176,軍師候補生
「ふっふふふふ!あっははははははは!ついに出来たわ!私の最高傑作がっ!」
目の下にくまを作りながら高笑いをする留美生にドン引きした。
「皆、ありがとうなー」
クインテットは、各々自慢大会をしていた。
どうせ、ろくでもないものをまた作り出したのだろう。
あいつらの作る物は、思いがけない時に役立つことがあるので放置するべきかどうか悩みどころだ。
「妹よ、何やそのチートな武器は!! てか私の新しい防具は?」
寄越せと手を出すと、
「あらへんで」
と一刀両断された。
「何でやねん! そこは私にも新しい防具を作るところやろ!? 他の皆にはイスハパンと一緒に作ってるって聞いてるで!? 何で私の武器は新調されへんのや!?」
「何でって既存の防具で良えやん。そもそも材料提供してへんのに自分の分の防具を作って貰おうなんて甘いわっ!」
その言い方にムカついたので、錫杖を強奪しようとしたら雷を落ちた。
目の前が真っ白になり、意識が遠のいた。
私が目を覚ました時には、奴らはいなかった。
「うーっ、頭がガンガンする」
あれは、紅唐白の鱗を絶対使っている。
なんて姑息な奴だ。
「イスパハン、この中にある素材やったら何使っても良えから私専用の防具作って」
拡張空間ホームの私専用フォルダーにある素材を見せたら、
「本当に良いんですかい?」
「留美生の阿呆に頼んでも素直に作らんからな。紅唐白ちゃんでも装備できる奴も作ってな。出来ればお揃いで」
と言えば、苦笑いして了承してくれた。
「ちょっと、奴隷商に顔を出してくるわ」
「奴隷を買われるんですかい?」
「うん、ゲルドに軍師候補を探させているけど正直見つけられる確率はあんまり期待出来ひんしな。素質のある奴を探して育てた方が早いかもしれん」
「あー……」
「と言うわけで、こいつの面倒宜しく」
留美生が置いて行った地竜を押し付けて宿を後にした。
世界地図を表示させながら、奴隷商を何件か巡った。
私が欲しいと思っているスキルを持っている人物は居なかった。
高速演算・並列思考・暗算を全て持っている人は居ないのだ。
仕方がないので、どれか1つ持っている人を買った。
掘り出し物が2人、普通の値段で売られていたのが1人。
Cleaningを掛けて、体調不良の者にはポーションとヒールを掛けてから商業ギルドを訪れ手頃な家を買った。
勿論曰く付きである。
怨霊は広範囲のエクストラヒールで昇天させました。
ギャーイヤーなどのBGMを聞きながら問答無用で昇天させてやったわ。
そこそこ大きな一軒家は、元は下級貴族のお屋敷だったらしい。
奴隷たちをお屋敷に招き入れてから、契約をした。
勿論、同意の上である。
あくまで軍師候補なので、これから教育が必要になる。
念話で、1日か2日ほど空けることをハンスに伝えておいた。
彼なら全員に連絡してくれるだろう。
新たに仲間に加わったシュリ・アリス・レイラを日本の自宅へと連れて行った。
行き成り何もない空間から扉が現れたら驚くわな。
「時間は限られているから、サクッと移動するで」
彼女たちを追い立てて、移動する。
「あんたらは、私の配下になってる。だから異世界の神様の加護が受けられているし、こうして異世界に渡ることも出来る。まず、必要な物を揃えるから取敢えずこれに着替えて」
私の普段着を貸しても体形から無理なのでCremaの制服を手渡した。
パーテーションで仕切られた場所でそれぞれ着替えて貰い、エレベーターのキーカードと部屋の鍵を配り、4階へと降りた。
「ここは、従業員用の部屋や。日本での1日は、元の世界では約1時間弱や。7時間の時差があることだけ頭の片隅に置いといて。各自、部屋が与えられているから、その鍵の番号と同じ番号の部屋を使ってや。ベッドと机・椅子は備え付けで、私物は拡張空間ホームに収納すること。自分の名前のフォルダーに入れるんやで。日本ではスキルやレベル、魔法と言った概念はないからな。荷物を収納する時は基本人目のないトイレで行うか、個室で行うこと。ここまでで分からんことはないか?」
特に声が上がらなかったので、次はスマートフォンの契約と私服などの必需品の購入である。
Cremaの社員として雇ったわけではなく、個人契約なのでポケットマネーでお支払いとなる。
懐が痛い。
「よし全員着替えたな! じゃあ、買い物に出かけるで」
彼女たちを連れて、買い物をしまくった。
暗算は出来るから、お金の使い方も直ぐ慣れたようで、アウトレットモールで集合場所を決めて一旦解散した。
私は、紅唐白を肩に乗せながら様々な専門書を取り扱う巨大書店に入って歴史書や将棋・囲碁の棋譜・兵法書を買いあさっていた。
書店とトイレを往復5回した後、ゲーム専門店にて戦略ゲーム系を買いあさり、またトイレとの往復2回。
合計500万円弱が飛びました。
魂が抜けちゃったよ。
集合場所に戻り、彼女たちを回収してロッソ街の自宅へと戻った。




