちょっと失礼じゃなくね?
「まあ、良いわ。取敢えず、これ使ってみ」
拡張空間ホームから、クロスロッドを出してゲルドに渡した。
ゲルドに貸していた剣は回収しておく。
「あの…凄く高価なものなのでは?」
魔法職の人間が持つ杖は、大抵木で出来ている。
クロスロッドはレアメタルとミスチルの混合鉱物で出来ている上に、黒の魔石がダイアモンドカットで埋め込まれている。
魔石の価値は、透明>黄>赤>青>黒>紫の順番に上がって行く。
魔力伝導率も紫が一番良いとされ、次の良い黒の魔石を使っているのでゲルドが物怖じするのは無理はない。
だが、このクロスロッドは失敗作だ。
思った性能が付与されてないので、溶かして作り直すかしようと思っていたものだ。
「確かに高価な素材で作っているけど、失敗作だから気にしなくて良いよ。魔力切れ起こしたら回復するまで前衛で敵を物理攻撃で倒すんやで。大丈夫、その辺の武器屋で売っている武器よりも頑丈で性能は良いから!」
と優しく言ってあげたら絶望しきった顔をされた。
「悪魔だな」
「悪魔が居る」
「お前ら失礼なこと言うんじゃありません! 大体、魔力に頼り切って枯渇した時に動けんなんて味方の足を引っ張るだけやん。ある程度動けた方が良いやろう」
「ゲルドが前線で戦うことはないだろう。そこまで求める必要はないんじゃないか?」
リオンの言葉に、ゲルドは激しく頭を縦に振っている。
そこまで嫌か。
「戦力は多い方が良いに越したことはない。後方を狙われた時に戦えずに無駄死にしたいなら止めて良えよ」
ニッコリと笑みを浮かべてどうすると聞いたら、蚊の鳴くような声でやりますと返事を頂いた。
最初からグダグダ言わずにやれば良いのに、無断に時間を潰してしまった。
「じゃあ、これから7階を回るで! 魔力切れ起こしたら、私と前衛交代な。私が相手の攻撃をいなすから、ちゃんと狙って攻撃しいや。もし、私に当てたら分かってるやろうな?」
ちょっと脅しを掛けたら、ヒィと悲鳴を上げられた。
どこまでも小心者な男である。
「キヨちゃんは、手を出したらあかんよ~」
キューキューと不満の声を上げていたが、ゲルドを鍛えるためダメと言いつけておいた。
7階を探索初めて34回目の戦闘で魔力枯渇を起こしたので下級MPポーションを飲ませて魔力が全回復するまで前に出て物理攻撃をさせた。
10階のボス部屋前まで来て、漸く魔法も多少見られる程度にはなった。
HPとMPポーションをゲルドに飲ませた。
私・リオン・イスパハンは、勿論無傷だし体力も十分有り余っている。
「じゃあ、ボス戦や。ゲルドが1人で倒すんやで! 死ぬ前に回復魔法掛けてやるから安心しいや」
グッと親指を立てて初のボス戦を体験させてやろうと思ったら、男泣きされた。
そうか、嬉しいのか。
「よし、行くで~」
ボス部屋の扉を開けて中に入るとゴールドゴーレムがいた。
「おお! これは、ラッキーや。倒すとドロップ品が金塊が沢山でる奴やん。ギルドの資料ではミノタウロスとあったけど、ゴールドゴーレムが出るとは資料にはなかったな」
「これは、流石に一人では無理です!! ゴールドゴーーレムは魔法耐性があり土魔法を使ってくるんですよ。私1人では倒せません!!!」
無理無理と泣き言を言うゲルドの背中に蹴りを入れてゴールドゴーレムの前に立たせる。
「魔法があかんなら、物理で攻撃せい。四の五の言わずに倒してこい」
私は、多重結界を張った中でテーブルと椅子を出して観戦モードである。
リオンもイスパハンも無理矢理座らせた。
強制お茶会に参加させ、勿論拒否権はない。
「これも修行や。ついでに魔法でも食らって耐性獲得頑張りや~」
そう発破を欠けて、ゲルドvsゴールドゴーレムの対戦を観戦した。




