172.クエスト達成報告
私と護衛についたハンスで、冒険者ギルドへ報告に行った。
契約したワイバーン達は、一旦街の外で待機させた。
スサノオの背中に乗り、ロッソ山からの大移動である。
留美生達には、徒歩で帰宅させた。
ワイバーンの群れに街が騒然となったが、クインテットが作った拡声器で私の従魔であり襲うことは無いから安心しろと大々的に宣伝した。
門番に入場を止められたが、私の言葉で一斉に伏せをするワイバーンを見て無害と一応判断してくれた。
冒険者ギルドへ報告があるので早く解放してと急かしたら、冒険者ギルドのギルドマスターが出頭してくれました。
開口一番に、
「何をしているんだ!!」
と怒られました。
解せぬ。
「ロッソ山のワイバーン全員を契約しました。地竜は、反抗したので討伐しましたのでクエストは達成ですね!」
「そういう問題じゃない! 大体、あのふざけた呼びかけはなんだ」
「いきなりワイバーンが街の上空に現れたら、大混乱すると思ったので拡声器で報告したまでです」
何が悪いのか全然分からない。
首を傾げると、ギルドマスターの眉間に深い皺が刻まれた。
「100匹以上はいるものを契約したというのか」
「疑いなら、ギルドにある簡易鑑定魔法具で鑑定してみたらどうですか?」
段々面倒臭いことになったので、投げやりに言ったら、本当に鑑定を始めた。
冒険者ギルドから簡易鑑定魔法具一式を持って戻ってきた。
ビビりながら鑑定する職員が、心底可哀そうだと思った。
この世界では、鑑定持ちは珍しいスキルだから仕方がない。
殆どが、魔法具に頼っている。
300匹弱のワイバーンを鑑定し終えたのが、約2時間後である。
それまでは、ギルドマスターにクエストの報告をしていた。
途中で話も尽きたので、テーブルとイスを出してお茶タイムにした。
全然ご飯食べられなかったし、ワイバーンにバケツプリン食べられるし散々だったと愚痴を零す。
「……本当に契約してくるとは。流石Sランクの冒険者というべきか。いや、1人でこれだけの契約が出来る方がおかしい……」
ブツブツと呟くギルドマスターに、
「人より魔力量が多いので」
とだけ返しておいた。
「それで、クエストは達成したという事で宜しいですよね?」
「ああ、ギルドに戻り次第支払いをしよう」
「ありがとう御座います」
「それで、そこのワイバーンはどうするのだ?」
300匹弱のワイバーンを前にすると壮観だな。
「ロッソ山で待機ですね。大丈夫です。人は襲わないように言いつけてますから」
「それは、どこまで信用して良いんだ」
ギルドマスターの突っ込みに、
「信用するしないは、私の範疇じゃありませんので。ロッソ山を丸ごと購入したら信用してくれますか?」
山を丸ごと購入するとなると結構なお金になる。
そこは、商業ギルドと交渉になるがワイバーンの住処は必要だろう。
「山を購入するなど、そんな大金を持っているのか?」
「まあ、冒険していればそれなりにお金は貯まりますからね」
「では、ロッソ山を購入してくれ。購入された場所は私有地になる。私有地に無断で侵入した場合の責任は自己責任となる」
素晴らしきことかな責任転換。
「では、ワイバーンの諸君はロッソ山へ戻って貰いますね。商業ギルドでロッソ山の購入をしてきます」
「購入証書を冒険者ギルドに持参すること。俺の名前を出せば、そのまま執務室に通す手筈を整えておく」
「了解しました。私は、レンです。あなたは?」
「ん? 名乗っていなかったか? 俺は、アルバートだ」
「じゃあ、アルバートさん。後日伺います」
「出来るだけ早めにしてくれよ」
「了解」
ロッソ山の購入が急遽決定した。
さて、幾らになるのやら。
商業ギルドと交渉かと思うと気が滅入る。
私は、ワイバーン達にロッソ山に戻って良いよと伝えると一斉に飛び立った。
それを見届けて、門を潜ってハンスを連れて商業ギルドへと足を運んだのだった。




