175.わたしだって欲しいんだもん
軍師についてはゲルドに一任し捜索を命じたと報告を受けた。
留美生の無茶ぶりに、ご愁傷様と心の中で手を合わせた。
念のため、素養がありそうな奴隷を探して契約するのもありかもしれない。
戦争のノウハウは、地球の歴史を読み解けば役立つ戦術は幾らでもあるだろうし。
ただ、私がこの世界を去った後でその知識が脅威にならないと良いのだが……。
今は、そこは考えないでおこう。
後、留美生が日本に戻って編集したリオンのワイバーン戦の動画をお披露目された。
一体何作っているのかと思っていたが、プロパガンダ用らしい。
出来栄えは特撮映画のCMっぽくなっている。
リオンの生い立ちなども盛り込まれて、庶民の立場が理解できる王子として描かれている。
クインテットが作った『何でも映せる空中に浮かび上がる3次元映像機』をワウルに渡して、一足先に帝国に送り出した。
送り出す時に、破損したり紛失したり盗られたりしたら殺す宣言をしておいたので大丈夫だろう。
リオンや仲間の衣装が、新しく作られていたことに留美生へ苦情を言ったら、採寸してないから作ってないとほざきやがった。
背格好も同じだし、これ以上成長のしようがないのに何故作らない!!
「何でや!!? 私とお前の背格好は似とるやん! 簡単に作れるやん! 今まで、採寸ってしてへんやん! うわぁーーーーーーーーーーーーんん!!」
「良い年したババアが泣くな。見っとも無い。誰も作らんとは言ってへんやろ。あんたはCremaの看板なんやし、リオンよりは劣るけど見栄えの良い奴を作る予定なんやっ!!」
「いや、Cremaは私もあんたも退職したやん。何や~早く言ってぇ~な」
猫なで声で催促していたら、腕の中にいる紅唐白がキューキューと鳴いた。
「キヨちゃんも衣装欲しいって!」
お揃いの衣装が良いな~とイチャイチャしていたら、
「紅唐白ちゃんの分は無いで!」
と、留美生が拒否しやがった。
その言葉におこになった紅唐白が、留美生めがけてピシャーンと電撃を放った。
いつもなら感電して痛がっているのに、ケロッとしている。
不審に思い鑑定してみたら、電気耐性があった。
こいつ、紅唐白から電撃食らっていたから耐性がついたのか。
「脅してもあかん! 大体、紅唐白ちゃんは龍やん。衣装なんて要らへん!」
留美生にキッパリとお断りされてしまった。
紅唐白は納得出来なかったらしく、私の腕から飛び出して留美生の腹にゴスっと体当たりし高圧電流を流されていた。
電気耐性を持っていても、レベルは低いから高出力の電気だと成すすべなく倒れた。
ハイハイと言って作ってれば、気絶させられることは無かったのに。
本当に阿呆な妹である。
「キヨちゃん、ちょっと落ち着け。ちゃんと作ったるさかい、留美生の上から退こうな」
ドスンバシンと飛び跳ね尻尾で殴り飛ばしている紅唐白を抱き上げて、よしよしと撫でたら落ち着いた。
留美生は、神様からの預かりものに対して軽視しすぎだと思う。
気絶している留美生を文字通り叩き起こして、衣装作成を命じたら地竜の心臓と魔石を要求された。
盛大な舌打ちをしたよ。
あれでパソコンとかスマートフォンとか色々作らせようと思っていたのに!!
でも、紅唐白が喜ぶなら仕方がないと泣く泣く渡したら、ついでとばかりに紅唐白の鱗も強請られた。
それも渡したよ!
留美生は、クインテットを引き連れてアトリエに籠りやがった。
本当にがめつい妹である。
一体誰に似たのか。




