168.産業国家ジェリダン共和国
ハルモニア王国を出国して、現在ジェリダン共和国に入国したばかりです。
海路も考えたが、一刻を争うとの事なので陸路で移動することにした。
ぶっちゃけ船酔い嫌だからとは、子供じみたことは言いませんよ?
リオンにちょっかい掛けてたおっさんの名前は、ゲルド・ロッドという侯爵だった。
結構大物を釣り上げたなー、と思ったが口には出さないでおく。
勿論、ゲルドは色々と詐称した身分証を持っていた。
既に死亡した冒険者のギルドカードだという。
ギルドカードの偽造を専門に行う裏稼業の輩もいるらしく、お金を積めばその国の身分証を作ることも可能らしい。
私の前では、まるっと丸裸だがな!
本名を言い当てたら挙動不審になっていた。
ステータスを見るには、アーラマンユ教会に行って専用の鑑定道具で見るため個人の鑑定はたかが知れているらしい。
それは知らなかったわ。
ハルモニア王国は、神社で鑑定が受けられる上にその結果も和紙に記載され持ち帰れる。
値段も金貨1枚と安い!
治癒院も兼ねているし、売上は孤児院の運営や設備の予算・給与に回っているので、地域の好感度もUPしてウハウハである。
人材育成と給与の支払いが大変だが、まあその辺りはアンナが指揮を執ってなんとかするだろう。
ジェリダン共和国と言えば、産業大国!
農耕や畜産が盛んな国で、野菜や果物などの輸出が主だ。
「冒険者パーティーとしては大所帯だしなぁ。これから戦争するなら金は必要やから稼ぐか」
「どうやって稼ぐん?」
「農耕器具や畑の活用術などの知識を売る。後、醤油麹がこっちでも作れたら食のレパートリーが増える。レシピも売れるやん」
味噌と醤油は、万能調味料です!
流石に、ハルモニアでは魚介系のものは手に入らなかった。
乾物でも魚介類は高いし、塩はとても貴重だったので高価で売買されていた。
「でしたら、調味料専門店を作ってはどうでしょう?」
レナの提案に、留美生がう~んと考え込んだ。
「麹自体が、箱入りでデリケートな子なんよ。この国で育つかどうかは、やってみんと分からんなぁ」
「まあ、やって駄目なら他の方法を考えればええやん。調味料専門店はある意味ありやと思うで。冒険者ギルドで討伐しながら、お金を貯めつつ移動やな。取敢えず、一旦宿で休もう。長距離移動で疲れたし」
「1番疲れたのは、運転していた俺だと思うんだが」
「イスパハン、それは免許取得出来んかった嫌味か?」
ギロッと睨んだら黙った。
森や山を車で爆走していたら、座っているだけでも疲れるんだよ!
酔わなかっただけでも奇跡だと思う。
小さい頃は、車が嫌いだったのに……。
三半規管が鍛えられた証拠かね?
「宿を取ったら自由時間な! 私は、ちょっと冒険者ギルドに顔を出してくるわ」
「俺も行く」
リオンは私と冒険者ギルドへ同行と。
「私とイスパハンは、農耕具の試作に取り掛かるからパス」
留美生とイスパハンはリタイア。
「私達は、宿で休憩してます……」
青い顔で口元を覆っているハンナ達もリタイアと。
「じゃあ、人数分の部屋取っといて~」
私は、リオンを連れて冒険者ギルドへと向かった。




