174.迷宮は金の生る木
ロッソ山を無事購入してジョバンニに提示したら、どんな魔法を使って安く買ったんだと聞かれた。
魔法も何も適正価格で買っただけで、地竜討伐やワイバーン契約した事は喋っていないだけである。
「クエスト完了の処理をして貰えないと、新しいクエストが受けられないじゃないですか」
「分かった。分かった。直ぐに手続きする」
「後、素材の買取もお願いします」
「それは、1階のカウンターに持ち込んでくれ」
「分かりました」
チッ、一緒に手続きしてくれれば楽だったのに。
ギルドカードを渡し手続きがものの数分で終わる。
本当、魔法具って便利だな。
アンナが、パソコンやら携帯やらを分解・解析してサイエスでも使えるようにしたい気持ちが分かる。
事務処理の効率が、大幅に上がるだろう。
カードを受取り部屋から出ようとした私達に、ジョバンにが思い出したように言った。
「そう言えば、レン殿は迷宮に興味はないのか?」
「迷宮ですか?」
言われてみれば迷宮に入ったことがない。
ハンス達に攻略してくるように送り出したことはあるが、自身が乗り込んだことはない。
「迷宮に入って何か得があるんですかね?」
「迷宮でしか手に入らない貴重なドロップ品があるぞ。初の制覇者は、迷宮に名前が刻まれる。一躍有名人の仲間入りだ」
名声は要らんが、貴重なドロップ品は気になる。
「ハンスも知っていたのか?」
「はい、冒険者の殆どは名声を求めますから。ある程度実力が付けば殆どが迷宮入りします。基本的にCランクのメンバーが迷宮入りすることが多いですね」
そう言えば、ハルモニアで粘着して来た変なAランクパーティーも迷宮攻略とか言ってたな。
「ハンス……ハルモニア王都の迷宮で初めて制覇した者の中に同じ名前がいたが。チームスサノオのハンスか?」
「はい、そうですが」
ちょっ、お前何でそんな肝心な事を報告してないんだ!!
というか、チームスサノオって完全に武神須佐之男命から取ってるでしょう。
「ハンス、私何も聞いてへんねんけどぉ」
「忙しそうにされていたので報告は控えました。ドロップ品は、アンナ様に報告して提出済みです」
おーい!! アンナ、一言報告してくれよ。
Crema専用のドロップフォルダーに収納されているだろうが、どれが迷宮のドロップ品か分からないじゃないか。
「迷宮は各地に存在するが、難易度が高い迷宮攻略者がいるとなれば、この地にある迷宮も制覇されるのも時間の問題だな。ドロップ品は高く買い取りするから、是非攻略に励んでくれ」
ジョバンニは、上機嫌でバンバンとハンスの肩を叩いている。
交易で金を稼ごうかと思ったが、ここは迷宮攻略に切替えて攻略した方が金になりそうだ。
「良いですね、迷宮! 是非、迷宮の場所を教えて下さい」
「おお、乗り気になってくれたか」
ロッソ街の地図を出してきて、ここにあると指で示した。
ロッソ迷宮……なんて何の捻りもないネーミングなんだ。
「階層などは分かりますか?」
「現在確認されているのは13階層までだ。恐らく、まだ先があると思われる」
13階層までの地形などは分かりますか?
「ああ、2階に魔物図鑑などが揃っている図書室がある。そこで調べられるぞ」
今、教えてくれても良いのに。
こういう所は、きちっと線引きしているのか。
「後で寄ります。ハンス、王都の迷宮は何階層だった?」
「50階層でした。10階層毎に記録のオーブがあるので、そこで記録すれば外にでもその階層から攻略を始めることが出来ます」
セーブポイントがあるのか。
「セーフティーエリアもあるのか?」
「ありますが、攻略者が多いところは横になるのは難しいですね。階層が上がれば、人は疎らになります」
階層が上がるにつれて敵さんも強くなるということか。
面白い。
連帯の大切さと戦闘方法を身体に叩き込む良い機会だ。
後で、アンナに強制合宿を卒業した者達を対象に迷宮攻略をやらせてみよう。
更なる戦力強化になるだろう。
ドロップ品は、契約している誰かを連れて行かせて回収すれば良いし。
制覇したらドロップ品の1部返還と、大入り、大型連休を用意すれば釣れると思われる。
「レン様、顔がゲスいです」
ハンスの突っ込みに、いかんと頬を叩いて表情を戻す。
「下調べと買取が終わったら、宿に戻って迷宮攻略の相談でもしようか」
「良いですね」
「じゃあ、私達はこれで失礼します」
「ああ、迷宮攻略頑張ってくれよ」
ジョバンニに軽く挨拶をし、その足で2階の図書室へと向かう。
速読と暗記で片っ端から本を読みまくり、その間ハンスにドロップ品の一部売却をして貰った。
約1時間で図書室にある本の内容は覚えた。
ハンスを拾って宿へ帰ったのだった。




