165.パンジーの有効活用
神社建設が国家事業へと発展しました。
発展させたのは、私が原因だけどね!
アベルとアナスタシア、天照大御神を祀る神社の建築をCremaの建築部門から人を手配し、着々と建てられている。
建設に不適合な領には、残念ながら建てること自体を拒否している。
理由は簡単で、神社を私物化されては困るからだ。
建設費は、国庫が半分と王族のポケットマネー半分から成り立つらしい。
お金さえ出してくれれば、こちらとしても何も問題はない。
社交シーズン中に王都の神社に参拝した者で、天罰を食らわなかった領地持ちの貴族だけ神社建設の許可を出した。
全国各地に神社を作るとは言ったが、悪徳領主のいる場所に神社を建てたくない。
そこは、アベルも賛同してくれたので全国とはいかないが国の半数に神社が建設されるのだから良しとしよう。
それに伴い、神職系の職を持つ者を急遽育成する必要が出てきた。
今いる人数だけでは、到底賄いきれない。
派遣はするが、1人の負担が大きくなる。
治癒院も兼ねているので、神社1つにつき3人は欲しい。
後、自衛団も育てる必要もある。
雑務は、ある程度教養があるものが必要だしやる事が増えた。
各領に拠点を置きたいとアンナに相談したところ、渋い顔をされた。
建物を購入するのにお金が掛るし、維持費も馬鹿にならない。
だが、パンジーに鍵を持たせることで一瞬で行き来できることを伝えれば彼女の目が¥マークになった。
「一瞬で移動できるとなると、ガソリンなどのコスト削減になりますね。配送業部門を設けて、手紙や軽い荷物の受け渡しをするのもありかもしれません」
手紙を届けるのも数ヵ月かかるので、確かに直ぐに届けたいものがあれば便利かもしれない。
「でも、宅配までは無理やと思うで。人手不足やし。精々、受取りに来てもらえると便利かもしれん」
「黒ネコさんみたいに、営業所という形で運営してはどうでしょう? 各営業所間で荷物を送ったり、受け取ったりできるようにして追々宅配できるようにすれば宜しいかと思います」
「受け取った、受け取ってないの問題も出てくると思う。受取人にはサインと拇印を貰って、送り主に見せるとか」
「それが宜しいかと思います」
「後は、どうやってアプローチして事業を軌道に乗せるかやね」
「まずは、貴族をターゲットにしてみては如何ですか? ミスト公爵や王家ともコネがありますので、準備が整い次第提案してみるのも宜しいかと思います」
確かに貴族なら、住んでいる場所も特定出来るし、配達するには問題ないだろう。
出来れば、一般市民に使用して貰いたいものだ。
その方が、儲かるし。
「試験的に貴族で試して、その後は豪商に移行し、最終的には庶民に浸透出来るようにしたいなぁ」
「それも追々ですね。まずは、各領を巡って営業所になる場所を購入しましょう。レン様名義で購入しますので、一応自宅という形になるでしょう。その間は、新人の教育をお願いしますね」
アンナは、ニッコリと強化合宿の日程表を渡してきた。
30センチもある紙束に、思わず顔を顰めてしまう。
「Cremaが幾ら設けても、人件費が嵩むと会社は回らんで」
「ああ、それはCremaの社員ではありません。国からの依頼で、兵士を鍛えて欲しいと要請がありましたので、受けてきました」
「……幾ら積まれた?」
「それなりに、です」
Cremaの社員が皆最低でもレベル200オーバーなので、その辺の兵士よりも強い。
だからと言って、社員でもない人間を教育するのは御免である。
「拒否権は?」
一応聞いてみると、
「ありませんよ。他の者も、教育係になって指導しています。鍛えた兵は、各地に配属される予定なので、店を開いたときプラスになると思いますよ」
そこまで言われて、私は溜息を吐きながら強化合宿に勤しむ事になった。
遊学というなの国外逃亡は、暫く出来そうにないと肩を落としたのだった。




